→📚️賛否分かれる面白いショートストーリー（1分以内で読了限定）

#22 夢のような人生 （皮肉なオチ）

　彼は尋常ではない強運の持ち主だった。福引やくじを引けば必ず特賞、宝くじでは何度も連続で大金を当て、周囲に怪しまれ始めたところで買うのを止めたこともある。今や彼の銀行口座には宝くじで得た大金が、一生遊んでも使いきれないくらいに眠っていた。

　また小学校の時にはクラスで集団食中毒があり、彼だけが無事だった。

　さらに飛行機事故ではたった一人生き残り、一時はテレビを騒がせたものだ。

　難関大学に一発合格し、学内のマドンナに告白されて付き合うことになり、遊び半分で受けた男性アイドルのオーディションに受かり――と、彼の人生はとにかくすべてが順風満帆だったのだ、あの日までは――

　某国から核が落とされ、国が滅亡したあの日。彼の強運はまたしても発揮された、その地域でたった一人の生き残りという形によって。

　絶望した彼は何度も死のうとした。しかしどうやっても死ねない。首を吊ればたまたまロープが切れ、ビルから飛び降りればたまたま何かがクッションとなり助かる。

　どんな死に方を試しても、一事が万事すべて何らかの幸運によって助かってしまうのだ。いや、今の彼にはもはやそれらは幸運ではなく、不運。

　そんな彼にも、とうとう不運が訪れる。

「彼も不運でしたなぁ。たまたま落ちていたバナナの皮に滑って頭を打ち、植物状態になってしまうなんて」

「本当になんて運の悪い。可哀想に……。もし彼に意識があれば、いっそ、死んだ方がマシだと思っているかもしれ
ませんね」