→📚️賛否分かれる面白いショートストーリー（1分以内で読了限定）

#162 空想上のお友だち

小さな町の静かな一軒家に住む七歳の少女、優花は、ずっと一人遊びが得意だった。
両親は共働きで忙しく、学校が終わると優花は一人で過ごすことが多かった。けれど、彼女には「ユウ」という特別な友達がいた。ユウは、ふわふわの金髪に青い瞳を持ち、いつも優花の好きな花柄のシャツを着ている少年だった。

ユウは優花が寂しいとき、悲しいとき、いつもそばにいてくれた。
優花が転んで膝を擦りむいたときも、「痛くない魔法をかけてあげるよ」と言って笑い、まるでその痛みを和らげるように優しく話しかけてくれた。寝る前の時間には、二人で小さな冒険の話を作り、いつかその冒険に出かける約束をした。

ある日、学校でできた友達の絵美が優花に「一緒に遊ぼう」と誘った。
絵美は明るくて活発で、優花とは違うタイプの子だったけれど、彼女と過ごす時間は新鮮で楽しかった。公園で鬼ごっこをしたり、一緒に本を読んだり。優花の生活は少しずつ色鮮やかになっていった。

そんなある夜、優花の枕元にユウが現れた。けれど、その姿はいつもより少し薄れているように見えた。

「ユウ、どうしたの？」  
優花が心配そうに聞くと、ユウはいつものように微笑んだ。  

「優花、もう僕が必要じゃなくなったんだよ。」  

「そんなことない！　ユウはずっと私の友達だよ！」  

けれどユウは首を振った。  
「君はもう、一人じゃない。絵美や他の友達がいる。そして君自身が強くなった。」  

優花は泣きたくなった。けれど、ユウはそっと彼女の手を握り、最後の冒険の話を始めた。それは、優花が勇気を持って自分の世界を広げていく物語だった。話が終わる頃、ユウの姿はほとんど見えなくなっていた。  

「ありがとう、優花。楽しかったよ。」  

ユウの声がかすかに聞こえ、そして消えてしまった。  

その翌朝、優花は目を覚まし、ユウがいなくなったことを感じた。悲しかったけれど、不思議と心は温かかった。ユウが教えてくれた冒険の話が、彼女の胸の中に鮮やかに残っていたからだ。

そしてその日から、優花はもっとたくさんの友達と笑い合うようになり、自分の世界を少しずつ広げていった。
ユウの姿は見えなくなったけれど、彼の記憶は優花の心の中に、ずっと消えない灯火のように輝いていた。