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二人で過ごす夜
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本でぐるりと囲まれたその部屋は書斎というよりは本でできたホールと言った趣だった
「すげえ…狩猟小屋なのにこんなもんまであるのか」
「狩は夜できないからね」
館の奥にあるライブラリは、深い森に迷い込んだように静まり返っていた。
ランプの灯りが柔らかに棚を照らし、紙とインクの匂いが胸の奥に沁みる。
「覚えている?」
アーベルが差し出したのは、一冊の本。
俺が彼と初めて出会ったとき、抱えていたあの本だ。
「懐かしいな。それ、お前も持ってたんだ」
「君と、同じものが読みたかった。」
その言葉とともに、背後から腕が伸びる。
俺は抵抗もできずに引き寄せられ、膝の上に抱き込まれた。
広い胸に背を預けると、熱と鼓動がじかに伝わってくる。
あまりに穏やかで、心地よくて、ただ目を閉じたくなった。
「聖騎士団に入った時に、持って行くと汚してしまうかもしれないから
ここに収めたんだ」
(強くなったよなあ)
リーゼロッテの言葉が思い出される。
「ゲーム通りの人物じゃない」――その通りだ。
ゲーム内ではなかったルートを辿って、ゲーム内ではなかった会話を交わして、
彼は全く違う人物に成長していた。
依存に沈み、弱さを晒していた彼ではなく、自分で立ち、誰かを抱きしめられる強さを持った人間がここにいる。
彼は……俺の嘘を知っても、大きな器で許してくれるかもしれない。
(まあ、もちろん豹変して俺が処刑一直線かもしれんが)
ーーだが
ゲーム内の彼よりも今の彼の方が、誠実に愛してくれている彼の方が
騙されたと知ったらきっと深く傷つくだろう。
胸の奥に、鋭い痛みが走る。考えるだけで息が詰まった。
(どうしようもねえな。俺。)
あの場で自分の気持ちを取り繕わずに全部言えればーー
喉の奥までこみ上げたものを押し戻し、ただ胸に額を押しつける。
この温もりを壊さないために、沈黙こそが唯一の答えだった。
ランプの灯が揺れ、壁に重なる影は、互いに寄り添いながら長く伸びていった。
「すげえ…狩猟小屋なのにこんなもんまであるのか」
「狩は夜できないからね」
館の奥にあるライブラリは、深い森に迷い込んだように静まり返っていた。
ランプの灯りが柔らかに棚を照らし、紙とインクの匂いが胸の奥に沁みる。
「覚えている?」
アーベルが差し出したのは、一冊の本。
俺が彼と初めて出会ったとき、抱えていたあの本だ。
「懐かしいな。それ、お前も持ってたんだ」
「君と、同じものが読みたかった。」
その言葉とともに、背後から腕が伸びる。
俺は抵抗もできずに引き寄せられ、膝の上に抱き込まれた。
広い胸に背を預けると、熱と鼓動がじかに伝わってくる。
あまりに穏やかで、心地よくて、ただ目を閉じたくなった。
「聖騎士団に入った時に、持って行くと汚してしまうかもしれないから
ここに収めたんだ」
(強くなったよなあ)
リーゼロッテの言葉が思い出される。
「ゲーム通りの人物じゃない」――その通りだ。
ゲーム内ではなかったルートを辿って、ゲーム内ではなかった会話を交わして、
彼は全く違う人物に成長していた。
依存に沈み、弱さを晒していた彼ではなく、自分で立ち、誰かを抱きしめられる強さを持った人間がここにいる。
彼は……俺の嘘を知っても、大きな器で許してくれるかもしれない。
(まあ、もちろん豹変して俺が処刑一直線かもしれんが)
ーーだが
ゲーム内の彼よりも今の彼の方が、誠実に愛してくれている彼の方が
騙されたと知ったらきっと深く傷つくだろう。
胸の奥に、鋭い痛みが走る。考えるだけで息が詰まった。
(どうしようもねえな。俺。)
あの場で自分の気持ちを取り繕わずに全部言えればーー
喉の奥までこみ上げたものを押し戻し、ただ胸に額を押しつける。
この温もりを壊さないために、沈黙こそが唯一の答えだった。
ランプの灯が揺れ、壁に重なる影は、互いに寄り添いながら長く伸びていった。
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