【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵

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逃避行

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ソファに身を預けていたリーゼロッテは、包帯を巻かれた肩をさすりながら、少し遠くを見るように言った。

「……あの男、ロジェは枢機卿に恋をしていますのよ。絶対に誰にも譲らないって、昔からずっとそうだったんですの」

「それで、聖女であるお前が“近づいている”と勘違いして、背後から――?」

リュシアンが眉をひそめながら言うと、リーゼロッテは皮肉っぽく笑った。

「原因はよくわからないですけれど、まったく困ったものですわ。私はむしろ、枢機卿様と“王子”をくっつけたい派なのに……」

「……」

それが原因じゃねえかな、とは思ったが、言わないことにした。

アーベルが複雑そうな表情で口を引き結ぶ。

「……助けていただいてありがとうございますですわ。」

そして、ぽつりと、まるで自分でも信じられないといった口調で続けた。

「……それにしても、あなた、本当に“アーベル”なのですわよね?」

「え?」

突然話を振られたアーベルが驚いたように目を瞬かせる。

リーゼロッテは少し言いよどんでから、意を決したように言葉を続けた。

「私が知ってる“アーベル王子”は、もっと……ひねくれていた。孤独で、自分なんて誰にも選ばれないって思い込んでて、
愛され方を知らないから、人の好意を全部突っぱねるようなキャラでしたのに…」

こいつーー好き勝手言いやがって、俺が何か言いかける前にリーゼロッテは続ける。

「なのに、目の前の“貴方”は――あまりにも優しすぎる。素直すぎる。まっすぐすぎる」

「……君の理想通りじゃないってこと?」

アーベルは少し困ったように笑った。

「……ええ。完全に“解釈違い”です」

「……かいしゃく……ちがい?」

アーベルが頭の上にクエスチョンマークを浮かべている。まあ、わかりあうべき理由もないのでそのままにしておいたが。

「でも――悔しいけど、今の君を見てると、その性格も悪くないかなと思えてしまいますわ」

「……それは、ありがとうございます。なのかな?」

アーベルは困惑気味に苦笑する。
リーゼロッテは深いため息をついた。

「とにかく。あなたたち二人は、私の“バラ庭”観を根本から揺るがしてくる。
なんなんですのこの世界は……もう少しゲーム通りに動いてくれれば、攻略しやすかったですのに」

「……悪いな。勝手に生きてて」

リュシアンが肩をすくめると、リーゼロッテも軽く笑った。

「まあ、それも悪くないですわ。『推し』が幸福になることに、私も異論はございませんし」

そう言って、少しだけ晴れやかな表情を見せた。

「というわけで、私は猊下には引き続き絡んでいきますが、アーベル、貴方には絡みませんわ。ご安心遊ばせ」
「おう、やりすぎんなよ」
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