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本編
闇と話
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「時間もないでしょうし、このまま進みながら話しましょうか」
アベルと名乗った彼はそう言い、俺の肩を掴む。
「…ベタベタ触んじゃねぇよ」
「と言われましても。僕は自力で深層へは降りれませんので、あなたに引っ張ってもらうしかありませんし」
使えねぇ。
仕方なく肩に触ることを許可し、静かに下へと降りてゆく。
「で、アベルだったか。お前が言う理ってのは金色をしたあの剣で合ってるのか?」
「えぇ。少し前にあなたと契約し直した時に一度顔を合わせていますが…やはり覚えていませんか」
「生憎と全くだな。小指の先ほどにも覚えちゃねぇ」
しかしこいつが金剣?呪いの類いでそういう、人格が宿るものがあるらしいというのは聞いたことがあるが…そんな物ならヤツキやシャルが最初に言ってそうだし、その可能性は低いか。
「ならどこから話しましょうか。僕の生い立ち──というのも変ですが、この世界に出来た時の話をしましょうか?それとも僕が隊長と初めて出会った時?あるいは何故たかが剣である僕がここに今いるのか、その話をしましょうか?」
「どれも興味深いが、先に一つ聞いておきたい」
「いいですよ。答えられる限り答えましょう。我が主人よ」
肩に引っ付きながら言うんじゃ格好がつかねぇな、それ。
「お前は俺に使われて満足か?」
「それは…どう言った意味でしょうか」
「俺達に、って言ったらもっと分かりやすいか?」
《勇者》を殺す為に作られたはずの剣が、その当人達に使われる。怒ってもいい気がするんだが、こいつからはそういった感情は全く感じない。
「あぁ、全く構いませんよ」
「いいのか?」
「はい。元々僕は──」
俺から片手を離し、俺の顔の前に持ってくる。
ぐっ、と握った拳がすぐに固そうな金槌に変化するのを見せ、すぐにまた白い肌の手に戻る。
「弾切れの起こさない便利な兵器として作られましたので」
「………は?」
なんだそれ、聞いてた話と違うんだが。
「対特異点…《勇者》を殺す為に特化していたのは兄、カインですね。あなたには連の方が聞き馴染みがあるかもしれませんが」
アベルが話を続ける。
「もっとも、兄は僕のような人格は存在しませんし、この名前も僕が勝手に呼んでいるだけですが」
「いや、その辺はどうでもいい。けど何?弾切れのない便利な兵器?」
「はい、それが僕の起源です。僕が機人のとある都市で作られたのはご存知ですか?」
「あ、あぁ。一応な」
「機人の主な武装は銃火器だったのですが、滅亡の十年ほど前から弾薬が作れないほど物資が枯渇し始めたのです。そこで考えられたのが僕のような存在です」
なるほど、刀剣などの近接武器は鉄やら何やらが必要な銃火器と比べて物資の消耗具合は少ないだろうな。
「それでも今までの戦い方に慣れきってしまった機人は自ら剣を振るのではなく、剣に剣を振らせることを選んだのですが……」
「それでお前が生まれたわけか…ん?でもカインとかいうお前の兄貴は──」
「はい、兄は…その、失敗作でしたので」
あぁ、やはりこの三日間で見た変な夢は銀剣にまつわる話だったらしい。
「あなたに少々負荷をかけてしまったようですが、僕はどうしても兄の事を今のうちに知って欲しかったのです」
「そうか」
さて、ようやく扉に着いた。
ちょっとの覚悟と共に、俺はそれをまた少し押した。
「あなたがナナキさん…隊長に限りなく似ているものと戦ったために極々僅かな時間だけ繋がったパス、言うべきことは実はかなりあったのですが、ほとんど雑談で終わってしまいましたね」
「は?いやちょっと待て、言うべきことがかなりあったのにもう終わるって!?」
慌てて振り返れば既にアベルの身体は光になって解けていく最中。
「どうも僕は成長していないようです。隊長にもし会ったらどやされるだろうなぁ…」
「いや、ンなこと言ってないで言うべきことってのを言えよ!」
「魔族の内通者は居ます。確実に」
俺がなにか反応を返す前にアベルが完全に消え、俺が急に釣り上げられる感覚。
あぁクソ、次会ったらあの顔ぶん殴ってやる。
アベルと名乗った彼はそう言い、俺の肩を掴む。
「…ベタベタ触んじゃねぇよ」
「と言われましても。僕は自力で深層へは降りれませんので、あなたに引っ張ってもらうしかありませんし」
使えねぇ。
仕方なく肩に触ることを許可し、静かに下へと降りてゆく。
「で、アベルだったか。お前が言う理ってのは金色をしたあの剣で合ってるのか?」
「えぇ。少し前にあなたと契約し直した時に一度顔を合わせていますが…やはり覚えていませんか」
「生憎と全くだな。小指の先ほどにも覚えちゃねぇ」
しかしこいつが金剣?呪いの類いでそういう、人格が宿るものがあるらしいというのは聞いたことがあるが…そんな物ならヤツキやシャルが最初に言ってそうだし、その可能性は低いか。
「ならどこから話しましょうか。僕の生い立ち──というのも変ですが、この世界に出来た時の話をしましょうか?それとも僕が隊長と初めて出会った時?あるいは何故たかが剣である僕がここに今いるのか、その話をしましょうか?」
「どれも興味深いが、先に一つ聞いておきたい」
「いいですよ。答えられる限り答えましょう。我が主人よ」
肩に引っ付きながら言うんじゃ格好がつかねぇな、それ。
「お前は俺に使われて満足か?」
「それは…どう言った意味でしょうか」
「俺達に、って言ったらもっと分かりやすいか?」
《勇者》を殺す為に作られたはずの剣が、その当人達に使われる。怒ってもいい気がするんだが、こいつからはそういった感情は全く感じない。
「あぁ、全く構いませんよ」
「いいのか?」
「はい。元々僕は──」
俺から片手を離し、俺の顔の前に持ってくる。
ぐっ、と握った拳がすぐに固そうな金槌に変化するのを見せ、すぐにまた白い肌の手に戻る。
「弾切れの起こさない便利な兵器として作られましたので」
「………は?」
なんだそれ、聞いてた話と違うんだが。
「対特異点…《勇者》を殺す為に特化していたのは兄、カインですね。あなたには連の方が聞き馴染みがあるかもしれませんが」
アベルが話を続ける。
「もっとも、兄は僕のような人格は存在しませんし、この名前も僕が勝手に呼んでいるだけですが」
「いや、その辺はどうでもいい。けど何?弾切れのない便利な兵器?」
「はい、それが僕の起源です。僕が機人のとある都市で作られたのはご存知ですか?」
「あ、あぁ。一応な」
「機人の主な武装は銃火器だったのですが、滅亡の十年ほど前から弾薬が作れないほど物資が枯渇し始めたのです。そこで考えられたのが僕のような存在です」
なるほど、刀剣などの近接武器は鉄やら何やらが必要な銃火器と比べて物資の消耗具合は少ないだろうな。
「それでも今までの戦い方に慣れきってしまった機人は自ら剣を振るのではなく、剣に剣を振らせることを選んだのですが……」
「それでお前が生まれたわけか…ん?でもカインとかいうお前の兄貴は──」
「はい、兄は…その、失敗作でしたので」
あぁ、やはりこの三日間で見た変な夢は銀剣にまつわる話だったらしい。
「あなたに少々負荷をかけてしまったようですが、僕はどうしても兄の事を今のうちに知って欲しかったのです」
「そうか」
さて、ようやく扉に着いた。
ちょっとの覚悟と共に、俺はそれをまた少し押した。
「あなたがナナキさん…隊長に限りなく似ているものと戦ったために極々僅かな時間だけ繋がったパス、言うべきことは実はかなりあったのですが、ほとんど雑談で終わってしまいましたね」
「は?いやちょっと待て、言うべきことがかなりあったのにもう終わるって!?」
慌てて振り返れば既にアベルの身体は光になって解けていく最中。
「どうも僕は成長していないようです。隊長にもし会ったらどやされるだろうなぁ…」
「いや、ンなこと言ってないで言うべきことってのを言えよ!」
「魔族の内通者は居ます。確実に」
俺がなにか反応を返す前にアベルが完全に消え、俺が急に釣り上げられる感覚。
あぁクソ、次会ったらあの顔ぶん殴ってやる。
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