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二人で過ごす夜
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朝、まだ日も上り切らないうちに目が覚めた。
眠りが浅かったのかもしれない。
窓から差し込む青白い光が室内を淡く染めている。
寝返りを打つと、アーベルが静かに眠っていた。
長いまつげの影、安らかな寝顔。
――そして、繋いでいたはずの手はもう離れていた。
(……自由だ)
身体は。
けれど心は、全然。
指輪のことを思い出す。
「地方の屋敷一つ分くらいする」――アーベルは笑い話のように軽く言った。だが、おそらくあれには意図が隠されている。20年来の付き合いだ俺にはわかる。
あの指輪を売って、このままここから逃げれば地方の屋敷を手に入れて逃亡できる。
だが、アーベルがいればいずれ居場所がバレてしまい、追っ手が来るだろう。
だがーー俺一人なら?
勤め先の王宮は最初の一週間は俺を探すだろうけれど、そんなに深く追求されることはあるまい。リュシアンの両親は息子を見つけるかもしれないが、事情を話せば手紙のやり取りだけをして匿ってすらくれるかもしれない。
つまり、俺一人ここから逃げることは簡単にできるのだ。
あの宝を託されている限り、逃げても「意図を理解して出ていった」と彼はそう解釈してくれるかもしれない。
むしろその方が……第二王位継承者である彼の立場を考えれば、良いのではないか。
(……本当に? それで全部丸く収まるのか?)
喉がひどく渇いた。
それでも俺は、アーベルの瞼にそっと唇を落とす。
(でも今は…離れたくないな)
冷たい夜の風が寝室を吹き抜ける。狩猟用のこの館は立派ではあるが人が訪れるのは夏がメインなので隙間風を防ぐタペストリーを壁に敷き詰めていない。おそらく隙間風だろう。すぐ隣にあるアーベルのぬくみに、本能的に擦り寄った。優しい甘さに抗えない。
逃げる未来を頭に描きながら、結局は彼の横に居座ったまま、ぬくもりに紛れ込んで目を閉じた。
眠りが浅かったのかもしれない。
窓から差し込む青白い光が室内を淡く染めている。
寝返りを打つと、アーベルが静かに眠っていた。
長いまつげの影、安らかな寝顔。
――そして、繋いでいたはずの手はもう離れていた。
(……自由だ)
身体は。
けれど心は、全然。
指輪のことを思い出す。
「地方の屋敷一つ分くらいする」――アーベルは笑い話のように軽く言った。だが、おそらくあれには意図が隠されている。20年来の付き合いだ俺にはわかる。
あの指輪を売って、このままここから逃げれば地方の屋敷を手に入れて逃亡できる。
だが、アーベルがいればいずれ居場所がバレてしまい、追っ手が来るだろう。
だがーー俺一人なら?
勤め先の王宮は最初の一週間は俺を探すだろうけれど、そんなに深く追求されることはあるまい。リュシアンの両親は息子を見つけるかもしれないが、事情を話せば手紙のやり取りだけをして匿ってすらくれるかもしれない。
つまり、俺一人ここから逃げることは簡単にできるのだ。
あの宝を託されている限り、逃げても「意図を理解して出ていった」と彼はそう解釈してくれるかもしれない。
むしろその方が……第二王位継承者である彼の立場を考えれば、良いのではないか。
(……本当に? それで全部丸く収まるのか?)
喉がひどく渇いた。
それでも俺は、アーベルの瞼にそっと唇を落とす。
(でも今は…離れたくないな)
冷たい夜の風が寝室を吹き抜ける。狩猟用のこの館は立派ではあるが人が訪れるのは夏がメインなので隙間風を防ぐタペストリーを壁に敷き詰めていない。おそらく隙間風だろう。すぐ隣にあるアーベルのぬくみに、本能的に擦り寄った。優しい甘さに抗えない。
逃げる未来を頭に描きながら、結局は彼の横に居座ったまま、ぬくもりに紛れ込んで目を閉じた。
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