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本編
異常と深夜
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その日は決まって、酷い悪寒と吐き気をもよおす程の殺気で目覚める。
そして飛び起きると、目の奥が脈打つと錯覚するほど酷い動悸と、冬だというのにシャツをぐっしょりと濡らす汗が身体をより一層震え上がらせる。
続いて強烈な腐臭と獣臭を三日三晩煮詰めたような臭いを感じるが、俺はそれが錯覚だと知っている。
呼吸を整えつつ、窓の外を見る。
月の明かりを遮る分厚い雲と、風にザワザワと騒ぐ木々のざわめき。
その中に混じる不気味な鳴き声のような呻き声はあいつらのものだ。
「……来たな」
うなじがピリピリと危険信号を発し続け、頭が一瞬で覚醒状態──そして臨戦態勢にまで起こされた。
しかしまだ──まだ、侵入はされていないらしい。
もし既に結界が破られていたら、悪寒を初めとする体調異常はこの程度では済まない。何より──もしも突破されていたら、もう間に合わない。
確実にここ、紅の森を突破され、そのまま直進された場合はプクナイムが落ちかねない。
それどころかさらに進撃は止まらず、東の第二都市や他都市の外側の都市まで落ちるかもしれない。
プクナイム一つが落ちても問題だ。あそこは麦類を主に育てているが、荒らされれば食料不足に繋がりかねない。
つまりここが最前線で最終防衛ライン。
一体程度逃してもいいと思ってはならない。結界の外で発生する魔獣は結界の内側で出来る魔獣とは比較にならないほど強い。
「マキナ、今何時だ」
汗に濡れた身体を拭き、別の服へと着替えながら聞くと、『零時十二分です』と返ってくる。
日は跨いだ。日付はヤツキが言っていた通り十二月十八日。ドンピシャか。
着替え終え、一階へ降りると丁度ヤツキも起きた所らしい。
不機嫌そうにして眉間に皺を作り、欠伸を噛み殺しながら挨拶してきた。
「やぁ今代の勇者。今日は早いな。悪夢にうなされたか?」
「いや、悪夢は今から見るところだ」
台所で芋を蒸し、握り拳より一回り小さいサイズにまで強引に圧縮、それを十個程作って半分をヤツキに渡す。
「五日分の飯だ。腹減ったら食え」
「有難い。が、モンスターパレードは十日だぞ」
「十日も蒸した芋が保つ訳ねぇだろ。残り五日は自力でどうにかするしかねぇよ」
五日でも危ないかもしれん。
それより水分補給に気をつけるべきだろう。
森のあちこちに小川が流れているし、飲んでも滅多に腹を下したりはしないが、喉が乾いた時に運良く近くに小川が流れているとは限らない。
「人形はどれだけ生き残ってた?」
「昨日の時点で三十二だ」
「……足りないな」
いつもならナナキが前々から準備して、人形の数は三桁になっていたが…その三分の一もないか。
「人形は森の中にバラして配置する。私は森の出口付近、お前は結界の境界辺りで魔獣を出来る限り全て倒してもらいたい。…出来るか?」
「やってみせる」
「いい返事だ」
俺はその言葉を聞いてから家を飛び出した。
そして飛び起きると、目の奥が脈打つと錯覚するほど酷い動悸と、冬だというのにシャツをぐっしょりと濡らす汗が身体をより一層震え上がらせる。
続いて強烈な腐臭と獣臭を三日三晩煮詰めたような臭いを感じるが、俺はそれが錯覚だと知っている。
呼吸を整えつつ、窓の外を見る。
月の明かりを遮る分厚い雲と、風にザワザワと騒ぐ木々のざわめき。
その中に混じる不気味な鳴き声のような呻き声はあいつらのものだ。
「……来たな」
うなじがピリピリと危険信号を発し続け、頭が一瞬で覚醒状態──そして臨戦態勢にまで起こされた。
しかしまだ──まだ、侵入はされていないらしい。
もし既に結界が破られていたら、悪寒を初めとする体調異常はこの程度では済まない。何より──もしも突破されていたら、もう間に合わない。
確実にここ、紅の森を突破され、そのまま直進された場合はプクナイムが落ちかねない。
それどころかさらに進撃は止まらず、東の第二都市や他都市の外側の都市まで落ちるかもしれない。
プクナイム一つが落ちても問題だ。あそこは麦類を主に育てているが、荒らされれば食料不足に繋がりかねない。
つまりここが最前線で最終防衛ライン。
一体程度逃してもいいと思ってはならない。結界の外で発生する魔獣は結界の内側で出来る魔獣とは比較にならないほど強い。
「マキナ、今何時だ」
汗に濡れた身体を拭き、別の服へと着替えながら聞くと、『零時十二分です』と返ってくる。
日は跨いだ。日付はヤツキが言っていた通り十二月十八日。ドンピシャか。
着替え終え、一階へ降りると丁度ヤツキも起きた所らしい。
不機嫌そうにして眉間に皺を作り、欠伸を噛み殺しながら挨拶してきた。
「やぁ今代の勇者。今日は早いな。悪夢にうなされたか?」
「いや、悪夢は今から見るところだ」
台所で芋を蒸し、握り拳より一回り小さいサイズにまで強引に圧縮、それを十個程作って半分をヤツキに渡す。
「五日分の飯だ。腹減ったら食え」
「有難い。が、モンスターパレードは十日だぞ」
「十日も蒸した芋が保つ訳ねぇだろ。残り五日は自力でどうにかするしかねぇよ」
五日でも危ないかもしれん。
それより水分補給に気をつけるべきだろう。
森のあちこちに小川が流れているし、飲んでも滅多に腹を下したりはしないが、喉が乾いた時に運良く近くに小川が流れているとは限らない。
「人形はどれだけ生き残ってた?」
「昨日の時点で三十二だ」
「……足りないな」
いつもならナナキが前々から準備して、人形の数は三桁になっていたが…その三分の一もないか。
「人形は森の中にバラして配置する。私は森の出口付近、お前は結界の境界辺りで魔獣を出来る限り全て倒してもらいたい。…出来るか?」
「やってみせる」
「いい返事だ」
俺はその言葉を聞いてから家を飛び出した。
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