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第四話
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トキオが少し戸惑ったような笑みを見せるのを意に介していない態度で、トキオに貴婦人がするような礼をしてみせた。
「えっと」
トキオが何か言おうとしたのを遮るように、おんなは妖艶な花びらのような唇から言葉を零す。
「はじめまして、トキオ・ロングドウン・ナイト様。FASTの報道部を代表して、お祝いを申し上げますわ」
トキオは困惑した笑みのまま、後ろにひかえる隻眼の老人に問いをなげる。
「うーん、取材許可ってだしてたっけ?」
「出されておりますよ、まあ」
老人は、慇懃な態度で応える。
「日時の調整はまだでしたので、今日来られるとは思っておりませんでしたが」
「ふーん。まあ、来ちゃったものはしょうがないかな。えっと」
おんなは招かれざる客とあからさまに言われたのを全く気にした様子もなく、当然のように名乗る。
「アグネス・チョウと、申します。光栄ですわ、この素敵な祝いの日にお話しをうかがえるとは」
「ははは」
トキオは、乾いた笑い声をあげる。アグネスと名乗ったおんなは、まわりの注目を浴びてしまっており今更粗略に扱うわけにもいかない。とても面倒くさそうに、トキオは返礼する。
「大陸からわざわざ来ていただき、こちらこそ光栄? かな。ははは」
「では、さっそくいくつかご質問を」
「あ、手短にね。一応、ホストとしての役目があるから」
アグネスは、トキオのその言葉を聞き流し無視するかのように話をきりだした。
「トキオ様の運営されるロングドウン・ナイト財団は、今期も過去最高収益を更新されると予測しております。重ねてお祝いを申し上げます」
「へえ、そうなの」
トキオのとぼけた態度をアグネスは無視して、言葉を続ける。
「その快進撃を支えているのは、ダンジョンシーカーのひとり、黒天狐がもたらしたダンジョンの技術を活用したものと我々の取材で把握しております」
「へえ、そうなんだ」
トキオは茫洋とした返事をする。ただその瞳は鋼の怜悧さでおんなを見つめその意図をさぐっていた。
「ま、そういう話はそこのヒース君にきくといいよ。彼は、黒天狐から独占取材の許可を得ているジャーナリストだから」
ヒースはいきなりふられて、苦笑を浮かべる。黒天狐とは、トキオが変装した人物であるがそれを知るのはヒースと隻眼の老人だけであった。そもそも、ダンジョン・シーカーは皆その正体を明らかにしないものだ。十三人のダンジョンシーカーのうち素性を明らかにしているのは、ソニック・ホッパーだけである。
まあ、ソニック・ホッパーとて知られているのはアクムシという本名だけで、その経歴は杳として定かではない。
おんなはヒースには目もくれず、自分の言いたいことをしゃべりつづける。
「トキオ様が黒天狐から得た最大の技術は、錬金術を応用した元素変換。そしてその技術で、あなたがたはレアメタルを生成し市場を席捲している」
トキオは、肩をすくめる。そして、後ろにひかえるアカワに目をむけた。
「なんか、うちの情報だだ漏れなんだけど」
アカワは呆れたというふうに、ため息をついた。
「トキオぼっちゃん。あなたはアホですか? いくらFASTの取材でも、企業秘密に関わることは肯定も否定もしなくていいですよ」
トキオは、ぽんと手をうった。
「あー、今のナシにしてね。大体、ダンジョンから得た技術はギルドが管理してるから流出するわけないよ」
「えっと」
トキオが何か言おうとしたのを遮るように、おんなは妖艶な花びらのような唇から言葉を零す。
「はじめまして、トキオ・ロングドウン・ナイト様。FASTの報道部を代表して、お祝いを申し上げますわ」
トキオは困惑した笑みのまま、後ろにひかえる隻眼の老人に問いをなげる。
「うーん、取材許可ってだしてたっけ?」
「出されておりますよ、まあ」
老人は、慇懃な態度で応える。
「日時の調整はまだでしたので、今日来られるとは思っておりませんでしたが」
「ふーん。まあ、来ちゃったものはしょうがないかな。えっと」
おんなは招かれざる客とあからさまに言われたのを全く気にした様子もなく、当然のように名乗る。
「アグネス・チョウと、申します。光栄ですわ、この素敵な祝いの日にお話しをうかがえるとは」
「ははは」
トキオは、乾いた笑い声をあげる。アグネスと名乗ったおんなは、まわりの注目を浴びてしまっており今更粗略に扱うわけにもいかない。とても面倒くさそうに、トキオは返礼する。
「大陸からわざわざ来ていただき、こちらこそ光栄? かな。ははは」
「では、さっそくいくつかご質問を」
「あ、手短にね。一応、ホストとしての役目があるから」
アグネスは、トキオのその言葉を聞き流し無視するかのように話をきりだした。
「トキオ様の運営されるロングドウン・ナイト財団は、今期も過去最高収益を更新されると予測しております。重ねてお祝いを申し上げます」
「へえ、そうなの」
トキオのとぼけた態度をアグネスは無視して、言葉を続ける。
「その快進撃を支えているのは、ダンジョンシーカーのひとり、黒天狐がもたらしたダンジョンの技術を活用したものと我々の取材で把握しております」
「へえ、そうなんだ」
トキオは茫洋とした返事をする。ただその瞳は鋼の怜悧さでおんなを見つめその意図をさぐっていた。
「ま、そういう話はそこのヒース君にきくといいよ。彼は、黒天狐から独占取材の許可を得ているジャーナリストだから」
ヒースはいきなりふられて、苦笑を浮かべる。黒天狐とは、トキオが変装した人物であるがそれを知るのはヒースと隻眼の老人だけであった。そもそも、ダンジョン・シーカーは皆その正体を明らかにしないものだ。十三人のダンジョンシーカーのうち素性を明らかにしているのは、ソニック・ホッパーだけである。
まあ、ソニック・ホッパーとて知られているのはアクムシという本名だけで、その経歴は杳として定かではない。
おんなはヒースには目もくれず、自分の言いたいことをしゃべりつづける。
「トキオ様が黒天狐から得た最大の技術は、錬金術を応用した元素変換。そしてその技術で、あなたがたはレアメタルを生成し市場を席捲している」
トキオは、肩をすくめる。そして、後ろにひかえるアカワに目をむけた。
「なんか、うちの情報だだ漏れなんだけど」
アカワは呆れたというふうに、ため息をついた。
「トキオぼっちゃん。あなたはアホですか? いくらFASTの取材でも、企業秘密に関わることは肯定も否定もしなくていいですよ」
トキオは、ぽんと手をうった。
「あー、今のナシにしてね。大体、ダンジョンから得た技術はギルドが管理してるから流出するわけないよ」
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