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逃避行
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アーベルが御者に向かって短く「加速を!」と命じる。馬車が速度を上げ、森を突っ切る。
だが、ツインテールの全身鎧――リーゼロッテはなおも迫ってくる。 岩の壁を召喚しても拳で粉砕され、大地の棘を生やしても踏み砕かれる。
「……化け物じみてるね」
「同感だ」
ようやく馬車が森を抜け、追跡者の姿が木々の向こうに遠ざかる。
「撒いたか…?」
少し道は逸れてしまったが、なんとか追跡は交わしたようだった。
「……助かったけど、襲撃がこんなに早く来るとは」 「ここを突き止められるのも時間の問題だろう」
「なら……籠城だな。館中に発動陣を張って有利を取る」 「精霊魔法も黒魔法も時間はかかるが、魔力を流しておけばすぐ動かせる」
二人して頷き合い、そのまま目的地へ引き返した。
馬車が狩猟用の館の前に停まった。
だが――。
「待って」 玄関に足をかけた瞬間、アーベルが俺の腕をぐっと引く。 青い瞳が静かに警告を告げていた。
「……館の中に、誰かいる」
城門を出た見晴らし場に昨日馬車を追ってきた全身鎧——聖女リーゼロッテが、誰かと激しく斬り結んでいる姿があった。
「……あれは……!」
相手の男に見覚えがある。
——俺の家を襲った、黒髪の長身。枢機卿側の刺客だ。
金色のツインテールを翻しながら、聖女は巨大な大剣で果敢に斬りかかる。
男は鋭く細身の剣でそれを捌き、翻すような動きで応戦していた。
「何が起こってるんだ……? あいつら、味方じゃなかったのか?」
アーベルの声に、俺も言葉が出なかった。
(聖女リーゼロッテが、枢機卿の刺客と戦ってる……?
どういうことだ?)
聖女の動きは力強く、恐ろしく正確だが、対する男の身のこなしはそれ以上だった。
彼女の大剣はその重さゆえに一撃の威力こそ大きいが、どうしてもスキが生まれる。
連撃を許し、徐々に押されているのがわかる。
「……とりあえず助けよう!」
アーベルが走り出した。その背中を追い、俺も階段を駆け下りる。
庭へ飛び出すと、まさにリーゼロッテの兜が男の剣によって砕かれ、地に落ちたところだった。
男が止めの一撃を振りかざした瞬間——
「防御結界!」
アーベルの声と共に、聖女と男の間に光のシールドが張られる。
バシィッと火花が散り、男の攻撃は止められた。
その一瞬の隙を逃さず、俺が魔法を詠唱する。
「爆裂〈エクスプロード〉!」
放たれた炎が男を包み、爆風と共に吹き飛ばす。
男は木に叩きつけられ、そのまま地面に崩れ落ちた。
「聖女さん、大丈夫ですか?」
アーベルが駆け寄り、傷を負ったリーゼロッテを支える。
彼女は顔を歪めながらも立ち上がり、力なくうなずいた。
「リュシアン、手伝って」
「ああ……!」
二人で彼女の腕を抱え、館の中へと運び込む。
後ろを振り返ると、黒髪の男が体を引きずるように立ち上がり、こちらを睨みつけたあと、森の中へと素早く姿を消していった。
「追ってこないな……」
「今は撤退を選んだんだろう」
俺たちは荒い息を吐きながら、ようやく一息ついた。
だが、ツインテールの全身鎧――リーゼロッテはなおも迫ってくる。 岩の壁を召喚しても拳で粉砕され、大地の棘を生やしても踏み砕かれる。
「……化け物じみてるね」
「同感だ」
ようやく馬車が森を抜け、追跡者の姿が木々の向こうに遠ざかる。
「撒いたか…?」
少し道は逸れてしまったが、なんとか追跡は交わしたようだった。
「……助かったけど、襲撃がこんなに早く来るとは」 「ここを突き止められるのも時間の問題だろう」
「なら……籠城だな。館中に発動陣を張って有利を取る」 「精霊魔法も黒魔法も時間はかかるが、魔力を流しておけばすぐ動かせる」
二人して頷き合い、そのまま目的地へ引き返した。
馬車が狩猟用の館の前に停まった。
だが――。
「待って」 玄関に足をかけた瞬間、アーベルが俺の腕をぐっと引く。 青い瞳が静かに警告を告げていた。
「……館の中に、誰かいる」
城門を出た見晴らし場に昨日馬車を追ってきた全身鎧——聖女リーゼロッテが、誰かと激しく斬り結んでいる姿があった。
「……あれは……!」
相手の男に見覚えがある。
——俺の家を襲った、黒髪の長身。枢機卿側の刺客だ。
金色のツインテールを翻しながら、聖女は巨大な大剣で果敢に斬りかかる。
男は鋭く細身の剣でそれを捌き、翻すような動きで応戦していた。
「何が起こってるんだ……? あいつら、味方じゃなかったのか?」
アーベルの声に、俺も言葉が出なかった。
(聖女リーゼロッテが、枢機卿の刺客と戦ってる……?
どういうことだ?)
聖女の動きは力強く、恐ろしく正確だが、対する男の身のこなしはそれ以上だった。
彼女の大剣はその重さゆえに一撃の威力こそ大きいが、どうしてもスキが生まれる。
連撃を許し、徐々に押されているのがわかる。
「……とりあえず助けよう!」
アーベルが走り出した。その背中を追い、俺も階段を駆け下りる。
庭へ飛び出すと、まさにリーゼロッテの兜が男の剣によって砕かれ、地に落ちたところだった。
男が止めの一撃を振りかざした瞬間——
「防御結界!」
アーベルの声と共に、聖女と男の間に光のシールドが張られる。
バシィッと火花が散り、男の攻撃は止められた。
その一瞬の隙を逃さず、俺が魔法を詠唱する。
「爆裂〈エクスプロード〉!」
放たれた炎が男を包み、爆風と共に吹き飛ばす。
男は木に叩きつけられ、そのまま地面に崩れ落ちた。
「聖女さん、大丈夫ですか?」
アーベルが駆け寄り、傷を負ったリーゼロッテを支える。
彼女は顔を歪めながらも立ち上がり、力なくうなずいた。
「リュシアン、手伝って」
「ああ……!」
二人で彼女の腕を抱え、館の中へと運び込む。
後ろを振り返ると、黒髪の男が体を引きずるように立ち上がり、こちらを睨みつけたあと、森の中へと素早く姿を消していった。
「追ってこないな……」
「今は撤退を選んだんだろう」
俺たちは荒い息を吐きながら、ようやく一息ついた。
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