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#161 初夢
しおりを挟む新年の夜、私は目を閉じて布団に包まれていた。冬の冷気が窓から漏れ、部屋の隅々を静かに包んでいる。
しかし、その静寂が私を眠りへと誘ったとき、ふと異常な感覚に襲われた。私の身体が、眠る以前の自分とまるで違う場所にいたのだ。
目を開けると、私は薄暗い森の中に立っていた。
木々は高く、枝が絡み合って空をほとんど覆っている。足元の土は湿っており、まるで何かの生命が私の周りを息を潜めて観察しているかのようだった。耳には何の音も届かず、ただただ、不安定で浮遊するような静けさが広がっている。
その中で、私の目に入ったのは、一筋の光だった。
それは、遠くに浮かぶ細い道のようで、まるで闇の中で何かを照らし続けているかのようだった。なぜか、その光に引き寄せられるように足を進める。歩みを進めるごとに、周囲の景色はだんだんと変わっていき、私の周りに奇妙なものが現れる。
巨大な花が突然現れ、首を伸ばして私を見つめる。その花の中心から、顔が現れる。目を閉じたかと思えば、今度はその顔が笑い、私を睨む。
「君は何を見ている?」
その声が、私の耳の奥で響いた。振り返ると、今度は小さな、人間のような影が一つ。どうしても、その影の表情を見つけることができなかった。
その瞬間、突然、闇の中にどこからともなく音が鳴り始めた。それは、金属が擦れる音のようであり、鼓動のようでもあった。
私はただ立ち尽くすしかなかった。音はだんだんと大きくなり、やがて私はその音の源に引き寄せられていった。
目の前に現れたのは、金属製の巨大な扉だった。その扉の前には、白いローブを着た人物が立っている。彼は私に向かって手を差し出す。
「選びなさい。」
私はその手を見つめ、心の中で何かを感じた。
その人物の目は私を静かに見つめ、何かを待っているかのようだった。だが、どうしてもその手を取ることができなかった。
突然、目の前で花が再び咲き、今度はその顔が私に向かって話し始める。
「選ぶことは、決して自由ではない。君が選んだ時点で、何かが消える。」
その言葉に、私は一瞬、全てを放棄したくなった。しかし、選ばなければ、私はこの場に閉じ込められる。どちらが怖いのか、私はもうわからなくなっていた。
やがて、花の顔が消え、扉が開かれると、私はひとしきり驚き、そこから立ち去ることを決めた。その瞬間、暗闇の中に深い空間が広がり、私は目を覚ました。
目を開けると、私の周りにはただの静かな朝が広がっていた。
まるで何事もなかったかのように、部屋の空気が清らかで温かい。しかし、心の中にはひとしきりの違和感が残り続けていた。私は異様な感動に包まれ、しばらく余韻を感じながら、新たな日常を迎えた。
夢だったのだろうか。
それとも、私が本当に何かを選んだのだろうか。
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