62 / 86
ミレーヌたちの処遇
しおりを挟む
一月後、私はレニエ様とシャリエ伯爵家を訪れていた。
あれからミレーヌがロイという男性と王都の下町で暮らしていること、ロイは仕事を辞めて今は別の店で働いていること、ミレーヌは家から出ずにずっと隠れ住んでいたことがわかった。家を出たきっかけは月の物が遅れて妊娠したと思ったからだという。妊娠したことが父に知れたらロイと引き離されてしまうと思ったミレーヌは夜中に黙って姿を隠したらしい。
後で妊娠はしていなかったとわかったけれどミレーヌは家に戻らなかった。金目の物を持って家を出たから生活に困ることはなく、ロイは念のために王都でも外れの方に引っ越し、職場もより近くて給金のいい店に変わり、静かに暮らしていたらしい。
今日はそのミレーヌとロイのことで話し合いだ。応接室に案内されると既にミレーヌとロイは来ていた。二人は二人掛けのソファに、その正面の一人掛けのソファには父が座っていた。父はすっかり老け込み、今までの覇気の欠片も見えなかった。私は奥の上座に当たる二人掛けのソファにレニエ様と座った。程なくしてエドモンがやって来たが、一人ではなかった。
「ジョセフ様? どうしてここに……」
思いがけない同行者に驚いたけれど、彼を呼んだのはレニエ様で契約の立ち合いとして呼ばれたのだと言った。確かに彼は戸籍などを扱う部署にいるからその方面に精通しているだろう。一時は婚約関係にあった彼に会うのは気まずく感じた。
「今日はミレーヌのことで集まって貰った。時間がないから単刀直入に言おう。ミレーヌ、お前はシャリエ家に戻れ」
「い、嫌よ!」
エドモンがそう言うとミレーヌは顔を歪めて拒否した。
「拒否出来ると思うな。このままだとその男は誘拐犯として投獄だ。それでもいいのか?」
「いいわけないでしょう! そんなことならどこか遠くに行くわ」
「行っても無駄だ。身分証もない者がどうやって働く? 身分証がないのは犯罪者や訳ありの奴ばかりだ。真っ当な生活は出来なくなるぞ」
「……っ」
エドモンの言う通りで、貴族の令嬢が駆け落ちしても行く末は悲惨でしかない。見つかれば男は投獄か令嬢の実家の手で秘密裏に消される可能性もある。
「その男と心中するなら止めない。だけど男はやっぱり犯罪者扱いになる。その男を想うのなら別れるのが一番なんだ」
「そんな……」
そんなにもその男性が好きなのだろうか。ミレーヌはロイの腕にしがみ付いて離れる気がないことを示した。一方で彼の身を案じる思いも同じくらいあるらしく、思いつめた表情をしていた。あんなに令息からチヤホヤされていたのに、選んだのが平民の、それも目立って美形でもない男性だったとは意外だ。
「そ、それしか方法はないの? ロイと別れるなんて……そんなの……」
「ミレーヌ様……」
うろたえ震えるミレーヌにロイは落ち着かせるようにそっと手を握った。それだけの仕草からも彼の想いが伝わってきた。ミレーヌのことをとても大切にしているのだろう。
「ミレーヌ、今は辛いかもしれないがこれはお互いのためだ。今はいくら想い合っていても、ずっと隠れて暮らせば苦しくなる。子どもが生まれたらどうする? 日陰者として育てるのか? 今のままでは身分証が作れないから仕事にも就けないぞ」
「子ども、も……」
エドモンの言葉は冷たいようだけど現実だった。今はロイが働いてミレーヌを養えば何とかなるだろうけれど、子供が出来れば話は変わる。
「そんな……そんなのって……どうして? やっと私をわかってくれる人が出来たのに。やっと幸せになれると思ったのに……」
とうとうミレーヌが泣き出してしまった。こんなところは以前と変わっていない。泣いても何も変わらないのに。そう思うけれど、母の呪縛で人生を歪められたのだと思うと切り捨てられなかった。
「……一つ、私から提案してもいいかな?」
「レニエ様?」
沈黙の中、口を開いたのはレニエ様だった。この話に入って来るとは思わなかった。一同の視線が集まる中、レニエ様がソファに預けていた背を起こした。
「ミレーヌ嬢、あなたには伯爵家に戻ってもらい、ジョセフ君と結婚して貰う」
「え?」
「ミ、ミオット侯爵?」
突然の提案に名を呼ばれたジョセフ様も目を見開いていた。それは他の人も同じで、その真意を測りかねているように見えた。私にもレニエ様の真意がわからない。
「お、お待ちください。私はロイと……」
「そうです、ミオット侯爵。それはいくら何でも……」
ミレーヌは狼狽え、エドモンもさすがに止めた。
「まぁ、話を聞きたまえ。ミレーヌ嬢はこの家の後継者で、エドモン君が家を出た今、それを変えるのは簡単ではあない。こうも短期間で二度目ともなれば国が認める可能性は殆どない。その一度目もドルレアク公爵家の力添えがあったからだからね」
確かに後継者の変更は厳しく、代わるにしても書類の申請などで時間がかかると聞く。
「結婚して貰うが、白い結婚になる」
「え?」
「レニエ様、幾らなんでもそれは……」
「そうです。ジョセフ殿に失礼すぎる話です」
婿入り、しかもこんな不良物件なのに白い結婚を条件にするなんてジョセフ様に失礼極まりない。
「話は最後まで聞いてくれ。これは政略結婚なんだよ」
「それにしてもそれではジョセフ殿があまりにも……」
エドモンも難色を示した。自分の代わりにシャリエ家を継いでもらうのに、最初から白い結婚だなんて……そりゃあ、相手はあのミレーヌだけど……
「ミオット侯爵、ここからは私がお話しても?」
「ああ、そうだね。ジョセフ君が話した方が早いだろう」
ジョセフ様の申し出にレニエ様が頷いた。一体どういうことなのか。ミレーヌだけでなく父も不安そうな表情を浮かべた。
「ここだけの話にして頂きたいのですが、よろしいですか?」
ジョセフ様が最初にそう尋ねた。随分言い難いことになるのだろう。勿論ジョセフ様の胃に反することをするつもりはないので頷いた。ミレーヌや父、そしてロイも神妙な面持ちで頷くのが見えた。
「実は入り婿先を探しておりましてね。私としては名前だけでいいのですが、中々そうはいかなくてこまっていたのですよ」
「それはどうしてと尋ねても?」
「う~ん、絶対に口外しないで下さいよ」
「勿論です」
「実は面倒な女性に婿入りを迫られていましてね。それを避けるために早急に婿入りをしてしまいたいのですよ」
あれからミレーヌがロイという男性と王都の下町で暮らしていること、ロイは仕事を辞めて今は別の店で働いていること、ミレーヌは家から出ずにずっと隠れ住んでいたことがわかった。家を出たきっかけは月の物が遅れて妊娠したと思ったからだという。妊娠したことが父に知れたらロイと引き離されてしまうと思ったミレーヌは夜中に黙って姿を隠したらしい。
後で妊娠はしていなかったとわかったけれどミレーヌは家に戻らなかった。金目の物を持って家を出たから生活に困ることはなく、ロイは念のために王都でも外れの方に引っ越し、職場もより近くて給金のいい店に変わり、静かに暮らしていたらしい。
今日はそのミレーヌとロイのことで話し合いだ。応接室に案内されると既にミレーヌとロイは来ていた。二人は二人掛けのソファに、その正面の一人掛けのソファには父が座っていた。父はすっかり老け込み、今までの覇気の欠片も見えなかった。私は奥の上座に当たる二人掛けのソファにレニエ様と座った。程なくしてエドモンがやって来たが、一人ではなかった。
「ジョセフ様? どうしてここに……」
思いがけない同行者に驚いたけれど、彼を呼んだのはレニエ様で契約の立ち合いとして呼ばれたのだと言った。確かに彼は戸籍などを扱う部署にいるからその方面に精通しているだろう。一時は婚約関係にあった彼に会うのは気まずく感じた。
「今日はミレーヌのことで集まって貰った。時間がないから単刀直入に言おう。ミレーヌ、お前はシャリエ家に戻れ」
「い、嫌よ!」
エドモンがそう言うとミレーヌは顔を歪めて拒否した。
「拒否出来ると思うな。このままだとその男は誘拐犯として投獄だ。それでもいいのか?」
「いいわけないでしょう! そんなことならどこか遠くに行くわ」
「行っても無駄だ。身分証もない者がどうやって働く? 身分証がないのは犯罪者や訳ありの奴ばかりだ。真っ当な生活は出来なくなるぞ」
「……っ」
エドモンの言う通りで、貴族の令嬢が駆け落ちしても行く末は悲惨でしかない。見つかれば男は投獄か令嬢の実家の手で秘密裏に消される可能性もある。
「その男と心中するなら止めない。だけど男はやっぱり犯罪者扱いになる。その男を想うのなら別れるのが一番なんだ」
「そんな……」
そんなにもその男性が好きなのだろうか。ミレーヌはロイの腕にしがみ付いて離れる気がないことを示した。一方で彼の身を案じる思いも同じくらいあるらしく、思いつめた表情をしていた。あんなに令息からチヤホヤされていたのに、選んだのが平民の、それも目立って美形でもない男性だったとは意外だ。
「そ、それしか方法はないの? ロイと別れるなんて……そんなの……」
「ミレーヌ様……」
うろたえ震えるミレーヌにロイは落ち着かせるようにそっと手を握った。それだけの仕草からも彼の想いが伝わってきた。ミレーヌのことをとても大切にしているのだろう。
「ミレーヌ、今は辛いかもしれないがこれはお互いのためだ。今はいくら想い合っていても、ずっと隠れて暮らせば苦しくなる。子どもが生まれたらどうする? 日陰者として育てるのか? 今のままでは身分証が作れないから仕事にも就けないぞ」
「子ども、も……」
エドモンの言葉は冷たいようだけど現実だった。今はロイが働いてミレーヌを養えば何とかなるだろうけれど、子供が出来れば話は変わる。
「そんな……そんなのって……どうして? やっと私をわかってくれる人が出来たのに。やっと幸せになれると思ったのに……」
とうとうミレーヌが泣き出してしまった。こんなところは以前と変わっていない。泣いても何も変わらないのに。そう思うけれど、母の呪縛で人生を歪められたのだと思うと切り捨てられなかった。
「……一つ、私から提案してもいいかな?」
「レニエ様?」
沈黙の中、口を開いたのはレニエ様だった。この話に入って来るとは思わなかった。一同の視線が集まる中、レニエ様がソファに預けていた背を起こした。
「ミレーヌ嬢、あなたには伯爵家に戻ってもらい、ジョセフ君と結婚して貰う」
「え?」
「ミ、ミオット侯爵?」
突然の提案に名を呼ばれたジョセフ様も目を見開いていた。それは他の人も同じで、その真意を測りかねているように見えた。私にもレニエ様の真意がわからない。
「お、お待ちください。私はロイと……」
「そうです、ミオット侯爵。それはいくら何でも……」
ミレーヌは狼狽え、エドモンもさすがに止めた。
「まぁ、話を聞きたまえ。ミレーヌ嬢はこの家の後継者で、エドモン君が家を出た今、それを変えるのは簡単ではあない。こうも短期間で二度目ともなれば国が認める可能性は殆どない。その一度目もドルレアク公爵家の力添えがあったからだからね」
確かに後継者の変更は厳しく、代わるにしても書類の申請などで時間がかかると聞く。
「結婚して貰うが、白い結婚になる」
「え?」
「レニエ様、幾らなんでもそれは……」
「そうです。ジョセフ殿に失礼すぎる話です」
婿入り、しかもこんな不良物件なのに白い結婚を条件にするなんてジョセフ様に失礼極まりない。
「話は最後まで聞いてくれ。これは政略結婚なんだよ」
「それにしてもそれではジョセフ殿があまりにも……」
エドモンも難色を示した。自分の代わりにシャリエ家を継いでもらうのに、最初から白い結婚だなんて……そりゃあ、相手はあのミレーヌだけど……
「ミオット侯爵、ここからは私がお話しても?」
「ああ、そうだね。ジョセフ君が話した方が早いだろう」
ジョセフ様の申し出にレニエ様が頷いた。一体どういうことなのか。ミレーヌだけでなく父も不安そうな表情を浮かべた。
「ここだけの話にして頂きたいのですが、よろしいですか?」
ジョセフ様が最初にそう尋ねた。随分言い難いことになるのだろう。勿論ジョセフ様の胃に反することをするつもりはないので頷いた。ミレーヌや父、そしてロイも神妙な面持ちで頷くのが見えた。
「実は入り婿先を探しておりましてね。私としては名前だけでいいのですが、中々そうはいかなくてこまっていたのですよ」
「それはどうしてと尋ねても?」
「う~ん、絶対に口外しないで下さいよ」
「勿論です」
「実は面倒な女性に婿入りを迫られていましてね。それを避けるために早急に婿入りをしてしまいたいのですよ」
484
あなたにおすすめの小説
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
悪役令嬢に転生したと気付いたら、咄嗟に婚約者の記憶を失くしたフリをしてしまった。
ねーさん
恋愛
あ、私、悪役令嬢だ。
クリスティナは婚約者であるアレクシス王子に近付くフローラを階段から落とそうとして、誤って自分が落ちてしまう。
気を失ったクリスティナの頭に前世で読んだ小説のストーリーが甦る。自分がその小説の悪役令嬢に転生したと気付いたクリスティナは、目が覚めた時「貴方は誰?」と咄嗟に記憶を失くしたフリをしてしまって──…
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
【完結】白い結婚を終えて自由に生きてまいります
なか
恋愛
––アロルド、私は貴方が結婚初日に告げた言葉を今でも覚えている。
忘れもしない、あの時貴方は確かにこう言った。
「初めに言っておく、俺達の婚姻関係は白い結婚として……この関係は三年間のみとする」
「白い結婚ですか?」
「実は俺には……他に愛する女性がいる」
それは「公爵家の令嬢との問題」を理由に、三年間だけの白い結婚を強いるもの。
私の意思を無視して三家が取り決めたものであったが、私は冷静に合意を決めた
――それは自由を得るため、そして『私自身の秘密を隠すため』の計算でもあった。
ところが、三年の終わりが近づいたとき、アロルドは突然告白する。「この三年間で君しか見えなくなった。白い結婚の約束をなかったことにしてくれ」と。
「セシーリア、頼む……どうか、どうか白い結婚の合意を無かった事にしてくれ」
アロルド、貴方は何を言い出すの?
なにを言っているか、分かっているの?
「俺には君しかいないと、この三年間で分かったんだ」
私の答えは決まっていた。
受け入れられるはずがない。
自由のため、私の秘密を守るため、貴方の戯言に付き合う気はなかった。
◇◇◇
設定はゆるめです。
とても強い主人公が自由に暮らすお話となります。
もしよろしければ、読んでくださると嬉しいです!
白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません
鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。
「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」
そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。
——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。
「最近、おまえが気になるんだ」
「もっと夫婦としての時間を持たないか?」
今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。
愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。
わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。
政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ
“白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる