もう、いいのです。

千 遊雲

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もう、いいのです

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女の体がふわりと光った。

呆然としていたクレアの瞳が、その光に導かれるように女のことを捉える。



「めがみ、さま」



女のことを見つめた瞬間、クレアの瞳から再び大粒の涙が零れ落ちた。

それを行ったのはフィルだと言うのに、見ているだけで痛々しく思うほど、クレアは泣いていた。



『今のそなたにこの顔は辛いかしら。あの者の顔は、私に似すぎていた』



女がクレアの背中を、落ち着かせるようにポンポンと叩いた。

あの者というのが誰を指すのかフィルには分からなかったけれど、女の動作が優しく、慈愛に満ちたもので、クレアのことを心から愛していることだけは分かった。

けれど、それは大切なことではない。それよりも…



「女神様、だと?」



フィルが問いかけるように呟けば、答えたのはクレアではなく女神と呼ばれた女だった。



『この国の王子は無知だこと。私はそなたの国を守る女神、トリートゲネイア』



女…いや、女神がそう言って、輝きを放つその体を見せる。

その明らかに人ではない姿に、ようやくフィルは状況を把握して跪いた。



「無礼を失礼致しました。女神様、何故このような場にお姿を…」



純粋な疑問ではあったけれど、何やら拙そうな気配に、自分は知らなかったのだと先手を打っておきたかった。

けれどそれは、女神の火に油を注いでしまうだけだった。



『そう、そなたは何も知らないと言うのね』



声はうつくしく、優雅さを残したままなのに、何故か女神が静かに怒っていると伝わる。

ぞっとするほどの怒りを受けたフィルは、言葉を発せなかった。

女神はそんなフィルに目もくれず、美しい声で、まるでお伽話でも語るかのように話し始めた。


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