【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵

文字の大きさ
15 / 56
力が欲しいか

15

しおりを挟む
「アーベル殿下は、魔力の筋が非常に良いです。もし神聖魔法を修めれば、治癒や結界だけでなく、より深い理の理解にもつながるはずです。王族が神に仕える道を完全に閉ざす必要はないと、私は……」
「黙れ」
一言、その一語で空気が凍りついた。
「まさかとは思うが……お前が、王子をそそのかしたのではあるまいな?」
その声音に、リュシアンの背筋が凍る。視線だけで殺気を帯びる王に、言葉が詰まった。
(おっと、やべえ。断罪イベントはまだ先だと思ったけど意外なところでフラグを立てたか!?)
「い、いえ……私はただ、彼の意志を……」
「我が息子を、誤った道に引きずり込むなど——断じて許されることではない」
「そんなつもりは……!」
リュシアンが必死に否定しようとするその前に、アーベルが一歩前へ出た。
「父上!」
その声は、先ほどの訴えよりもはるかに強かった。
「彼は何も悪くありません。神聖魔法を学びたいと願ったのは、私自身の意思です。誰かに言われたわけではありません」
「アーベル——」
リュシアンが驚いたようにその名を呟く。
「リュシアンは、ただ私の能力を見て、正直な意見を述べただけです。彼がいなければ、私は自分の魔力を正しく理解することもできなかったでしょう」
「……」
王の眼差しが、息子と魔術師を交互に見つめる。怒気を含んだ沈黙が、部屋全体を支配した。
「以上だ。もうこの話は終わりとする」
「……わかりました」
アーベルは静かに頭を下げた。
その後ろでリュシアンも深く頭を垂れるが、その手はわずかに震えていた。

結局その場で特にお咎めはなく、俺たちは解放された
(はー生きた心地がしなかったぜ)
中庭に出て、緊張感から解放されるとアーベルと同時にため息をつく。

「……助けてくれて、ありがとな」
アーベルは静かに横に首を振った。
「助けられたのは僕の方だよ。ありがとう、リュシアン」
そう言いながら少し落ち込んだ様子のアーベルに、俺は何も言えなかった。

「神聖魔法も黒魔法もだめかあ」
「残念だったな」
ふっとアーベルの顔に笑みが溢れた。
「ううん。でもいいんだ」

「そうなのか?」
「うん。いいんだ。これで」
アーベルが振り返る。なぜか溢れるような満面の笑みを浮かべていた。
「今度黒魔法、見せてよ。イリュージョンの魔法とかあるんでしょう?」
「ああ、何しろ上位の悪魔と契約したからな。結構すごいのが出せるぜ」
楽しみなだと笑うアーベルを見て王宮での苦労とストレスが吹き飛んだ気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

処理中です...