【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵

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逃避行

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「ったく……好き勝手言いやがって」
「相変わらず、自由な人だなあ」

徒歩で帰って行くリーゼロッテを館の中から見送りながら俺とアーベルは館の中から
沈みゆく夕陽を眺めていた。
沈んでゆく陽の光が館を取り囲んでいる湖面を紫に染めて、美しい夕暮れの景色だった。

館の中は、物音一つしないほど静まり返っていた。
冷たい夜風が頬を撫でて、身震いする。少し標高も高いせいか宮殿にいた時よりも少し気温が低いような気がする。

「さて、寒くなる前にやることやんねえとな」

腕をまくり俺は各所に魔法陣を設置していった。
玄関、窓、扉、階段下――少しでも奇襲に備えるために、時間を惜しまず仕込んでいく。

そんな中――

「ねえ、リュシアン」

「ん?」
「これを、君に」
薬指にすっと指輪をはめた。

「お前……これ…」
シンプルのデザインだが趣味のいい、魔力を含んだ宝石がいくつもハマった指輪だった。

「今手元にあるものでとりあえず」
「いや、こんな価値のあるもの……」
「ははは、まあ、価値はあるけどね。売り払えば田舎の館ぐらいは買えるかな」
なんだか、申し訳ない気がした。

ふり返ると、アーベルが少し戸惑ったような顔でこちらを見ていた。

「その……ひとつ、お願いがあるんだけど」

「……なんだよ?」

差し出された手が、そっと俺の手を包み込む。
いつもより少し熱を帯びていた。

「……一緒に、寝てくれないかな」

「……え?」

あまりに突然すぎて、俺の思考が一瞬止まった。
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