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本編
約束と上
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気持ちよく寝ていたら蹴起こされた。
それも思いっきり顔を。
「げばっ!?」
敵襲かと思って慌てて起きてみれば、全然全くそういうことは無く、ナナキとそっくりの顔をしたヤツキがこちらを見下ろしていた。
「よく眠れたか?」
「あぁ、よく眠れたよ。危うく覚めない夢を見る所だった。ありがとう」
あー痛え。鼻を触ると少し血が出ていた。どんな勢いで蹴りやがった。こいつ。
「…それはジョークか?それとも本気か?」
「…ジョークに決まってんだろ。出来が悪くて悪かったな」
言ってから気づく。
「あぁ、たまに見る変な悪夢とかって《勇者》特有の?」
「そういうものもある。大方は過去の《勇者》の記憶、その断片だったり、あるいは神からのお告げだったりと場合によるが──まぁ大方はそうだろうな」
へぇ、あれってそんな意味あったのか。
それはさておき。
「で、この満身創痍の怪我人様を蹴起こす程の要件ってのは何だ?」
蹴られた時に身体のあちこちが痛んだ。アーネが寝ている間に治療してくれた訳でも無さそうだし、空腹感からして何日も寝ていた訳でも無さそうだ。
「あぁ、約束しただろう?花火を見に行こう」
「は?んな事──」
『言ってたな。二十八日の夜に花火が上がるから二人で見よう、って』
言ったな。俺。
ってことは何、俺そのためだけに叩き起こされたの?
『まぁ、十中八九そういう事だろう』
「…どうした?行かないのか?」
「…行くってどこにだ。俺は足やらかしてるからあんまり遠出はしたくないんだが」
森の中じゃあ木々が邪魔してロクに見えないだろうし、森の外まで歩いていくのは俺の足のせいで難しい。モンスターパレード直後は魔獣が二、三日攻めてこないことは良くあるが、それも無いとも言いきれない。
「どこと言ってもな。上だよ」
「……あぁ、屋根の」
それなら大分違うだろう。花火は結界スレスレまで上がると聖女サマは言っていたし、屋根の上ならかろうじて見える…かもしれない。
だが…
「俺にどうやって登れと?」
足やらかしてる上に肋もやらかしてる。自分で言うのも何だが、ベッドの上から動くべきじゃないと思うんだが。
『昼間に腹減ったって言って芋取りに行ったじゃねぇか』
それはそれ、これはこれ。
「あぁ、それなら──マキナ」
部屋の戸の方においでおいでとヤツキがすると、扉が開いてマキナが顔を出した。
『なんでしょうか・ヤツキ様』
「そこのポンコツ主人を担いでやれ。で、屋根の上に運んでくれ」
『了解しました』
「え、嘘、ちょい待っ、のぉう」
簡単にお姫様抱っこされた。と言うか──
「なんでマキナが動いてるんだ?俺、魔力入れた記憶が──」
「それか?私が試しに魔力を入れたら動いたぞ」
あぁそうか、もう《勇者》じゃないから魔力は普通に扱えるのね。
「それでは上に行こうか」
流石にこれで拒否するほど往生際が悪い訳ではない。
「んじゃマキナ、頼んだ」
『了解しました』
俺の部屋の窓を開けたヤツキが初めに屋根の上にひょいとひと飛びで飛び乗り、次いでマキナが俺を抱えたまま、器用に屋根の上へと飛んだ。
それも思いっきり顔を。
「げばっ!?」
敵襲かと思って慌てて起きてみれば、全然全くそういうことは無く、ナナキとそっくりの顔をしたヤツキがこちらを見下ろしていた。
「よく眠れたか?」
「あぁ、よく眠れたよ。危うく覚めない夢を見る所だった。ありがとう」
あー痛え。鼻を触ると少し血が出ていた。どんな勢いで蹴りやがった。こいつ。
「…それはジョークか?それとも本気か?」
「…ジョークに決まってんだろ。出来が悪くて悪かったな」
言ってから気づく。
「あぁ、たまに見る変な悪夢とかって《勇者》特有の?」
「そういうものもある。大方は過去の《勇者》の記憶、その断片だったり、あるいは神からのお告げだったりと場合によるが──まぁ大方はそうだろうな」
へぇ、あれってそんな意味あったのか。
それはさておき。
「で、この満身創痍の怪我人様を蹴起こす程の要件ってのは何だ?」
蹴られた時に身体のあちこちが痛んだ。アーネが寝ている間に治療してくれた訳でも無さそうだし、空腹感からして何日も寝ていた訳でも無さそうだ。
「あぁ、約束しただろう?花火を見に行こう」
「は?んな事──」
『言ってたな。二十八日の夜に花火が上がるから二人で見よう、って』
言ったな。俺。
ってことは何、俺そのためだけに叩き起こされたの?
『まぁ、十中八九そういう事だろう』
「…どうした?行かないのか?」
「…行くってどこにだ。俺は足やらかしてるからあんまり遠出はしたくないんだが」
森の中じゃあ木々が邪魔してロクに見えないだろうし、森の外まで歩いていくのは俺の足のせいで難しい。モンスターパレード直後は魔獣が二、三日攻めてこないことは良くあるが、それも無いとも言いきれない。
「どこと言ってもな。上だよ」
「……あぁ、屋根の」
それなら大分違うだろう。花火は結界スレスレまで上がると聖女サマは言っていたし、屋根の上ならかろうじて見える…かもしれない。
だが…
「俺にどうやって登れと?」
足やらかしてる上に肋もやらかしてる。自分で言うのも何だが、ベッドの上から動くべきじゃないと思うんだが。
『昼間に腹減ったって言って芋取りに行ったじゃねぇか』
それはそれ、これはこれ。
「あぁ、それなら──マキナ」
部屋の戸の方においでおいでとヤツキがすると、扉が開いてマキナが顔を出した。
『なんでしょうか・ヤツキ様』
「そこのポンコツ主人を担いでやれ。で、屋根の上に運んでくれ」
『了解しました』
「え、嘘、ちょい待っ、のぉう」
簡単にお姫様抱っこされた。と言うか──
「なんでマキナが動いてるんだ?俺、魔力入れた記憶が──」
「それか?私が試しに魔力を入れたら動いたぞ」
あぁそうか、もう《勇者》じゃないから魔力は普通に扱えるのね。
「それでは上に行こうか」
流石にこれで拒否するほど往生際が悪い訳ではない。
「んじゃマキナ、頼んだ」
『了解しました』
俺の部屋の窓を開けたヤツキが初めに屋根の上にひょいとひと飛びで飛び乗り、次いでマキナが俺を抱えたまま、器用に屋根の上へと飛んだ。
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