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#6 吸血鬼になりたかった男 (意外なオチ)
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「先輩、あの男、さっきから何ぶつぶつと呟いているんですかね」
「あぁ、お前はまだ新人だから知らなかったな。あいつは毎日、欲してんのさ」
「何をですか?」
「血だよ」
後輩の新人看守の問いかけに、老練の看守はなんでもないことのように応えた。ぞくりと新人看守の体に震えが走る。新人看守は牢屋の中にいる男にチラリと目を向けた。
「一体、あの男は何をして捕まったんですか?」
「あぁ、それはな」
男は血を欲していた。否、愛していたと言ってもいい。人を殺しては血を飲み、渇きを癒していた。男は思い込んでいた。――自分は吸血鬼だと。
被害者たちはみな体中の血液を絞りとられていた。この衝撃の事件を新聞社たちはこぞって取り上げた。現代に蘇った吸血鬼の仕業だと。
警察は全力で捜査にあたり、ついに犯人を捕らえた。十人もの人を殺した罪で、男には無期懲役の刑が科せられる。そうして捕まった男は牢屋の中、一人血への渇望を唱え続けていた。
「というわけだ」
老練の看守の話を聞き、新人看守は首をかしげた。
「その事件、聞いたことがあります。でもそれって僕が生まれる前の話だったような?」
「そらそうよ。なんせ事件が起きたのは五十年前の話だからな」
「五十年っ!」
新人看守は驚きの声を上げた。それほど昔の話だとは思わなかったのだ。
「俺が今のお前くらいの年齢のときに起きた事件だしな」
老練の看守は懐かしそうに目を細めた。
「で、でも、五十年も前にしては若すぎませんか?」
「確かにな。俺はこんなに老けたってのに、この男はちっとも見た目が変わってねぇ」
「え、先輩だって五十代くらいにしか見えませんよ。ってか五十年前で僕くらいの年齢って先輩は一体いくつなんですか?」
「ふふっ、さぁな」
新人看守は男をまじまじと見る。どう見ても二十代にしか見えなかった。
「一体、どうなっているんですか?」
その言葉に老練看守はニヤリと笑ってみせた。
「案外、血を吸い続けた結果、本物の吸血鬼になったりしてな」
「そんなことってあるんですかね」
「俺に聞かれても分かるわけないだろ」
老練の看守は豪快に笑った。キラリと尖った牙が輝く。
新人看守は知らない。老練の看守がボソリと呟いた言葉を。
「……十人も手にかけやがったんだ。まだまだあいつには長生きして反省してもらわねえとな」
「あぁ、お前はまだ新人だから知らなかったな。あいつは毎日、欲してんのさ」
「何をですか?」
「血だよ」
後輩の新人看守の問いかけに、老練の看守はなんでもないことのように応えた。ぞくりと新人看守の体に震えが走る。新人看守は牢屋の中にいる男にチラリと目を向けた。
「一体、あの男は何をして捕まったんですか?」
「あぁ、それはな」
男は血を欲していた。否、愛していたと言ってもいい。人を殺しては血を飲み、渇きを癒していた。男は思い込んでいた。――自分は吸血鬼だと。
被害者たちはみな体中の血液を絞りとられていた。この衝撃の事件を新聞社たちはこぞって取り上げた。現代に蘇った吸血鬼の仕業だと。
警察は全力で捜査にあたり、ついに犯人を捕らえた。十人もの人を殺した罪で、男には無期懲役の刑が科せられる。そうして捕まった男は牢屋の中、一人血への渇望を唱え続けていた。
「というわけだ」
老練の看守の話を聞き、新人看守は首をかしげた。
「その事件、聞いたことがあります。でもそれって僕が生まれる前の話だったような?」
「そらそうよ。なんせ事件が起きたのは五十年前の話だからな」
「五十年っ!」
新人看守は驚きの声を上げた。それほど昔の話だとは思わなかったのだ。
「俺が今のお前くらいの年齢のときに起きた事件だしな」
老練の看守は懐かしそうに目を細めた。
「で、でも、五十年も前にしては若すぎませんか?」
「確かにな。俺はこんなに老けたってのに、この男はちっとも見た目が変わってねぇ」
「え、先輩だって五十代くらいにしか見えませんよ。ってか五十年前で僕くらいの年齢って先輩は一体いくつなんですか?」
「ふふっ、さぁな」
新人看守は男をまじまじと見る。どう見ても二十代にしか見えなかった。
「一体、どうなっているんですか?」
その言葉に老練看守はニヤリと笑ってみせた。
「案外、血を吸い続けた結果、本物の吸血鬼になったりしてな」
「そんなことってあるんですかね」
「俺に聞かれても分かるわけないだろ」
老練の看守は豪快に笑った。キラリと尖った牙が輝く。
新人看守は知らない。老練の看守がボソリと呟いた言葉を。
「……十人も手にかけやがったんだ。まだまだあいつには長生きして反省してもらわねえとな」
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