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どうしてこうなった
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「……すぎる」
「……え?」
「うなじが、えろすぎる……!」
「…………は?」
顔を覗き込むと、マリーテレーズは何かに取り憑かれたように早口でまくし立てはじめた。
「だって見て、ほんと見て、お願いだから全人類この奇跡を共有して……このうなじ……ほっそりしてて、線が繊細すぎて、まるで神が一筆で描いた曲線みたいで、そこに落ちる髪の影がまた罪深くて……上目遣いなんてもう、ただ視線を上げただけのはずなのに、こっちの理性を根こそぎ持っていく爆撃級の破壊力で……あれ、これって誘ってる? ねえ、完全に誘ってるよね? 第二王子専用の誘惑装置を恐れ多くものぞいてしまうなんて、精神壊れてしまうと私の脳が全身に警報鳴らしてるんだけど!?
そしてこの腰……ありえないくらい細くて、でも弱さじゃなくて、しなやかさと引き締まった逞しさを抱えた硬さがあって……その上に呼吸に合わせて微かに動く肩甲骨、その滑らかな肌に第二王子が何度理性を持っていかれそうになったことか。考えるだけで全世界の汚さを否定できるくらい、人間って生きてていいんだって肯定できるってもんですよ……。黒目がちの瞳は深海みたいに底が見えなくて、吸い込まれたら二度と帰ってこられないの確定案件。まつ毛は扇みたいに長くて、瞬きするたびに頬に影が揺れるの……その影に触れたくて指が疼くの……触れた瞬間に温めていた関係が崩壊するのもわかってるのに、それでも触れたい、見たい、知りたい、全部壊してでもこの人の全てを手元に閉じ込めたい……って多分アーベルは思ってるわけでしょ?いや、思ってる。思ってること確定だから。それは大前提なんよ。
やばいやばいやばい……もう無理……尊い……尊いを超えて尊死……私の細胞が歓喜と苦悶で震えてる……現実がここまで残酷に美しいなんて罪……存在が神話……いや、神話を超えてる……推しが生きて、息をして、動いている、この世界が存在している、それだけで宇宙は完成している……尊い……とうとい」
うわ……キモ……。なんだこいつ…
「お嬢様、本音がダダ漏れです。お気を確かに」
護衛らしき者たちが、エラーを起こした機械のように「尊い」しか言えなくなった王女を、肘掛け椅子に半ば投げ込むようにして着席させた。
「……お嬢様が語彙力を無くされたようで、しばらく『尊い』しか話せなくなりましたので、代わりまして私が」
そう言って立ち上がったのは、長めの金髪を後ろで束ね、モノクルをかけたエルフの執事風の男だった。緑の瞳が知性を帯びて光る。
「エルフか?」
「ええ、説明の手間が省けます。私、ゼムク=ヴァインベルガーと申します。お嬢様に仕える者です」
「……とおとい……」
後ろで呟く王女を無視してゼムクが続けた。
「……え?」
「うなじが、えろすぎる……!」
「…………は?」
顔を覗き込むと、マリーテレーズは何かに取り憑かれたように早口でまくし立てはじめた。
「だって見て、ほんと見て、お願いだから全人類この奇跡を共有して……このうなじ……ほっそりしてて、線が繊細すぎて、まるで神が一筆で描いた曲線みたいで、そこに落ちる髪の影がまた罪深くて……上目遣いなんてもう、ただ視線を上げただけのはずなのに、こっちの理性を根こそぎ持っていく爆撃級の破壊力で……あれ、これって誘ってる? ねえ、完全に誘ってるよね? 第二王子専用の誘惑装置を恐れ多くものぞいてしまうなんて、精神壊れてしまうと私の脳が全身に警報鳴らしてるんだけど!?
そしてこの腰……ありえないくらい細くて、でも弱さじゃなくて、しなやかさと引き締まった逞しさを抱えた硬さがあって……その上に呼吸に合わせて微かに動く肩甲骨、その滑らかな肌に第二王子が何度理性を持っていかれそうになったことか。考えるだけで全世界の汚さを否定できるくらい、人間って生きてていいんだって肯定できるってもんですよ……。黒目がちの瞳は深海みたいに底が見えなくて、吸い込まれたら二度と帰ってこられないの確定案件。まつ毛は扇みたいに長くて、瞬きするたびに頬に影が揺れるの……その影に触れたくて指が疼くの……触れた瞬間に温めていた関係が崩壊するのもわかってるのに、それでも触れたい、見たい、知りたい、全部壊してでもこの人の全てを手元に閉じ込めたい……って多分アーベルは思ってるわけでしょ?いや、思ってる。思ってること確定だから。それは大前提なんよ。
やばいやばいやばい……もう無理……尊い……尊いを超えて尊死……私の細胞が歓喜と苦悶で震えてる……現実がここまで残酷に美しいなんて罪……存在が神話……いや、神話を超えてる……推しが生きて、息をして、動いている、この世界が存在している、それだけで宇宙は完成している……尊い……とうとい」
うわ……キモ……。なんだこいつ…
「お嬢様、本音がダダ漏れです。お気を確かに」
護衛らしき者たちが、エラーを起こした機械のように「尊い」しか言えなくなった王女を、肘掛け椅子に半ば投げ込むようにして着席させた。
「……お嬢様が語彙力を無くされたようで、しばらく『尊い』しか話せなくなりましたので、代わりまして私が」
そう言って立ち上がったのは、長めの金髪を後ろで束ね、モノクルをかけたエルフの執事風の男だった。緑の瞳が知性を帯びて光る。
「エルフか?」
「ええ、説明の手間が省けます。私、ゼムク=ヴァインベルガーと申します。お嬢様に仕える者です」
「……とおとい……」
後ろで呟く王女を無視してゼムクが続けた。
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