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本編
潜入と盗聴
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キィ…と戸が開いた。
出てきてたのは細く小さい手、白い髪、俺より低い背、童顔の──男。
「あ?カイル先生?なんでここに」
「今日は僕が当番ですから。試験前ですが、シエルさんに何か用がありましたか?」
あ、しまった。特に何も考えずにここに来ちゃった。
「あー、えー、いや、今日学校にいなかったから大丈夫かなーって思って保健室行ったら、保健室にシエルがいなかったんで、直に部屋の方に来たんだよ」
「シエルさんのことを思ってですか。いい心がけですね。しかしすみません、彼女は今、私のお手製のドリルをやっている所なので、急ぎの用事でなければ後でいいですか?」
「ど…どり…る?」
ドリルって確かあれだよな、地面掘る奴。あんなものをここで使うのか?なんのために?
一瞬本気で考えかけたが、すぐに先生が「問題集の事ですよ」と笑いながら答えた。
「あ、あぁそうか。少し会うだけでいいんだが…ダメか?」
「今集中してますからね。ダメです」
しばらく掛け合ってみたが、どうも通してくれそうにない。
「そうか、わかったよ。んじゃあな」
仕方なく引き返し、一旦自分の部屋へ。
「あらお帰り…どうしましたの?」
「いや何、ちょっとな。マキナ」
『はい』
「欠片の様子は」
『気づかれて・いません』
「よし」
「…何の話ですの?」
「ちょいとした潜入の話。起動出来るか?」
『了解しました』
マキナの欠片を千切って丸め、小指の先ほどの大きさにしてアーネに投げ渡す。アーネはそれをしげしげと眺めていたが、俺が欠片を耳に入れるのを見て、同じように耳に入れた。
そこから聞こえてくるのは俺のでもアーネのでもない別の誰かの声。音質はかなり悪く、所々ノイズが走ることもあるが、言葉はそれなりにしっかりと拾えている。
『……テストは大丈夫そうですね。この点数なら問題は無さそうです。えぇ』
声の主に対する反応はないが、なにか受け答えしているように喋っている。多分相手も他の誰かにメッセージをしているのだろう。
「この声って…」
「うちの担任だな。ついさっきシエルの部屋に入ろうとしたら断られたんで、マキナを一部飛ばして入れてきた。そいつが音拾ってこっちに飛ばしてんだ」
いつもタイミングが悪いからなのか、はたまたまた別の理由か、俺はなんだかんだ言ってシエルの部屋の状況を見たことがない。
当然、そこに住んでいるシエルがどう生活しているかも直に見たことはない。それに、シエルから部屋に呼ばれたことも、来てくれと言われたこともない。
拒絶されている。アーネは部屋に泊まって来たのだから、俺だけがきっと。そう思ってもおかしくないだろう。
なら、堂々としないだけだ。
幸いというかなんと言うか、俺の手元には大体の事が出来る魔導具がひとつある。なら、有効活用しない訳には行かないだろう。
「でもこれ、単にカイル先生が試験前の仕上げにシエルのチェックをしただけじゃありませんの?」
「かもな。だがまぁ、話は最後まで聞いてみるもんだ」
『…はい、はい。規定値は突破してます。体内魔力量も越えて…そうですね。安定してます。まだ上げますか?そうですか。いえ、問題は無いと思いますが』
ほら、言ったそばから話が変わってきたぞ。
『わかりました。それでは。……はい?…いや、さっき来ましたね。断ったら帰りましたが』
「貴方のことですの?」
「多分俺だな」
クソ、話が終わりそうだ。せめてもうちょいなにか決定的な話か次に繋がる情報が…
『わかりました、気をつけます。えぇ、彼が関わると大体…はい。わかりました』
反応からして、相手はカイル先生より上の立場か?あるいは何かに協力してもらっているとか?ならかなり規模は大きくなるな…この学校のどこまでが絡んでるんだ?
『はい…はい。また血は職員室でいいですか?今日の夜までで…はい、わかりました。それでは』
先生がメッセージを切ったらしい。聞こえる音がノイズだけになった。
「なるほど、確かに何かしてるようですわね。何かは全くわかりませんけれど」
「ともかく、これでシエルに魔力を注ぎ続けてる黒幕の一人は分かった訳だ。突撃はしねぇけど…とりあえず今日やる事は決まったな」
確か今日の夜、職員室で、だったな。
出てきてたのは細く小さい手、白い髪、俺より低い背、童顔の──男。
「あ?カイル先生?なんでここに」
「今日は僕が当番ですから。試験前ですが、シエルさんに何か用がありましたか?」
あ、しまった。特に何も考えずにここに来ちゃった。
「あー、えー、いや、今日学校にいなかったから大丈夫かなーって思って保健室行ったら、保健室にシエルがいなかったんで、直に部屋の方に来たんだよ」
「シエルさんのことを思ってですか。いい心がけですね。しかしすみません、彼女は今、私のお手製のドリルをやっている所なので、急ぎの用事でなければ後でいいですか?」
「ど…どり…る?」
ドリルって確かあれだよな、地面掘る奴。あんなものをここで使うのか?なんのために?
一瞬本気で考えかけたが、すぐに先生が「問題集の事ですよ」と笑いながら答えた。
「あ、あぁそうか。少し会うだけでいいんだが…ダメか?」
「今集中してますからね。ダメです」
しばらく掛け合ってみたが、どうも通してくれそうにない。
「そうか、わかったよ。んじゃあな」
仕方なく引き返し、一旦自分の部屋へ。
「あらお帰り…どうしましたの?」
「いや何、ちょっとな。マキナ」
『はい』
「欠片の様子は」
『気づかれて・いません』
「よし」
「…何の話ですの?」
「ちょいとした潜入の話。起動出来るか?」
『了解しました』
マキナの欠片を千切って丸め、小指の先ほどの大きさにしてアーネに投げ渡す。アーネはそれをしげしげと眺めていたが、俺が欠片を耳に入れるのを見て、同じように耳に入れた。
そこから聞こえてくるのは俺のでもアーネのでもない別の誰かの声。音質はかなり悪く、所々ノイズが走ることもあるが、言葉はそれなりにしっかりと拾えている。
『……テストは大丈夫そうですね。この点数なら問題は無さそうです。えぇ』
声の主に対する反応はないが、なにか受け答えしているように喋っている。多分相手も他の誰かにメッセージをしているのだろう。
「この声って…」
「うちの担任だな。ついさっきシエルの部屋に入ろうとしたら断られたんで、マキナを一部飛ばして入れてきた。そいつが音拾ってこっちに飛ばしてんだ」
いつもタイミングが悪いからなのか、はたまたまた別の理由か、俺はなんだかんだ言ってシエルの部屋の状況を見たことがない。
当然、そこに住んでいるシエルがどう生活しているかも直に見たことはない。それに、シエルから部屋に呼ばれたことも、来てくれと言われたこともない。
拒絶されている。アーネは部屋に泊まって来たのだから、俺だけがきっと。そう思ってもおかしくないだろう。
なら、堂々としないだけだ。
幸いというかなんと言うか、俺の手元には大体の事が出来る魔導具がひとつある。なら、有効活用しない訳には行かないだろう。
「でもこれ、単にカイル先生が試験前の仕上げにシエルのチェックをしただけじゃありませんの?」
「かもな。だがまぁ、話は最後まで聞いてみるもんだ」
『…はい、はい。規定値は突破してます。体内魔力量も越えて…そうですね。安定してます。まだ上げますか?そうですか。いえ、問題は無いと思いますが』
ほら、言ったそばから話が変わってきたぞ。
『わかりました。それでは。……はい?…いや、さっき来ましたね。断ったら帰りましたが』
「貴方のことですの?」
「多分俺だな」
クソ、話が終わりそうだ。せめてもうちょいなにか決定的な話か次に繋がる情報が…
『わかりました、気をつけます。えぇ、彼が関わると大体…はい。わかりました』
反応からして、相手はカイル先生より上の立場か?あるいは何かに協力してもらっているとか?ならかなり規模は大きくなるな…この学校のどこまでが絡んでるんだ?
『はい…はい。また血は職員室でいいですか?今日の夜までで…はい、わかりました。それでは』
先生がメッセージを切ったらしい。聞こえる音がノイズだけになった。
「なるほど、確かに何かしてるようですわね。何かは全くわかりませんけれど」
「ともかく、これでシエルに魔力を注ぎ続けてる黒幕の一人は分かった訳だ。突撃はしねぇけど…とりあえず今日やる事は決まったな」
確か今日の夜、職員室で、だったな。
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