28 / 56
そして婚約は破棄された
28
しおりを挟む
高い鼻梁に切れ長の目、少し下がり気味の眉。
こんな美丈夫が相手では政略結婚とはいえマリーテレーズ王女もすぐに恋に落ちるだろう。そう考えると胸の奥が何故かチリチリと痛んだ。
「・・・リュシアン」
「ん?」
「君に、伝えたいことが・・・」
アーベルが真剣な顔でつぶやいた瞬間、部屋の中に大きな鐘の音が鳴り響いた。時計塔の裏側の部屋なので、定期的に大きな時計台の時刻を告げる鐘が大音量で鳴り響く。脳を揺らすような大きな音に耳を塞いで俺は少し笑った。
「本当に相変わらずひでえ音だな。早く引っ越さないと耳がおかしくなっちまう」
「え・・・リュシアン、引っ越すのか?」
「ああ、お前と王女の結婚を見届けたらエズの方に引っ越そうかと思ってるんだよ」
エズというのはセーヌ川を挟んで北にある都市、住人も少ない小さな街だ。
不意にグッと腕を掴まれた
「どうして!?このまま僕のそばにいてくれても良いじゃないか」
「どうして・・・って」
思ったよりもずっと激しい剣幕に俺は驚いた
「結婚するお前の・・・邪魔をするといけないから・・・」
すっと、腕を掴んでいた手が離れた。
顔を上げた時にはいつもの顔に戻っていて、またくるよと
小さく手をふると階下へと降りて行った。
アーベルが去ってからも暗くなった部屋の中でぼうっと眺めていた。
花火が終わって帰っていく人々がそのまま酒宴を始めているのか街の賑わいが一層高まったようだ。空には星が戻り、口々に祝う楽しそうな人々の声が夜空を彩りながらゆっくりと溶けていく
「寂しくなるな・・・」
こんな気持ちになるのは何故なのだろう。
王子の言う通りだ。このまま俺は王子の側にいれば良い。多分俺は引き立てられて出世もするだろう。
この気持ちはあくまでも友情だ。そう自分に言い聞かせようとした。でも、気持ちが膨れ上がってくる。これじゃあまるで・・・俺は自分の気持ちを振り払うように頭を振った。
窓を閉めて、カーテンをひくと暗くなった部屋に静寂が戻る。
「寝るか」
ひとりごち、静かに目を閉じて、眠りに落ちた。
こんな美丈夫が相手では政略結婚とはいえマリーテレーズ王女もすぐに恋に落ちるだろう。そう考えると胸の奥が何故かチリチリと痛んだ。
「・・・リュシアン」
「ん?」
「君に、伝えたいことが・・・」
アーベルが真剣な顔でつぶやいた瞬間、部屋の中に大きな鐘の音が鳴り響いた。時計塔の裏側の部屋なので、定期的に大きな時計台の時刻を告げる鐘が大音量で鳴り響く。脳を揺らすような大きな音に耳を塞いで俺は少し笑った。
「本当に相変わらずひでえ音だな。早く引っ越さないと耳がおかしくなっちまう」
「え・・・リュシアン、引っ越すのか?」
「ああ、お前と王女の結婚を見届けたらエズの方に引っ越そうかと思ってるんだよ」
エズというのはセーヌ川を挟んで北にある都市、住人も少ない小さな街だ。
不意にグッと腕を掴まれた
「どうして!?このまま僕のそばにいてくれても良いじゃないか」
「どうして・・・って」
思ったよりもずっと激しい剣幕に俺は驚いた
「結婚するお前の・・・邪魔をするといけないから・・・」
すっと、腕を掴んでいた手が離れた。
顔を上げた時にはいつもの顔に戻っていて、またくるよと
小さく手をふると階下へと降りて行った。
アーベルが去ってからも暗くなった部屋の中でぼうっと眺めていた。
花火が終わって帰っていく人々がそのまま酒宴を始めているのか街の賑わいが一層高まったようだ。空には星が戻り、口々に祝う楽しそうな人々の声が夜空を彩りながらゆっくりと溶けていく
「寂しくなるな・・・」
こんな気持ちになるのは何故なのだろう。
王子の言う通りだ。このまま俺は王子の側にいれば良い。多分俺は引き立てられて出世もするだろう。
この気持ちはあくまでも友情だ。そう自分に言い聞かせようとした。でも、気持ちが膨れ上がってくる。これじゃあまるで・・・俺は自分の気持ちを振り払うように頭を振った。
窓を閉めて、カーテンをひくと暗くなった部屋に静寂が戻る。
「寝るか」
ひとりごち、静かに目を閉じて、眠りに落ちた。
387
あなたにおすすめの小説
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます
水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。
しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。
このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。
そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。
俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。
順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。
家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。
だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる