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仮面の下で
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仮面舞踏会の会場は、金糸で縁取られた緋のカーテンと、天井を埋め尽くす星型のシャンデリアで夢幻の世界と化していた。音楽は緩やかなワルツへと切り替わり、仮面をつけた貴族たちがペアを成して踊りに興じている。
リュシアンは、フリルを抑えた深紅のドレスに身を包み、顔の上半分を仮面で覆っていた。魔法で声もわずかに高く変えている。 (ああ、なにやってんだ俺……)
ため息を噛み殺しながら、リュシアンは聖女リーゼロッテの姿を探していた。本来このパーティで、王子は聖女と恋に落ちる予定なのだ。
俺の介入によってだいぶ王子の人生ルートが変わってしまったが、枢機卿の元にで神聖魔法を習っていた際に、聖女とは姉弟子、弟弟子の関係だったはず。おそらくここで何らかの接触があるはずだーーと思ったのだが――
(まったく接触しねえ!)
リーゼロッテは何故か枢機卿を探しているようなのだが、高速でフロアを歩き回っている。凄まじい速度で、テレポートの魔法がなければ見失うところだった。
(あいつ体力あんな・・・)
普段インドアな俺は息切れしてソファに座り込んだ
(リーゼロッテは枢機卿にご執心だし、そんなに心配することもねえかな)
早速サボりモードに入ってボーッと仮面舞踏会の華やかな世界を眺めていた。高価な黒い玄武岩と白い大理石で作られた市松模様のフロアにはこれでもかと着飾った男女が楽しげに戯れている。
この仮面舞踏会に来ているのは全員王族、もしくはその関係者だ。一方女性は身分を問わない。綺麗な言い方をすれば出会いの場。身も蓋もない言い方をすれば後腐れない女を王族が探す場所だ。
「……隣、いいですか?お嬢さん」
見上げた瞬間、時が止まったように感じた。
声をかけてきたのは、アーベル当の本人だった。 金髪に赤い仮面をまとい、いつもより少しだけ柔らかい笑みを浮かべている。
「こんな夜に、貴女のような方と巡り合えるとは思いませんでした。踊っていただけますか?」
(うそだろ……よりにもよって……)
一瞬逃げようとした。だが、それを読んでいたかのように、王子の指先が軽く俺の手首を取る。
「お気に召さないなら、無理には言いません。ただ……貴女を見た瞬間、なぜか胸がざわついて」
まっすぐに見つめてくる青い瞳。その真剣さに何故か、立ち上がることができなかった。
「……ぐ、具合が悪くて……」
リュシアンの声は、かろうじて魔法の変声で女のように響いていた。だが、その揺れは止められない。
「それは心配だ……なら、せめて水でも。立たずとも、ここで少しだけ話をしてもらえませんか?」
アーベルの声はやさしく、まるで包み込むようだった。だがその言葉の裏に、リュシアンは微かな違和感を覚える。
(なんだよ、こんな優しかったかこいつ……いや、優しいけど、もっとこう、冷静というか、スマートというか……)
思考が渦巻く中、王子は気を遣ってくれているのか、リュシアンの隣にそっと腰を下ろした。
「どなたか探しているんですか?ずっとあなたを追いかけていたんですが、すごい速度で移動されていたので……」
「えっ……」
リュシアンはとっさに答えに詰まる。まさか「元攻略対象の動向を監視している最中です」などと言えるはずもないが・・・
てか、追ってたのかよ。途中テレポートも使ったぞ。こいつの移動力すごいな。
「特に誰も……」
「それならよかった。」
アーベルは微笑む。仮面の奥からでもわかるほどの安堵をにじませて。
(な、なんだその顔……)
胸がずくりと痛む。仮面で顔を隠しているのに、王子の表情があまりにも率直すぎて、なぜだかまともに見られなかった。
リュシアンは、フリルを抑えた深紅のドレスに身を包み、顔の上半分を仮面で覆っていた。魔法で声もわずかに高く変えている。 (ああ、なにやってんだ俺……)
ため息を噛み殺しながら、リュシアンは聖女リーゼロッテの姿を探していた。本来このパーティで、王子は聖女と恋に落ちる予定なのだ。
俺の介入によってだいぶ王子の人生ルートが変わってしまったが、枢機卿の元にで神聖魔法を習っていた際に、聖女とは姉弟子、弟弟子の関係だったはず。おそらくここで何らかの接触があるはずだーーと思ったのだが――
(まったく接触しねえ!)
リーゼロッテは何故か枢機卿を探しているようなのだが、高速でフロアを歩き回っている。凄まじい速度で、テレポートの魔法がなければ見失うところだった。
(あいつ体力あんな・・・)
普段インドアな俺は息切れしてソファに座り込んだ
(リーゼロッテは枢機卿にご執心だし、そんなに心配することもねえかな)
早速サボりモードに入ってボーッと仮面舞踏会の華やかな世界を眺めていた。高価な黒い玄武岩と白い大理石で作られた市松模様のフロアにはこれでもかと着飾った男女が楽しげに戯れている。
この仮面舞踏会に来ているのは全員王族、もしくはその関係者だ。一方女性は身分を問わない。綺麗な言い方をすれば出会いの場。身も蓋もない言い方をすれば後腐れない女を王族が探す場所だ。
「……隣、いいですか?お嬢さん」
見上げた瞬間、時が止まったように感じた。
声をかけてきたのは、アーベル当の本人だった。 金髪に赤い仮面をまとい、いつもより少しだけ柔らかい笑みを浮かべている。
「こんな夜に、貴女のような方と巡り合えるとは思いませんでした。踊っていただけますか?」
(うそだろ……よりにもよって……)
一瞬逃げようとした。だが、それを読んでいたかのように、王子の指先が軽く俺の手首を取る。
「お気に召さないなら、無理には言いません。ただ……貴女を見た瞬間、なぜか胸がざわついて」
まっすぐに見つめてくる青い瞳。その真剣さに何故か、立ち上がることができなかった。
「……ぐ、具合が悪くて……」
リュシアンの声は、かろうじて魔法の変声で女のように響いていた。だが、その揺れは止められない。
「それは心配だ……なら、せめて水でも。立たずとも、ここで少しだけ話をしてもらえませんか?」
アーベルの声はやさしく、まるで包み込むようだった。だがその言葉の裏に、リュシアンは微かな違和感を覚える。
(なんだよ、こんな優しかったかこいつ……いや、優しいけど、もっとこう、冷静というか、スマートというか……)
思考が渦巻く中、王子は気を遣ってくれているのか、リュシアンの隣にそっと腰を下ろした。
「どなたか探しているんですか?ずっとあなたを追いかけていたんですが、すごい速度で移動されていたので……」
「えっ……」
リュシアンはとっさに答えに詰まる。まさか「元攻略対象の動向を監視している最中です」などと言えるはずもないが・・・
てか、追ってたのかよ。途中テレポートも使ったぞ。こいつの移動力すごいな。
「特に誰も……」
「それならよかった。」
アーベルは微笑む。仮面の奥からでもわかるほどの安堵をにじませて。
(な、なんだその顔……)
胸がずくりと痛む。仮面で顔を隠しているのに、王子の表情があまりにも率直すぎて、なぜだかまともに見られなかった。
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