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本編
木箱と手
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二人で掘ってみることおよそ一時間半。その間、辺りはやたらと静かで、魔獣の横槍も何も無く、ただただ淡々と土を掘る音だけが響いていた。
木箱は思った以上に大きく、縦横七十から八十センチ、高さは二メートル弱といった縦長の箱だった。
正直自分の身長よりも穴を掘るとは思ってもいなかったので、掘っている時は底がないのかと思った程だった。
しかし、それでも根気よく続けていくと何とか底まで掘ることが出来た。後はこれを…
「引き上げるぞ…せーのっ」
俺の髪で結び、マキナを即席の滑車にして二人で引き上げる。
箱の重さはそれなりにあるが、二人で引けばゆっくりと箱が持ち上がっていく。
「…おっけー、そんまま引っ張って…よしよし、そんでいい。降ろすぞー」
比較的土の柔い所に下ろし、改めて木箱を見る。
「これ…なんですかね?」
「さぁ…?俺も初めて見る」
サイズは先程言った通り。かなり前に埋められたのか、木が所々傷んでいる。しかし、なにか特別な処理でもしてあるのか、そこまで激しく傷んでいる訳では無い。
全く見た事のない箱だ。当然ナナキから聞いたこともない。今、彼女の記憶を軽く漁っているが、膨大すぎて少し時間がかかる。
しかし…この前の晩に感じた懐かしさが、何故かこの箱から滲み出ているような気がする。まるで、数年越しの友人…いや、もっと仲の良い誰かと再び出会えたかのような感覚。
「…ん?」
側面を軽く触っていると、うっすらと切れ込みのような所が…いや違う、ここが蓋か。
「よっ…と」
指先に力を込めて蓋を剥がすと、中に大量の綿が入って……いや違う、綿じゃねぇ。
「これ…全部糸…?」
ニケがそう呟きながら、確かめようとしたのだろうか。糸へ手を伸ばすと、その奥から突如腕が伸び、彼女の手首を掴んだ。
「なっ!?」
「下がれニケ!」
咄嗟に後ろへ飛んだニケ。スキルも併用したのか、文字通りの目にも止まらぬ速さでバックステップ。
が、しかし。
「なんですかこれ!?」
彼女の手首は未だ握られたまま。
拳だけが腕から分離し、そのままニケの手首を掴んでいる。外れた拳と腕はがっちりとしたワイヤーで繋がれており、そう簡単には切れないであろう事は容易に想像がついた。
「クソっ!」
即座に金剣を取り出してワイヤーを切ろうとするが、それよりも早くワイヤーが巻き上がり、ニケを木箱の方へ寄せた。
「なんっ!?」
早すぎる。
いや、というかこの勢いだと、剣が振り下ろされた瞬間、当たるのはワイヤーではなくニケ──
「くっ!」
金剣が止まるとは思っていないが、それでも全力でブレーキをかける。その僅かな遅れで、ニケがワイヤーに引っ張られ、剣がニケに触れるより先に彼女が通過した。
「クソが!」
パチン、と音がして手が元に戻る。当然、彼女は糸から出た謎の腕に捕らえられたままだ。
「れ、レィアさん?これ、どうすれば…」
「…ふっ飛ばしていいぞ」
良くない。本当は。でも、何があるか分からないし、確実なのはこれだ。
ニケが腰を下ろし、これでもかと身体を捻る。
身体を包むのは綺麗な青白いオーラ。
だが、それでも手は動かない。
「《瞬即蹴弾》!」
ニケの戦技が文字通り空気を割いて繰り出された。
木箱は思った以上に大きく、縦横七十から八十センチ、高さは二メートル弱といった縦長の箱だった。
正直自分の身長よりも穴を掘るとは思ってもいなかったので、掘っている時は底がないのかと思った程だった。
しかし、それでも根気よく続けていくと何とか底まで掘ることが出来た。後はこれを…
「引き上げるぞ…せーのっ」
俺の髪で結び、マキナを即席の滑車にして二人で引き上げる。
箱の重さはそれなりにあるが、二人で引けばゆっくりと箱が持ち上がっていく。
「…おっけー、そんまま引っ張って…よしよし、そんでいい。降ろすぞー」
比較的土の柔い所に下ろし、改めて木箱を見る。
「これ…なんですかね?」
「さぁ…?俺も初めて見る」
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全く見た事のない箱だ。当然ナナキから聞いたこともない。今、彼女の記憶を軽く漁っているが、膨大すぎて少し時間がかかる。
しかし…この前の晩に感じた懐かしさが、何故かこの箱から滲み出ているような気がする。まるで、数年越しの友人…いや、もっと仲の良い誰かと再び出会えたかのような感覚。
「…ん?」
側面を軽く触っていると、うっすらと切れ込みのような所が…いや違う、ここが蓋か。
「よっ…と」
指先に力を込めて蓋を剥がすと、中に大量の綿が入って……いや違う、綿じゃねぇ。
「これ…全部糸…?」
ニケがそう呟きながら、確かめようとしたのだろうか。糸へ手を伸ばすと、その奥から突如腕が伸び、彼女の手首を掴んだ。
「なっ!?」
「下がれニケ!」
咄嗟に後ろへ飛んだニケ。スキルも併用したのか、文字通りの目にも止まらぬ速さでバックステップ。
が、しかし。
「なんですかこれ!?」
彼女の手首は未だ握られたまま。
拳だけが腕から分離し、そのままニケの手首を掴んでいる。外れた拳と腕はがっちりとしたワイヤーで繋がれており、そう簡単には切れないであろう事は容易に想像がついた。
「クソっ!」
即座に金剣を取り出してワイヤーを切ろうとするが、それよりも早くワイヤーが巻き上がり、ニケを木箱の方へ寄せた。
「なんっ!?」
早すぎる。
いや、というかこの勢いだと、剣が振り下ろされた瞬間、当たるのはワイヤーではなくニケ──
「くっ!」
金剣が止まるとは思っていないが、それでも全力でブレーキをかける。その僅かな遅れで、ニケがワイヤーに引っ張られ、剣がニケに触れるより先に彼女が通過した。
「クソが!」
パチン、と音がして手が元に戻る。当然、彼女は糸から出た謎の腕に捕らえられたままだ。
「れ、レィアさん?これ、どうすれば…」
「…ふっ飛ばしていいぞ」
良くない。本当は。でも、何があるか分からないし、確実なのはこれだ。
ニケが腰を下ろし、これでもかと身体を捻る。
身体を包むのは綺麗な青白いオーラ。
だが、それでも手は動かない。
「《瞬即蹴弾》!」
ニケの戦技が文字通り空気を割いて繰り出された。
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