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仮面の下で
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ーー2年後
俺は学園を卒業し寮を出て、時計台の裏にある狭い部屋に越してきていた。
前の住人の残置物があるため安く借りられたのだが、精霊魔法の魔導書や発動体をはじめ魔法関係の書物が揃っており、むしろ役得だった。
王宮に仕える研究魔術師として召し抱えられた俺は、表向きは精霊魔法しか使えないふりをしつつ、少しずつ部屋を片付けていた。
アーベルとは、聖騎士団に入っている2年間、手紙をひと月に一度は交わしていた。
そろそろ帰ってくる頃だと手紙には書いてあったが、ここ数日は音沙汰なかった
(ひょっとして、忘れられてんのか?)
死亡フラグのことを考えると好ましい展開なのかもしれないが、なぜだか胸がざわついた。手紙では俺のことが忘れられないだの、いなくて寂しいだの散々書いたくせに。
ある日、換気のためにドアと窓を開け放ち、だらだらと片付けをしていると——
「リュシアン!」
聞き慣れた、だがどこか深みのある低い声だった。
振り向くと、そこに立っていたのは——見覚えのある金髪の青年。
「……え?」
一瞬、誰だかわからなかった。
陽光を浴びて輝く金髪はそのままだが、以前のアーベルとは明らかに違っていた。
細身でどこか儚げだった少年の面影は薄れ、今そこに立つのは、長い修行を経た戦士のような堂々たる体躯の青年だった。
身長は俺よりも頭ひとつ分ほど高く、肩幅も広くなっている。
髪は少し短くなって、ギリシャの彫刻のような輪郭をよりくっきりと浮かび上がらせている。
以前は優雅な貴族の少年らしい柔和さがあったが、今の彼の顔立ちは精悍さを増し、その碧眼はまるで迷いを知らぬ聖騎士のように澄んでいた。
黒い法衣の上に、神聖な紋章の刺繍が施された白いマントを羽織り、その立ち姿は威厳さえ感じさせる。
「リュシアン……久しぶり」
その声も低く、落ち着いた響きを帯びていた。
「お前……本当にアーベルか?」
思わず疑問の声が漏れる。
すると、アーベルは目を細め、少し寂しげに笑った。
「そんなに変わった?」
「いや、変わりすぎだろ……」
俺は言葉を失ったまま、目の前の青年を見上げた。
二年前、俺の後ろをついてきてはしゃいでいた子犬のような可愛らしい少年は、もうどこにもいなかった。
代わりに——俺の前には、どこに出しても恥ずかしくない立派なイケメンへと成長したアーベルがいた。
俺は学園を卒業し寮を出て、時計台の裏にある狭い部屋に越してきていた。
前の住人の残置物があるため安く借りられたのだが、精霊魔法の魔導書や発動体をはじめ魔法関係の書物が揃っており、むしろ役得だった。
王宮に仕える研究魔術師として召し抱えられた俺は、表向きは精霊魔法しか使えないふりをしつつ、少しずつ部屋を片付けていた。
アーベルとは、聖騎士団に入っている2年間、手紙をひと月に一度は交わしていた。
そろそろ帰ってくる頃だと手紙には書いてあったが、ここ数日は音沙汰なかった
(ひょっとして、忘れられてんのか?)
死亡フラグのことを考えると好ましい展開なのかもしれないが、なぜだか胸がざわついた。手紙では俺のことが忘れられないだの、いなくて寂しいだの散々書いたくせに。
ある日、換気のためにドアと窓を開け放ち、だらだらと片付けをしていると——
「リュシアン!」
聞き慣れた、だがどこか深みのある低い声だった。
振り向くと、そこに立っていたのは——見覚えのある金髪の青年。
「……え?」
一瞬、誰だかわからなかった。
陽光を浴びて輝く金髪はそのままだが、以前のアーベルとは明らかに違っていた。
細身でどこか儚げだった少年の面影は薄れ、今そこに立つのは、長い修行を経た戦士のような堂々たる体躯の青年だった。
身長は俺よりも頭ひとつ分ほど高く、肩幅も広くなっている。
髪は少し短くなって、ギリシャの彫刻のような輪郭をよりくっきりと浮かび上がらせている。
以前は優雅な貴族の少年らしい柔和さがあったが、今の彼の顔立ちは精悍さを増し、その碧眼はまるで迷いを知らぬ聖騎士のように澄んでいた。
黒い法衣の上に、神聖な紋章の刺繍が施された白いマントを羽織り、その立ち姿は威厳さえ感じさせる。
「リュシアン……久しぶり」
その声も低く、落ち着いた響きを帯びていた。
「お前……本当にアーベルか?」
思わず疑問の声が漏れる。
すると、アーベルは目を細め、少し寂しげに笑った。
「そんなに変わった?」
「いや、変わりすぎだろ……」
俺は言葉を失ったまま、目の前の青年を見上げた。
二年前、俺の後ろをついてきてはしゃいでいた子犬のような可愛らしい少年は、もうどこにもいなかった。
代わりに——俺の前には、どこに出しても恥ずかしくない立派なイケメンへと成長したアーベルがいた。
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