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魔王様の事情
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訪れた辺境伯はあまり女の扱いを知らなさそうだった。あるいは、知っていたとしても男のプライドでそれを出さないタイプなのだろう。
「領地内で大きな鹿をマシューと仕留めてな。マシューも言っていたがあれはきっと森の主に違いない…」
永遠の自分(とマシュー)の語りに……マリーテレーズは花のような笑顔を浮かべて頷く。
「マシューさんと仲良しですのねー。一緒にいらっしゃればよかったのにー」
「王都までは来ていたんだ。宮殿に誘ったんだがな、妙に不機嫌になって「行かない」の一点張りだ」
「あらあ…残念……」
心の底から残念そうにマリーテレーズが呟く、悲しげな様子に少し慌てたのか、
「グロリエッテに行かないか」
と誘ってきた。明らかな「人目のないところに行こう」という誘い、断ろうとしたマリーテレーズだったが――不意に閃いた。
「いいですわね。この時間だときっと夜風も涼しいですわ」
微笑んだその瞳には、ほんのりと愉快な光が宿っていた。
(――ちょうどいい。ここで“見せ場”を作って差し上げましょう)
月明かりに照らされたグロリエッテ。そこから見える庭園は昼間とはまた違った趣があった。
噴水の水音が静かに響く中、辺境伯は大きな背を丸め、しんみりとつぶやいた。
「さすが宮廷……豪華さが違うな……」
「…………」
マリーテレーズは、思わず扇で口元を隠した。
(マシューを連れてくればよかったと思っていらっしゃるのね)
辺境伯は夜空を仰ぎ、なぜか寂しげな表情(※マリーテレーズ視点)をしている。
「……グロリエッテの装飾も素晴らしい」
(…………かわいそうに…早くマシュー様に合わせてあげないと)
マリーテレーズがスウっと息を吸い込む。
すっと背後に回り込み、肩にそっと手を置く。
辺境伯が振り向く暇もなく、次の瞬間、魔法が発動する
「花の影の眠り」
辺境伯はその場に崩れ落ち、豪快ないびきをかき始めた。
マリーテレーズは埃を払うように手をはたき、微笑んだ。
「ふふ……完璧ですわ」
辺境伯が眠り込んだ瞬間、マリーテレーズはまるで予定調和のように振り返った。
そこには、影のように控えていたゼムクが立っている。
「ゼムク。すぐにマシュー様を呼んできてちょうだい」
「……承知いたしました」
「急いでね。恋人(※言っていない)と早く合わせて差し上げたいの」
ゼムクは淡々と一礼し、小さな袋を差し出した。
「……その前に、念のため。もしもの時のために、これをお持ちください」
「まあ……何かしら?」
小さなベルベット生地の赤い袋だった。ちょうど手にヒラに乗るくらいのサイズをしている。
「お守り代わりですよ。その男が目覚めるかもしれませんし…ただ、かなり強力な魔力を秘めたものですので軽い気持ちでお使いにならぬよう…」
「ふふ……大丈夫よ」
じゅう
「領地内で大きな鹿をマシューと仕留めてな。マシューも言っていたがあれはきっと森の主に違いない…」
永遠の自分(とマシュー)の語りに……マリーテレーズは花のような笑顔を浮かべて頷く。
「マシューさんと仲良しですのねー。一緒にいらっしゃればよかったのにー」
「王都までは来ていたんだ。宮殿に誘ったんだがな、妙に不機嫌になって「行かない」の一点張りだ」
「あらあ…残念……」
心の底から残念そうにマリーテレーズが呟く、悲しげな様子に少し慌てたのか、
「グロリエッテに行かないか」
と誘ってきた。明らかな「人目のないところに行こう」という誘い、断ろうとしたマリーテレーズだったが――不意に閃いた。
「いいですわね。この時間だときっと夜風も涼しいですわ」
微笑んだその瞳には、ほんのりと愉快な光が宿っていた。
(――ちょうどいい。ここで“見せ場”を作って差し上げましょう)
月明かりに照らされたグロリエッテ。そこから見える庭園は昼間とはまた違った趣があった。
噴水の水音が静かに響く中、辺境伯は大きな背を丸め、しんみりとつぶやいた。
「さすが宮廷……豪華さが違うな……」
「…………」
マリーテレーズは、思わず扇で口元を隠した。
(マシューを連れてくればよかったと思っていらっしゃるのね)
辺境伯は夜空を仰ぎ、なぜか寂しげな表情(※マリーテレーズ視点)をしている。
「……グロリエッテの装飾も素晴らしい」
(…………かわいそうに…早くマシュー様に合わせてあげないと)
マリーテレーズがスウっと息を吸い込む。
すっと背後に回り込み、肩にそっと手を置く。
辺境伯が振り向く暇もなく、次の瞬間、魔法が発動する
「花の影の眠り」
辺境伯はその場に崩れ落ち、豪快ないびきをかき始めた。
マリーテレーズは埃を払うように手をはたき、微笑んだ。
「ふふ……完璧ですわ」
辺境伯が眠り込んだ瞬間、マリーテレーズはまるで予定調和のように振り返った。
そこには、影のように控えていたゼムクが立っている。
「ゼムク。すぐにマシュー様を呼んできてちょうだい」
「……承知いたしました」
「急いでね。恋人(※言っていない)と早く合わせて差し上げたいの」
ゼムクは淡々と一礼し、小さな袋を差し出した。
「……その前に、念のため。もしもの時のために、これをお持ちください」
「まあ……何かしら?」
小さなベルベット生地の赤い袋だった。ちょうど手にヒラに乗るくらいのサイズをしている。
「お守り代わりですよ。その男が目覚めるかもしれませんし…ただ、かなり強力な魔力を秘めたものですので軽い気持ちでお使いにならぬよう…」
「ふふ……大丈夫よ」
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