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#157 未来からの手紙
しおりを挟む宇宙の彼方に浮かぶ小惑星基地。そこでは、かつて地球が抱えていた環境問題や資源枯渇を解決するための実験が行われていた。
主人公のタカオは、そこに勤める若き科学者だ。彼の研究テーマは「時間通信装置」。過去や未来の人々と通信することで、地球の歴史の過ちを未然に防ぎ、より良い未来を築くことを目指していた。
装置がようやく完成し、彼はテストメッセージを送ることにした。送り先は50年後の未来。メッセージ内容は簡潔にこうだ。
「地球の未来を守るため、どんな情報でも教えてください。」
装置を作動させると、画面に砂嵐のようなノイズが走り、やがて未来からの返信が現れた。
「こちら未来。重大な警告を伝える。君の発明は決して公開してはいけない。」
タカオは驚いた。なぜ自分の発明が危険だというのか。詳細を尋ねると、返ってきたのは不気味な沈黙だった。
彼は無視することに決め、装置の技術を公開した。科学界では喝采が上がり、時間通信装置は世界中で使われるようになった。
ところが数年後、予期せぬ事態が起きた。各国政府や企業が過去に介入し始め、歴史は次々と改変され、何が本来の時間線だったのか誰にもわからなくなった。戦争、飢饉、環境破壊――すべてが混沌の中で繰り返される。
タカオは絶望し、最後の手段として再び装置を起動した。今度は50年前、つまり過去の自分にメッセージを送る。
「こちら未来のタカオだ。この発明を決して公開してはいけない。」
送信を終えた瞬間、彼の視界は暗転した。気づけば、実験室の机に座っている。目の前には未完成の装置がある。
彼はしばらく考え込んだ末、装置を廃棄することに決めた。
しかし、廃棄作業を終えたその夜、タカオの元に一通の手紙が届いた。差出人は「未来のタカオ」となっている。
封を開けると、そこにはこう書かれていた。
「お前の決断が正しかった。だが、お前が装置を発明しなければ、この警告を送ることはできなかったのだ。」
タカオは手紙を握り締め、ただ静かに窓の外を見つめた。星空はどこまでも広がっていたが、その輝きの中に彼の胸を締めつけるような矛盾が漂っていた。
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