【新版】転生悪役モブは溺愛されんでいいので死にたくない!

煮卵

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二人で過ごす夜

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あまりに突然すぎて、思考が一瞬止まった。  
頭の中に、嫌でも「そういう意味」の光景が浮かんでしまう。  
(ま、待て……まさか、俺は今……)

見返りに身体を要求されているのか!?

というか、金銭の見返りにそういう関係を要求するなんて……アーベルをそんなふうに育てた覚えは…
いや、そもそも育ててないが。

俺が酸欠の金魚のように口をぱくぱくさせていると、

「え、いや、お、お前……その、それって……」

頬が熱い。おそらく真っ赤になっている俺を見て、アーベルもたじろいだようだった。
「い、いや、違うんだよ! その……結界の魔法は、守りたい相手と、身体のどこかが触れてないと発動しないんだ……。だから……」

そう言って、彼は俺の手をきゅっと握った。
振り払うわけにもいかなくて、言葉を失う。
「……お願い、できるかな?」
「……」

俺が一度そっと手を抜く。
アーベルが一瞬、不安げに目を伏せた。

一応仮初とはいえ「恋人」なんだから、手も繋げないのは不自然だろう。
逃げた手を再び伸ばし、指を絡ませるように繋ぎ直す。
いわゆる“恋人繋ぎ”。ためらいは、もうなかった。

アーベルの目が丸くなり、そしてすぐにふっと表情が和らぐ。

「ありがとう」

その微笑みを見て、今度は俺の方が耐えられなくなった。

「……トラップの魔法陣、もう少し仕掛けないとな。外、寒そうだなー」

照れ隠しにそう言って、俺はランタンを手にバルコニーへ向かう。
外は涼しい風が吹き、夜空には数えきれないほどの星が広がっていた。

アーベルももちろんついてくる。

「バルコニーにも侵入者があるかもしれないからな」
四隅に黒魔法のトラップ陣を描きながら説明する。

「それって、どんな仕掛け?」

「誰かが通れば、音が鳴って、軽い電流が走る。注意くらいにはなるだろ」

「黒魔法って、こうやって条件付きで発動できるから便利だよね」

「神聖魔法じゃできねえのか?」

「発動すれば持続する魔法はあるけど、即時の罠には向かないかな」

他愛もない会話をしながら、俺たちはバルコニーの柵のそばに立ち並ぶ。
城の周りにはそばの湖から水を引いた大きな堀が巡らせてあり、
堀の広大さから、水の中に城が浮かび上がっているようだった。

いつの間にか、空には大きな黄金色の満月が昇っていた。
空の月と、湖面に映る月。静かな月光が二人を照らす。
「暗くなってきたな」
「書斎なら、ランプがたくさんあるから、取りに行こうか?」
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