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#136 痔主様と玉座
しおりを挟むあるところに、痔主様という立派な名を持つ男がおりました。名の通り、彼は痔を患っており、それが人生のすべてを左右する存在となっていました。痔主様は何よりも座ることが苦手であり、その姿はまるで、座ること自体が世界最大の試練であるかのようでした。
彼は一国の主で、堂々たる玉座が城の中央に鎮座していましたが、その玉座は実は装飾的なもので、彼はほとんど使用したことがありません。代わりに、ふかふかのクッションを重ねた「痔主専用座布団セット」が特別に用意されており、それに座ることでようやく痔の苦しみを和らげることができました。
しかし、玉座に座らずして王であることは可能なのか、と彼自身も日々悩んでいました。家臣たちも、彼が政務のたびに椅子の上でうごめき、立ったり座ったりを繰り返す姿を見るのが心苦しく、なんとか解決策を見つけてあげたいと思っていました。
ある日、彼のもとに一人の知恵者が訪れました。名は「膏薬博士」。彼は多くの痔に苦しむ者たちを救ったという伝説を持つ人物であり、痔主様も期待を込めて彼を迎えました。
膏薬博士は、ひとつの小さな壺を取り出し、その中に何やら特別な軟膏が入っていると告げました。
「これさえ使えば、痔主様の悩みは消え去りますぞ。玉座に堂々と座れる日が訪れることでしょう!」
痔主様は喜び、早速その軟膏を使用しました。すると驚いたことに、彼の痔はたちまち痛みを和らげ、軽やかに座れるようになったのです。家臣たちも大いに喜び、痔主様はついに玉座にしっかりと座り、堂々とした姿を見せることができるようになりました。
ところが、それから数日経ったある日のこと。玉座に座っていた痔主様は、何やら不穏な感覚を覚えました。あの軟膏の効き目がすごすぎたのか、なんと今度は感覚が鈍りすぎて、玉座の上で何をしてもまるで自分の体ではないように感じるようになったのです。
「王様、どうかなされましたか?」
心配する家臣たちに、痔主様は玉座から立ち上がり、こう告げました。
「どうやら私は、玉座に座り続けることよりも、立ったままでいることが性に合っているらしい。これからは『立つ王』として国を治めることにするぞ!」
こうして痔主様は、玉座に座らずして王の務めを果たす、新たなスタイルの統治を始めたのでした。そして、彼は「痔主様」から「立主様」という名で親しまれるようになり、そのユーモア溢れる統治は長く国中に語り継がれることとなったのです。
それにしても、玉座の存在意義とはいったい……。家臣たちはこっそりと笑いをこらえながら、王の新たな姿に敬意を表し続けるのでした。
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