88 / 135
あなたからのお願い
5
しおりを挟む
「何よ……。私、絶対に認めないわ。パパの会社と取引ができなくなってもいいの?」
「お前は、そんなことをする奴じゃない。それに、モデル仲間の健人も貴也も、お前のことが好きなんだ。そのこと、知ってるだろ? あいつらは、本当に良い奴らだ。だから、お前はお前の幸せを見つけてほしい。俺には……柚葉が必要なんだ」
樹は、沙也加さんの前に立って諭すように言った。
こんなこと言われたら、沙也加さんは余計に樹を好きになるかも知れない。
樹の言葉には温かさがあって、私も、何度心を揺さぶられたかわからない。
「それでも、私……やっぱり樹が好き。樹を諦めたくない。それはわかってちょうだい。柚葉さん」
「は、はい」
「今日から私達はライバルだから。絶対、あなたには負けない」
沙也加さんは足早にラウンジを出ていった。
私は、なぜか沙也加さんを憎めなかった。
人を好きになって、それが成就しない気持ちって、本当につらいから……
ごめんなさい、嘘ついてしまって……
「柚葉、悪かった。会社を立ち上げてすぐに、沙也加にお父さんを紹介してもらった。その時はただの友達だったのに、少し前に交際を申し込まれて。何度断っても無理だった。それで、お前に……」
「そっか……うん、わかった。沙也加さんに早く諦めて幸せになってもらいたいんだよね。それが、沙也加さんに対する樹の優しさ……」
「そんな良いもんじゃない。確かに、仲間としては沙也加に幸せになってもらいたい。だけど、正直、取引先として、もし今の関係を切られたらって……。そんな不安が頭をよぎったのも確かだ」
「当然だよ。仕事は遊びじゃないし。大事な取引先から手を引かれたらどうなるかくらい、私でもわかるよ」
「本当に悪かった。でも、今は、もしそうなっても仕方ないと思ってる。俺のせいだし、その分、またがむしゃらに仕事を頑張ればいいだけだ」
樹の無理してる顔がせつない。
「お前は、そんなことをする奴じゃない。それに、モデル仲間の健人も貴也も、お前のことが好きなんだ。そのこと、知ってるだろ? あいつらは、本当に良い奴らだ。だから、お前はお前の幸せを見つけてほしい。俺には……柚葉が必要なんだ」
樹は、沙也加さんの前に立って諭すように言った。
こんなこと言われたら、沙也加さんは余計に樹を好きになるかも知れない。
樹の言葉には温かさがあって、私も、何度心を揺さぶられたかわからない。
「それでも、私……やっぱり樹が好き。樹を諦めたくない。それはわかってちょうだい。柚葉さん」
「は、はい」
「今日から私達はライバルだから。絶対、あなたには負けない」
沙也加さんは足早にラウンジを出ていった。
私は、なぜか沙也加さんを憎めなかった。
人を好きになって、それが成就しない気持ちって、本当につらいから……
ごめんなさい、嘘ついてしまって……
「柚葉、悪かった。会社を立ち上げてすぐに、沙也加にお父さんを紹介してもらった。その時はただの友達だったのに、少し前に交際を申し込まれて。何度断っても無理だった。それで、お前に……」
「そっか……うん、わかった。沙也加さんに早く諦めて幸せになってもらいたいんだよね。それが、沙也加さんに対する樹の優しさ……」
「そんな良いもんじゃない。確かに、仲間としては沙也加に幸せになってもらいたい。だけど、正直、取引先として、もし今の関係を切られたらって……。そんな不安が頭をよぎったのも確かだ」
「当然だよ。仕事は遊びじゃないし。大事な取引先から手を引かれたらどうなるかくらい、私でもわかるよ」
「本当に悪かった。でも、今は、もしそうなっても仕方ないと思ってる。俺のせいだし、その分、またがむしゃらに仕事を頑張ればいいだけだ」
樹の無理してる顔がせつない。
1
あなたにおすすめの小説
お前が愛おしい〜カリスマ美容師の純愛
ラヴ KAZU
恋愛
涼風 凛は過去の恋愛にトラウマがあり、一歩踏み出す勇気が無い。
社長や御曹司とは、二度と恋はしないと決めている。
玉森 廉は玉森コーポレーション御曹司で親の決めたフィアンセがいるが、自分の結婚相手は自分で決めると反抗している。
そんな二人が恋に落ちる。
廉は社長である事を凛に内緒でアタックを開始するが、その事がバレて、凛は距離を置こうとするが・・・
あれから十年、凛は最悪の過去をいまだに引き摺って恋愛に臆病になっている。
そんな凛の前に現れたのが、カリスマ美容師大和颯、凛はある日スマホを拾った、そのスマホの持ち主が颯だった。
二人は惹かれあい恋に落ちた。しかし凛は素直になれない、そんなある日颯からドライブに誘われる、「紹介したい人がいるんだ」そして車から降りてきたのは大和 祐、颯の息子だった。
祐は颯の本当の息子ではない、そして颯にも秘密があった。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
俺に抱かれる覚悟をしろ〜俺様御曹司の溺愛
ラヴ KAZU
恋愛
みゆは付き合う度に騙されて男性不信になり
もう絶対に男性の言葉は信じないと決心した。
そんなある日会社の休憩室で一人の男性と出会う
これが桂木廉也との出会いである。
廉也はみゆに信じられない程の愛情を注ぐ。
みゆは一瞬にして廉也と恋に落ちたが同じ過ちを犯してはいけないと廉也と距離を取ろうとする。
以前愛した御曹司龍司との別れ、それは会社役員に結婚を反対された為だった。
二人の恋の行方は……
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる