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第五話
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おんなは、平然と応える。
「もちろんギルドはモンスターの死体やアーティファクトを管理しますけど、ダンジョンで得た知識は管理できないのでは?」
「ヒースは戦争屋だから、元素変換の原理を黒天狐からきいても理解できないと思うけどなぁ」
「おい」
ヒースは思わず口をはさんたが、トキオは茫洋とした笑みを崩さない。おんなは妖艶に微笑みつつ、トキオの戯言には付き合う素振りをみせなかった。
「レアメタルの市場への安価な提供についてアフリカ連合は、市場を不用意に混乱させたとして抗議をあげたとききます」
トキオは、長いため息をつく。
「ヨーロッパ連合からは、市場を正常化したといって感謝の意をもらったよ。まあ、アフリカ連合ってFASTの傀儡でしょ」
「ダンジョンの技術が、市場を正常化することもあるでしょう。でも、それが一企業に独占されているのは正常と思いますか?」
「僕らが、ダンジョンの技術を独占? 不可能だね、ギルドもいるしFASTもそれは許さない」
おんなは夜の花が濃厚な香りをふりまくように、艶やかな笑みを浮かべている。トキオは無関心なふうに、それを受け流した。
「いずれにせよ、あなたがたはダンジョンからの恩恵で成り立つビジネスをしていらっしゃる。けれど、それは危ういのでは?」
「はぁ? 何をおっしゃるつもりですかね」
「オルターネイティブ、この島に昔から住まう原住民のうち、非人類をそう呼ぶとききますが。彼らは、ダンジョンの技術は自分たちのものと考えそれを独占しようと考えている」
トキオは、呆れたように笑う。
「いろんなひとがいるのは、知ってる。けれど」
「そしてあなたのご両親は、オルターネイティブのテロルで死亡した」
ヒースは、トキオの顔が笑みを浮かべたままではあるが仮面のように精彩を失うのをみる。ヒースは、トキオがこころの底に秘めているどす黒いものが蠢くのを抑え込むのに、集中しているような気もした。トキオは、乾いた声で言う。
「何が、言いたい?」
「あなたがたは、オルターネイティブのテロリストと対決することになる。もちろんあなたがたには、それをできる力がある。けれど、民間では限界があるでしょう」
トキオは、嵐の前に異様な静けさをたたえる海のように微笑む。
おんなは、意を得たというかのように頷く。
「FASTの対テロ実行部隊と、手を組むべきでは? こちらには、その用意があります」
突然、ぱぁっと明るい笑みをトキオはみせる。そして、隻眼の老人に耳打ちした。
アカワは、無言のままトレイにのせたふたつのワイングラスをさしだす。
「その問いに答えるまえに、僕の愛する一九五十年もののロマネ・コンティで喉を潤すとしよう」
アグネスは、血のよう赤い酒をで満たされたグラスを手にする。トキオも、グラスを手にとりかかげた。おんなは、勝利を得た女神の笑みを浮かべ周囲の賓客たちが少しどよめく。
「もちろんギルドはモンスターの死体やアーティファクトを管理しますけど、ダンジョンで得た知識は管理できないのでは?」
「ヒースは戦争屋だから、元素変換の原理を黒天狐からきいても理解できないと思うけどなぁ」
「おい」
ヒースは思わず口をはさんたが、トキオは茫洋とした笑みを崩さない。おんなは妖艶に微笑みつつ、トキオの戯言には付き合う素振りをみせなかった。
「レアメタルの市場への安価な提供についてアフリカ連合は、市場を不用意に混乱させたとして抗議をあげたとききます」
トキオは、長いため息をつく。
「ヨーロッパ連合からは、市場を正常化したといって感謝の意をもらったよ。まあ、アフリカ連合ってFASTの傀儡でしょ」
「ダンジョンの技術が、市場を正常化することもあるでしょう。でも、それが一企業に独占されているのは正常と思いますか?」
「僕らが、ダンジョンの技術を独占? 不可能だね、ギルドもいるしFASTもそれは許さない」
おんなは夜の花が濃厚な香りをふりまくように、艶やかな笑みを浮かべている。トキオは無関心なふうに、それを受け流した。
「いずれにせよ、あなたがたはダンジョンからの恩恵で成り立つビジネスをしていらっしゃる。けれど、それは危ういのでは?」
「はぁ? 何をおっしゃるつもりですかね」
「オルターネイティブ、この島に昔から住まう原住民のうち、非人類をそう呼ぶとききますが。彼らは、ダンジョンの技術は自分たちのものと考えそれを独占しようと考えている」
トキオは、呆れたように笑う。
「いろんなひとがいるのは、知ってる。けれど」
「そしてあなたのご両親は、オルターネイティブのテロルで死亡した」
ヒースは、トキオの顔が笑みを浮かべたままではあるが仮面のように精彩を失うのをみる。ヒースは、トキオがこころの底に秘めているどす黒いものが蠢くのを抑え込むのに、集中しているような気もした。トキオは、乾いた声で言う。
「何が、言いたい?」
「あなたがたは、オルターネイティブのテロリストと対決することになる。もちろんあなたがたには、それをできる力がある。けれど、民間では限界があるでしょう」
トキオは、嵐の前に異様な静けさをたたえる海のように微笑む。
おんなは、意を得たというかのように頷く。
「FASTの対テロ実行部隊と、手を組むべきでは? こちらには、その用意があります」
突然、ぱぁっと明るい笑みをトキオはみせる。そして、隻眼の老人に耳打ちした。
アカワは、無言のままトレイにのせたふたつのワイングラスをさしだす。
「その問いに答えるまえに、僕の愛する一九五十年もののロマネ・コンティで喉を潤すとしよう」
アグネスは、血のよう赤い酒をで満たされたグラスを手にする。トキオも、グラスを手にとりかかげた。おんなは、勝利を得た女神の笑みを浮かべ周囲の賓客たちが少しどよめく。
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