大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

破壊と答え

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明らかに巨大な右腕。
肘のあたりから急に太くなり、手首の所の時点での太さは俺の胴体ほどに太い。そんな異形の右腕。
表面には無数の突起があり、その一つ一つが白銀の鎧でコーティングされている。
長さもかなりあり、普通に立っていても足首の辺りまである。
当然、重量もとんでもないはずだが、そこは魔法、重力魔法でかなり軽くなっているらしい。
『…へぇ、面白いな。これ、何だ?』
「…何だろな。強いて言うなら、杭打機パイルバンカーじゃなくて、千打機サウザンドバンカー?」
腰を少し落とすと、地面に千打機サウザンドバンカーが地面に触れる。
さらに力を込め、俺の顔の辺りまで持ち上げる。
『それで、どうする気だ?破壊…できるのか?』
「多分、な。確証はないが…勝率は高いと思う」
根拠は俺達勇者。
「単純な話──俺達だって、無償で永遠と血界が使えるわけじゃない。しっかり代償を払って能力を行使してる訳だ。なら、聖女の結界…その代償は?」
俺の予想だと──恐らく魔力。
「つまり、それが無くなるまで殴り続ければいい。強力な一撃より、微弱な千撃を打ち込み続けて破壊する。そっちの方が安全そうだろ?」
シャルの返事を聞く前に、俺は右腕を振り下ろす。
途端に響く、無音の束。
一つ一つは聞こえない程に小さな音。
しかし、それを纏めて聞くと、一つの騒音になって辺りに響く。
一撃そのものは、せいぜい針で刺された程度の威力。
だが、それが一撃ではなく、千撃。
それも終わりなく、延々と。
射出、衝突、巻き上げ、再び射出。
何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も。
不意に、千打機サウザンドバンカーに抵抗がかかる。
同時に結界が白く、強く輝き始める。
『さっきお前を吹き飛ばした──くるぞ!!』
シャルがそう警告を飛ばすが、俺は無視して動こうとしない。
俺を吹き飛ばした反撃カウンター、さっきは上手くいなせたが、このアンバランスな武装をした今は避けられる自信がない。
ついでに言うなら、かなりの衝撃が鎧に吸収されていたので、直に受けたら不味いだろう。
だが──。
『……どうした?なぜカウンターがこない?』
「…なるほどな。多分、あのカウンターはそのまま俺の攻撃を反射してるんだな。だからロクに効かないのか」
ついでに言うと、反射するよりも前に針が巻き戻され、上手いこと反射が当たっていないのだろう。最初の反撃も、いくらかズレていたしな。
どれほどそうして押し付けていたか。
『…薄く、なってないか?』
シャルがそう呟いた。
薄らと、しかし確実にそこにあった半透明の結界が、今は明滅を繰り返し、弱々しくなっている。
俺はさらに強く押し付け、速度も上げる。
「閉じこもって、ただ頷くだけってのは楽だろうよ。けどな」
──この声は、聞こえているだろうか。
びきり、とがした。
見れば結界に、罅が入っている。
あともう一息。
「それだけなら人形にも出来るさ。アンタは人形か?違うだろ」
──この声が、聞こえていなくとも関係ない。
音は鳴り続き、加速する。
同時に罅も大きく、広く。
あともう一押し。
「考えて、間違えて、やり直して。それでも間違えて。正しい事ってのは形を変えて、いつでも間違ったことになる。昨日言った正解が、今日誰かに聞けば間違いになる。それに頭を悩ませて、自分なりの答えを出して、でも間違う……苦しいことだらけだよ」
ついに結界が割れる。
カッシャァァァァァァァァァァ…………ン!!と、千の硝子を同時に砕いたような音が鳴り、空気に溶けていく。
「でもな」
顔を上げ、怯えたような蒼い目をした少女の目をしっかりと見返し、俺なりの答えを返す。
「俺は人間である事を嫌だと、辞めたいと思った事は一度たりとも無いね。こんなにも自由なんだから」
さぁ、答えは出た。
「あと一日だけだが、多少なりとも戦えるようにしてやるよ」
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