1,796 / 2,040
本編
勇者と産獣師7
しおりを挟む
詠唱は止めず、《産獣師》が何度目かの突撃を繰り出す。
度重なる激しい攻撃、慣れない場所での戦闘、ここまでの疲労など、様々な要因が積み重なって、俺も限界。
対する《産獣師》の顔色も決して良くない。いくら魔族の身体が頑丈と言っても、翼を背から出して空を飛び回り、左腕を切り落として生やし直し、一度丸焼きになったにも関わらず、そこから生きて戻ってきた上に、息を着く暇もなく俺と戦闘を繰り広げる。
互いに「限界」という言葉がチラつく。その上でダメ押しの術式を完成させようとする《産獣師》と、その前に仕留めようとする俺。
綻びが出たのは俺が先だった。
バヂィン!という音が空気を割り、激痛が身体を走る。
「っづ!?」
身体が一瞬固まり、筋肉が軋んで止まる。
雷撃。それは最速の攻撃方法。《産獣師》が続けていた詠唱が進むにつれて、最初はうっすらと広がっていた闇がいつの間にか濃く、そして広範囲に漂っている。
今の雷撃は恐らく左側面からか。しくじった。
スキルで無理矢理身体を動かし、なんとか《産獣師》の攻撃を一度は弾く。
が、その強烈な一撃は俺の手から剣を弾き飛ばし、胴を無防備に晒す。
「しまっ」
身体の自由が戻った時には既に二撃目。右の拳が迫り来る。
ガード?いや、まず両腕が折れる。回避はもう無理。
「おォッ!!」
結果として俺が選んだのは受け流し。だがそれも下策。
心臓を真上から叩き潰すような拳に右手を合わせ、そのまま横へと受け流す。
そして受け流した直後、一拍遅れて中指の剣が生物らしいしなりを維持しつつ、胴を真っ二つにせんと迫り来る。
それを読んでいた俺は即座に髪を解いて、上に飛びながら回避。
それが《産獣師》も狙いだったのだろう。
跳躍したその瞬間、ついに踏ん張る壁から足を離したその瞬間。
《産獣師》が急加速、急上昇し、俺の上を取る。
「な!?」
今までとは比較にならない速度。敢えて速度を落としていたのか。
「──!!」
《産獣師》が再度、右の拳を大きく構える。それは俺の頭蓋を叩き割らんと、真上から振り下ろされる。
だがそれも右手で受け、そこから身体を回して勢いを殺す。
打撃なら受け流せる。だが斬撃は──
《産獣師》の顔が喜悦に歪み、既に装填してある中指を振り下ろす。
「────?」
はずだったのに。
何故剣が振り下ろせない?
そんな顔をした《産獣師》が自身の手を見返し、俺が逆に笑い返しながら種明かしをする。
「どんな強いバネだって、爆ぜなけりゃ怖かないんだぜ」
《産獣師》の右手、右腕。そこには細く細く、目に見えないような白銀の髪が数本、彼女の腕を包むように縛っていた。
これまでの交錯で数本ずつ纏わせた髪が、遂に。
「捕まえたぜ、《産獣師》ッッ!!」
空を飛ぶ魔族を絡め捕らえた。
度重なる激しい攻撃、慣れない場所での戦闘、ここまでの疲労など、様々な要因が積み重なって、俺も限界。
対する《産獣師》の顔色も決して良くない。いくら魔族の身体が頑丈と言っても、翼を背から出して空を飛び回り、左腕を切り落として生やし直し、一度丸焼きになったにも関わらず、そこから生きて戻ってきた上に、息を着く暇もなく俺と戦闘を繰り広げる。
互いに「限界」という言葉がチラつく。その上でダメ押しの術式を完成させようとする《産獣師》と、その前に仕留めようとする俺。
綻びが出たのは俺が先だった。
バヂィン!という音が空気を割り、激痛が身体を走る。
「っづ!?」
身体が一瞬固まり、筋肉が軋んで止まる。
雷撃。それは最速の攻撃方法。《産獣師》が続けていた詠唱が進むにつれて、最初はうっすらと広がっていた闇がいつの間にか濃く、そして広範囲に漂っている。
今の雷撃は恐らく左側面からか。しくじった。
スキルで無理矢理身体を動かし、なんとか《産獣師》の攻撃を一度は弾く。
が、その強烈な一撃は俺の手から剣を弾き飛ばし、胴を無防備に晒す。
「しまっ」
身体の自由が戻った時には既に二撃目。右の拳が迫り来る。
ガード?いや、まず両腕が折れる。回避はもう無理。
「おォッ!!」
結果として俺が選んだのは受け流し。だがそれも下策。
心臓を真上から叩き潰すような拳に右手を合わせ、そのまま横へと受け流す。
そして受け流した直後、一拍遅れて中指の剣が生物らしいしなりを維持しつつ、胴を真っ二つにせんと迫り来る。
それを読んでいた俺は即座に髪を解いて、上に飛びながら回避。
それが《産獣師》も狙いだったのだろう。
跳躍したその瞬間、ついに踏ん張る壁から足を離したその瞬間。
《産獣師》が急加速、急上昇し、俺の上を取る。
「な!?」
今までとは比較にならない速度。敢えて速度を落としていたのか。
「──!!」
《産獣師》が再度、右の拳を大きく構える。それは俺の頭蓋を叩き割らんと、真上から振り下ろされる。
だがそれも右手で受け、そこから身体を回して勢いを殺す。
打撃なら受け流せる。だが斬撃は──
《産獣師》の顔が喜悦に歪み、既に装填してある中指を振り下ろす。
「────?」
はずだったのに。
何故剣が振り下ろせない?
そんな顔をした《産獣師》が自身の手を見返し、俺が逆に笑い返しながら種明かしをする。
「どんな強いバネだって、爆ぜなけりゃ怖かないんだぜ」
《産獣師》の右手、右腕。そこには細く細く、目に見えないような白銀の髪が数本、彼女の腕を包むように縛っていた。
これまでの交錯で数本ずつ纏わせた髪が、遂に。
「捕まえたぜ、《産獣師》ッッ!!」
空を飛ぶ魔族を絡め捕らえた。
0
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
追放された聖女は旅をする
織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。
その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。
国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる