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ノアキ光

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127 魔が差した

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「うおおおおお! うめええええ!」

真夜中の公園。カップ焼きそばをすすりながら雄叫びを上げる男がいた。男の名は田中一郎、35歳。ごく普通のサラリーマンだが、今夜は何かが違った。

きっかけは、残業を終えてコンビニに立ち寄ったときのこと。いつものようにカップ焼きそばコーナーを物色していると、新発売の「激辛ペヤング獄激辛Final」が目に入った。

「こんなん食えるか!」

思わず呟いた瞬間、田中の心に悪魔が囁いた。

「やっちゃえよ。どうせお前の人生なんて、こんなもんだろ?」

その言葉に、田中の中の何かが弾けた。

「おっしゃあああ! やってやる!」

田中は、ありったけの小銭をかき集め、レジに「獄激辛Final」を叩きつけた。店員の怪訝な視線もどこ吹く風。田中は意気揚々と店を出て、近くの公園のベンチでカップ焼きそばを開けた。

湯切りを終え、真っ赤なソースを混ぜる。湯気と共に立ち上る刺激臭に、田中の目は爛々と輝いた。

一口。

「か、辛い!」

思わずむせる田中。だが、その辛さこそが、田中の心を燃え上がらせた。

二口、三口。

「うおおおおお! うめええええ!」

田中は、一心不乱に焼きそばをすすり込んだ。汗と涙と鼻水が入り混じる。周囲の視線など、もはやどうでもいい。

完食。

「やったぞおおお!」

田中は、夜空に向かって咆哮した。体中を駆け巡る灼熱感と達成感。この瞬間、田中は、自由だった。

翌朝。

トイレで脂汗を流しながら、田中は思った。

「魔が差した、ってやつだな」

だが、後悔はなかった。むしろ、清々しさすら感じていた。

「たまには、こんな日があってもいいか」

田中は、コンビニで買った胃薬を飲み干し、出社した。

いつもの日常。だが、田中の心には、小さな火が灯っていた。

「次は何をやろうかな」

悪魔の囁きは、まだ終わらない。
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