11 / 151
第11話 魔力上限は生まれつき?本当か、それ?
しおりを挟む
王宮の一角にある魔法研究室。
窓の外では穏やかな陽光が差し込み、庭園では鳥たちが楽しげにさえずっている。そんな平和な空間の中——。
「……足りねぇ……」
研究机に突っ伏しながら、九条迅は疲れ切った声を漏らした。
目の前の実験ノートには、びっしりと計算式やメモが書き込まれている。その隣には、使い果たしたインク瓶と、お茶の空きカップが無造作に転がっていた。
彼の呟きは、絶望というよりも、呆れや憤りの混じったものである。
「……全然足りねぇ!!」
バンッ! と机を叩く音が響き渡る。
その声に驚いたのか、部屋の隅で紅茶をゆったり楽しんでいた宮廷魔法士ロドリゲスが、顔をしかめながら振り向いた。
「何をそんなに荒ぶっておるのじゃ、勇者殿?」
ロドリゲスの声には、どこか「またか……」という響きが混じっている。
ここ最近、迅が何かを発見するたびに「これは革命だ!」とか「すげぇことに気づいた!」と叫び出し、研究室の空気を騒がせていたのだ。
「あー、いいとこに来たな、じいさん。聞いてくれよ。俺なりに詠唱の最適化も進めてきたし、なんならフレア・リィスに関しちゃ無詠唱もほぼできるようになったわけよ。」
「ほう、それは凄いことではないか。」
ロドリゲスが髭を撫でながら、感心したように呟く。
「でもな……魔法を撃てる回数が少なすぎるんだよ!!」
迅は椅子をガタガタと揺らしながら、頭を抱えた。
「さっき試しに《フレア・リィス》を連続で撃ったんだが、たったの三発で息切れした。」
「ほう。」
「五発目を撃とうとしたら、頭がクラクラして、マジで貧血起こすかと思ったわ。」
「うむ。」
ロドリゲスが髭を撫でながら頷く。
「おかしくねぇ!? 俺、異世界から来た“勇者”なんだろ!? なんでそこらの一般魔法士と同じ程度しか魔法撃てねぇんだよ!メ◯3発撃っただけでMP
切れるような勇者に魔王が倒せるか!?異世界転移のチート能力とかは付与されてねぇのか?俺には!」
ロドリゲスは、ふむ、と頷きながら紅茶のカップを持ち上げ、優雅にひとくち飲む。
そして、落ち着いた声で告げた。
「……後半よくわからんが、そりゃそうじゃろう。」
「納得いかねぇ!!」
即座に食い気味で叫ぶ迅。ロドリゲスは肩をすくめながら、穏やかに続けた。
「魔力の総量は生まれつき決まっておるものじゃ。鍛えようが増えるものではない。」
「はぁ!? 筋肉だって鍛えれば増えるのに!? 魔力だけ“生まれつき”とかそんな理屈、科学的におかしくねぇか!?」
ロドリゲスは「いやいや」と手を振る。
「魔力というのは、そもそも“精神エネルギー”と肉体の状態に大きく左右されるものじゃ。個体差はあるが、一般的に生まれつきの上限があり、それ以上は増えぬとされておる。」
迅はなおも納得がいかない様子で、ぐるぐると研究室の床を歩き回る。
「じゃあ、訓練して魔力量を増やしたっていう例はないのか?」
「皆無じゃな。」
「はぁぁぁ!? みんな、増やそうと試したのか?」
「そこまでして試す者もおらぬ。そもそも、今まで魔法士が魔力量を増やすなど考えたこともなかったからな。」
「いや、考えろよ!トライしろよ!」
迅は両手で頭を抱え、ガクンと机に突っ伏した。
「あーもう……納得できねぇ……。そもそも俺は異世界人なんだぜ? そもそも、こっちの世界の法則が、俺にもそのまま適用されるっていう保証はねぇだろ」
ロドリゲスは顎に手を当てて、しばし考え込んだ。
「……ふむ、確かにそれは一理あるかもしれぬ。」
迅が勢いよく身を乗り出す
「だろ!? だったら、訓練次第で魔力量が増える可能性もあるってことじゃねぇのか?」
「……仮説としては面白いが、それをどうやって証明するのじゃ?」
「そこを今から考えるんだよ!!」
研究室の空気が張り詰めたその瞬間——。
「だったら、アルクスの森に行ってみたら?」
不意に入ってきた冷静な声に、迅とロドリゲスはハッと振り向く。
そこには、いつの間にか研究室に足を踏み入れていたリディア・アークライトがいた。
「来た!待ってました、天才リディア様!何かいいアイデアある?」
「黙りなさい。ガス欠勇者。」
彼女は腕を組みながら、興味深げに迅を見つめている。
「魔力量を増やす方法を知りたいなら、“アルクスの森”で試してみるといいわ。」
そう言ったリディアの瞳には、迅に対するほんのわずかな興味と期待が混じっていた。
——こうして、迅・リディア・ロドリゲスの三人は、“アルクスの森”へと向かうことになる。
窓の外では穏やかな陽光が差し込み、庭園では鳥たちが楽しげにさえずっている。そんな平和な空間の中——。
「……足りねぇ……」
研究机に突っ伏しながら、九条迅は疲れ切った声を漏らした。
目の前の実験ノートには、びっしりと計算式やメモが書き込まれている。その隣には、使い果たしたインク瓶と、お茶の空きカップが無造作に転がっていた。
彼の呟きは、絶望というよりも、呆れや憤りの混じったものである。
「……全然足りねぇ!!」
バンッ! と机を叩く音が響き渡る。
その声に驚いたのか、部屋の隅で紅茶をゆったり楽しんでいた宮廷魔法士ロドリゲスが、顔をしかめながら振り向いた。
「何をそんなに荒ぶっておるのじゃ、勇者殿?」
ロドリゲスの声には、どこか「またか……」という響きが混じっている。
ここ最近、迅が何かを発見するたびに「これは革命だ!」とか「すげぇことに気づいた!」と叫び出し、研究室の空気を騒がせていたのだ。
「あー、いいとこに来たな、じいさん。聞いてくれよ。俺なりに詠唱の最適化も進めてきたし、なんならフレア・リィスに関しちゃ無詠唱もほぼできるようになったわけよ。」
「ほう、それは凄いことではないか。」
ロドリゲスが髭を撫でながら、感心したように呟く。
「でもな……魔法を撃てる回数が少なすぎるんだよ!!」
迅は椅子をガタガタと揺らしながら、頭を抱えた。
「さっき試しに《フレア・リィス》を連続で撃ったんだが、たったの三発で息切れした。」
「ほう。」
「五発目を撃とうとしたら、頭がクラクラして、マジで貧血起こすかと思ったわ。」
「うむ。」
ロドリゲスが髭を撫でながら頷く。
「おかしくねぇ!? 俺、異世界から来た“勇者”なんだろ!? なんでそこらの一般魔法士と同じ程度しか魔法撃てねぇんだよ!メ◯3発撃っただけでMP
切れるような勇者に魔王が倒せるか!?異世界転移のチート能力とかは付与されてねぇのか?俺には!」
ロドリゲスは、ふむ、と頷きながら紅茶のカップを持ち上げ、優雅にひとくち飲む。
そして、落ち着いた声で告げた。
「……後半よくわからんが、そりゃそうじゃろう。」
「納得いかねぇ!!」
即座に食い気味で叫ぶ迅。ロドリゲスは肩をすくめながら、穏やかに続けた。
「魔力の総量は生まれつき決まっておるものじゃ。鍛えようが増えるものではない。」
「はぁ!? 筋肉だって鍛えれば増えるのに!? 魔力だけ“生まれつき”とかそんな理屈、科学的におかしくねぇか!?」
ロドリゲスは「いやいや」と手を振る。
「魔力というのは、そもそも“精神エネルギー”と肉体の状態に大きく左右されるものじゃ。個体差はあるが、一般的に生まれつきの上限があり、それ以上は増えぬとされておる。」
迅はなおも納得がいかない様子で、ぐるぐると研究室の床を歩き回る。
「じゃあ、訓練して魔力量を増やしたっていう例はないのか?」
「皆無じゃな。」
「はぁぁぁ!? みんな、増やそうと試したのか?」
「そこまでして試す者もおらぬ。そもそも、今まで魔法士が魔力量を増やすなど考えたこともなかったからな。」
「いや、考えろよ!トライしろよ!」
迅は両手で頭を抱え、ガクンと机に突っ伏した。
「あーもう……納得できねぇ……。そもそも俺は異世界人なんだぜ? そもそも、こっちの世界の法則が、俺にもそのまま適用されるっていう保証はねぇだろ」
ロドリゲスは顎に手を当てて、しばし考え込んだ。
「……ふむ、確かにそれは一理あるかもしれぬ。」
迅が勢いよく身を乗り出す
「だろ!? だったら、訓練次第で魔力量が増える可能性もあるってことじゃねぇのか?」
「……仮説としては面白いが、それをどうやって証明するのじゃ?」
「そこを今から考えるんだよ!!」
研究室の空気が張り詰めたその瞬間——。
「だったら、アルクスの森に行ってみたら?」
不意に入ってきた冷静な声に、迅とロドリゲスはハッと振り向く。
そこには、いつの間にか研究室に足を踏み入れていたリディア・アークライトがいた。
「来た!待ってました、天才リディア様!何かいいアイデアある?」
「黙りなさい。ガス欠勇者。」
彼女は腕を組みながら、興味深げに迅を見つめている。
「魔力量を増やす方法を知りたいなら、“アルクスの森”で試してみるといいわ。」
そう言ったリディアの瞳には、迅に対するほんのわずかな興味と期待が混じっていた。
——こうして、迅・リディア・ロドリゲスの三人は、“アルクスの森”へと向かうことになる。
53
あなたにおすすめの小説
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。
誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。
そんなホシは、ぼそっと一言。
「うちのペット達の方が手応えあるかな」
それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
ゲームの世界(異世界)へ、モブ(子供キャラ)として転移してしまった
厘
ファンタジー
ゲーム好きの田中 蓮(たなか れん)が、寝て起きたらゲームの世界(異世界)にいた。
どんな冒険が待っているか楽しみにしてたら、何も起こらない。チート能力をくれるはずの女神様も来ない。ちょっと若く(子供キャラ)なったくらい?
お金がなければご飯も食べられない。まずはその辺の木の枝を拾ってお金にしよう。無理か?
「はい。50Gね」
お金になった・・・・。
「RPGゲームと一緒だ。よし!おいしいご飯を食べるためにお金を貯めるぞ!」
「え?俺、モブ(子供キャラ)なの?」
ゲームの世界(異世界)へ、モブ(子供キャラクター)に転移したレンだが、いつの間にか面倒なことに巻き込まれていく物語。
■注意■
作中に薬や薬草、配合など単語が出てきますが、現代をヒントにわかりやすく書いています。現実世界とは異なります。
現実世界よりも発達していなくて、でも近いものがある…という感じです。ご理解ご了承いただけますと幸いです。
知らない植物を口にしたり触ったりするのは危険です。十分気をつけるようにしてください。
この作品はフィクションです。
☆なろうさんでも掲載しています
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる