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第151話 エリナとルクレウス
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──10年前。エリナ・ヴァイスハルト、9歳──
その日のノーザリアの空は、どこまでも澄んでいて、青というより白に近い色をしていました。
私、エリナ・ヴァイスハルトは、窓辺からその空を見上げながら、心臓がドキドキ鳴るのを両手で押さえていました。
明日は、武闘大会。少年の部といっても、ノーザリア全土から腕に覚えのある子供たちが集まる一大行事。しかも私は——
「ヴァイスハルト家の代表として出るんだもん。絶対に、負けられない」
自分に言い聞かせるように、そう呟きました。
「その意気だ、エリナ」
ふいに、背後から父の声がしました。振り返ると、父——ロイ・ヴァイスハルトが優しい目で私を見ていました。
赤い軍装のような上着に身を包んで、堂々とした姿。私の、ずっと目標だった人。
「明日は、全力を尽くしてきなさい。勝っても、負けてもいい。だが、誇りは……誇りだけは、忘れてはならない」
「……うん。うん、分かってる」
私は小さく頷いて、でも思わずぎゅっと拳を握ります。
勝っても、負けてもいい?
そんなの、私は——嫌だ。
私は、勝ちたい。
“エリナ”としてじゃない。“ヴァイスハルト家”の誇りとして、勝ちたい。
そうじゃなきゃ、意味がない。
小さな私には、家族が、そしてヴァイスハルトの名が何より大事でした。
私は——その名前が、好きだった。だから、背負いたかった。
「お父様、明日は……必ず、勝ってきます」
「ふふ……そうか。じゃあ、約束しよう。勝ったら、あの新しい剣をプレゼントしてやる。銀の細工の入った、あれが気に入ってたんだろう?」
「……えっ、本当!? やった!」
私は思わず飛び跳ねました。そんな私に、母が呆れたように笑いながら近づいてきます。
「もう、あなたたち。女の子が戦ばっかりなんて、ほんとにこの家の子ねぇ」
母はそう言って、私の髪を撫でてくれました。その手はあたたかくて、ふわふわしてて、ほんのり香水の匂いがして——
私は、その夜、一度も眠れませんでした。
剣のことを考えて、勝った後のことを考えて、お父様とお母様に笑ってもらうことを想像して——何度も、枕に顔を埋めて転がりました。
勝つんだ。明日、きっと——
武闘大会の会場は、子どもが飲み込まれてしまいそうなほど、大きくて、眩しかった記憶があります。
観客の声、剣が交わる音、太鼓のような足音。全部がごちゃごちゃしてて、でも不思議と怖くはありませんでした。
私は、控え室の隅っこで、自分の剣を布で磨いていた。明るい光の中でも、この剣だけは静かに凛としているようで——
「やあ、君が……エリナ・ヴァイスハルト嬢かな?」
声をかけられたのは、その時でした。
顔を上げると、そこにいたのは、一人の少年。
金の髪。水色の瞳。白と青の装飾が施された軍装風の上着。年齢は私より少し上、たぶん十一歳くらい。
だけど、背筋の伸ばし方も、言葉の選び方も、どこか“大人びて”いました。
「……はい。あなたは……?」
「ルクレウス・ノーザリア。ノーザリア王国、第一王子だよ」
え……?
一瞬だけ、心臓が止まりかけました。
“王子”……。
噂には聞いていた。剣の天才。王国の未来。大会の最有力候補。
でも、目の前にいる彼は——その噂とは少し違っていました。
笑ってる。にこやかに。でも、何かが変。
笑ってるのに、目が笑ってない。
声はやさしいのに、心がこっちを見ていない。
「明日の試合、楽しみにしているよ。僕も全力で戦わせてもらうから」
「……はい。私も、全力で」
私は自然に答えたけれど、その瞬間、背中にゾワッと寒気が走りました。
この人は——何かが違う。
たとえば、花が咲いてると思ったら、触ったら針があったみたいな。
たとえば、あたたかい水に見えて、でもその奥には氷の塊が沈んでるみたいな。
私の剣は、敵を斬るためにある。だけど、目の前の彼は——違う。
「じゃあ、明日、いい勝負をしよう」
笑って、ルクレウス王子は背を向けて歩いていきました。
私はその背中を見ながら、なぜか、ひとつも足音が聞こえなかったことを、不思議に思っていまひた。
◇◆◇
あの夜の空は、まるで水墨画のように、どこまでも薄暗くて冷たかったのです。
わたくしは、控え室の片隅で、父様に手を握られながら、試合の順番を待っていました。
「エリナ、お前は誇り高きヴァイスハルト家の娘だ。だが、勝ち負けにこだわる必要はない。何よりも——全力を尽くしてきなさい」
父様の手は、いつも大きくて、あたたかくて、安心できる匂いがしました。
「うん、頑張るね、父様!」
胸がドキドキしていたけど、わたくしは胸を張って、父様に微笑み返しました。
けれど——そのあと。
控え室から一人、トイレに行こうとしたわたくしに、ひとりの男の人が声をかけてきました。
「お嬢さん。少し、いいかな?」
金の髪を撫でつけた、細身の貴族でした。第一王子派のひとり。名前までは覚えていません。
彼はわたくしの前にかがみこみ、小さな笑みを浮かべながら、優しげな声で言いました。
「君のご活躍、評判だよ。ヴァイスハルト家のご息女にして、剣の天才……ふふ、素晴らしい。だがね、明日はルクレウス殿下との決勝戦だ。分かるね?」
「……はい。分かってます」
わたくしが答えると、彼は一層にこやかに笑いました。
「なら話が早い。殿下は王族、ノーザリアの未来を背負うお方だ。君の力を否定する気はないが、“貴族”として、賢明な選択をしてくれることを願っている」
その言葉の意味を、わたくしはすぐに理解しました。
「……負けろってこと?」
彼は何も答えず、ただ立ち上がって、微笑のまま立ち去っていきました。
後に残ったのは、冷たい風と、じんわりと震える指先だけ。
わたくしは——それでも決めていました。
父様が言ってくれた言葉を。
「全力を尽くしてきなさい」
だから、絶対に、手は抜かない。あのルクレウス王子が相手でも、剣を曲げたりしない。
それが、わたくしの誇り。
……ヴァイスハルトの名に懸けて。
◇◆◇
決勝戦の舞台は、朝焼けに染まった闘技場。
観客席はいっぱいで、空には王家の紋章が描かれた旗がなびいていました。
目の前に立つのは、ルクレウス・ノーザリア殿下。
あのときと同じ、あたたかな笑みを浮かべて、わたくしを見ていました。
「来てくれて、ありがとう。エリナ嬢」
「……わたくし、全力で行きますわ」
「うん。僕もだよ」
言葉に偽りはなかった——けれど。
(やっぱり……どこか、分からない)
戦いが始まる直前でさえ、ルクレウスの笑顔の裏にある「本心」が見えなかったのです。
木剣がぶつかる音が、何度も響きました。
何十合も斬り結び、どちらも譲らない戦い。
彼の剣は綺麗で、無駄がなく、速く、力強く……だけど、どこか「薄い」気がしました。
そう、まるで——誰かに「見せる」ための剣みたいな。
わたくしは、ただがむしゃらに、父様の言葉を思い出しながら戦いました。
膝が震えても、腕が痺れても、何度でも立ち上がって——
そして最後、わたくしの木剣が、ルクレウスの胸元に軽く触れました。
「……一本! 勝者、エリナ=ヴァイスハルト!」
歓声と、拍手。
ルクレウスは倒れていませんでした。ただ、微笑んだまま、木剣を鞘に収めて、わたくしに小さく頷きました。
「強いね、君は」
その言葉に、わたくしは——少しだけ、胸が痛みました。
◇◆◇
数日後。
わたくしと父様と母様は、表彰式を終えて馬車で屋敷へ戻る途中でした。
父様が笑って言いました。
「よくやったな、エリナ。あのルクレウス殿下に勝つとは、正直驚いたぞ」
「ふふ……父様の言葉通り、全力を尽くしたもの」
「エリナ、今日は町に着いたら新しい剣を見に行きましょうね」
「うん! それなら、もっと強くなれる剣がいいな!」
その会話が、最後になりました。
突然、馬車が止まりました。
車外から、何人もの足音と、怒号。そして——剣戟の音。
「エリナ、伏せていろ!」
父様の声と共に、母様がわたくしを抱きかかえた瞬間、馬車の扉が破られました。
仮面をつけた男たちが、鋭い刃を手に、怒声を上げながら馬車に突入してきました。
父様が剣を抜いて迎え撃ちました。母様が、わたくしを庇いながら、叫びました。
「逃げなさい……エリナ!!」
……それから、先の記憶があまりありません。
後から聞いた話では、駆け付けた冒険者の皆様が、私を賊から救って下さったのだとか。
気がついたときには、血まみれの馬車の中で、ひとりだけ、泣きながら父様と母様の手を握っていました。
──確証はありませんでした。ですが、わたくしの中で、ひとつの結論だけが、静かに、残っていました。
——わたくしがルクレウス王子に勝ったから。
それが、全ての始まりだったのだと。
──あの時、わたくしが、別の選択をしていたら。
父と母は死なずに済んだのかも知れない。
今でもそんな思いが、どうしても胸の奥に消えず残っているのです。
──────────────────
──沈黙が、降りた。
控え室に満ちていた魔導灯の淡い光が、エリナの横顔をそっと照らしている。
語り終えたばかりの彼女は、膝の上で組んだ両手をきつく握りしめていた。
声の震えは抑えたつもりだったが、話し終えた今、背筋の奥がわずかに痺れるように疼いていた。
数秒。
誰も何も言わなかった。
だがその沈黙は、重苦しいものではない。
静かに、慎重に──彼女の言葉を受け止めるための、“尊重”の沈黙だった。
「……お前とルクレウスの間に何かあるのは、うっすら気付いてはいたけどよ」
一番に口を開いたのは、ミィシャだった。
彼女らしくない、しんと落ち着いた声。
普段なら「うそだろ!」とか「信じられねぇ!」とか、もっと感情の赴くままに言葉を投げるはずなのに、
今は、ただそっと、手をそばに伸ばしていた。
「……エリナ。ひとりで、ずっと……そんなことを抱えてたのかよ」
その手がエリナの背に触れる。あたたかかった。
「……ありがとな、話してくれて」
ミィシャのその言葉に、エリナの瞳がふるりと揺れる。
「こっちこそ、ありがとう、ミィシャ。ライネルにも今度ちゃんとお話しするつもりですわ。」
エリナは泣かなかった。泣きたくはなかった。
それでも、張りつめていたものが少しずつほどけていくのが、自分でも分かった。
「……私、ずっと信じたかったのかも知れません。あのときの勝利が……ちゃんと意味のあるものだったって」
そう呟く彼女に、今度はカリムが静かに頷く。
「……貴殿は誇るべきだ、エリナ・ヴァイスハルト」
声は低く、まっすぐだった。
「その勝利は、誰に強いられたものでもなく。己の矜持に従って掴んだものだ。……それは、剣士として、何よりも尊い」
彼の言葉には、打算も慰めもなかった。
ただ剣を生きる者としての、揺るがぬ敬意だけが宿っていた。
エリナは、ぽつりと笑う。
「……ありがとう、カリムさん。そう言ってもらえると、少しだけ……救われた気がしますわ」
すると──
「……で、本当にそれ、ルクレウスが関与してたって確証、あるのか?」
静かに口を開いたのは、やはり迅だった。
ずっと黙って話を聞いていた彼は、椅子の背にもたれたまま、組んでいた腕を解いてゆっくりと前かがみになる。
その黒曜石のような瞳が、真っ直ぐにエリナを見つめていた。
「……いや、責めるつもりはねぇよ。お前がそう感じてるのも、今まで一人で背負ってきたことも、ちゃんと伝わった」
その言葉に、エリナは一瞬だけまばたきをする。
「でもな、エリナ。俺は……当事者じゃないし、事の全貌も知らねぇ。
お前がルクレウスに勝ったことが原因だったかもしれねぇし、そうじゃないのかもしれねぇ。
あの時、お前の勝利に“感情的にキレた誰か”が、勝手に動いた可能性だってある」
声音に熱はない。ただ淡々と、事実としての可能性を並べていく迅。
だがその眼差しは、どこまでも真剣だった。
「……だから、間違いなくひとつ言える事があるとしたら。お前が今まで『全部自分のせい』って思い込んできたその重荷……全部、お前一人で抱え込む必要はねぇってことだ。エリナは、何も悪くねぇよ。」
その声が、不思議なほど優しく感じた。
「世界ってのはもっと雑で、不条理で、非合理的で、時々くだらねぇくらい人間くせぇんだよ。
なのに全部自分が悪い、なんて言ってたら──お前みたいな、ちゃんと剣を握って立ってる奴が先に壊れちまうだろ。」
静寂が、控え室に落ちる。
エリナは、小さく息を吸った。
何かが、胸の奥で音を立てて崩れた気がした。
「……迅様、それは……優しすぎますわ」
声がかすれる。視界がほんの少し、にじむ。
「優しいっていうか……お前、ちゃんと戦ったんだろ?」
そう言って、迅はふっと笑う。
「お前は……その時、“勝ち”を選んだ。
誰に媚びるでもなく、誇りを選んだ。……それだけで十分だろ。カッコつけじゃなく、俺はそう思ってるぜ。」
気づけば、エリナの目尻には涙が一粒、こぼれていた。
慌てて袖でぬぐいながら、顔を背けようとする。だが——
「……やっぱりずるいですわね、貴方は」
「ん?」
「……そんな顔して、そんな風に言われたら……誰だって、ちょっとは心が動きますわ」
頬が、ほんのりと赤くなる。
ミィシャがこっそりニヤニヤしながらカリムと目を合わせているのに、エリナは気づかなかった。
でも、いい。
胸のどこかがふっと軽くなった気がして、久しぶりに深く息が吸えたから。
エリナは、笑う。静かに、柔らかく。
「……ありがとう、迅様」
それは、過去と、今と、そしてこれからを踏みしめるための——一歩だった。
同時に──
「続いての試合は、第二試合ッ! ルクレウス・ノーザリア選手と、バルドル・ノルダート選手の登場です!」
魔導スピーカーが控え室にアナウンスを響かせる。
ピリ、と空気が変わった。
席を外していた善鬼が、タイミングを見計らって戻ってくる。
「……お、ちょうど始まりますか。いやぁ、さっきの話……全部聞いたらあきませんよね? ちょっとだけ、耳が勝手に聞いてしまったような……」
「……聞いてたんですのね」
「すんません……でも、誰にも言わへんよ。」
ミィシャが苦笑して、ぺちんと善鬼の背中を叩く。
「とにかく! あのバカ王子がどんな戦いを見せるか、ちゃんと見届けねーとな!」
カリムが静かに頷き、迅は観戦モニターの前へと向かう。
そしてエリナもまた、胸の奥に張りついた痛みをそのままに、立ち上がった。
あの男が、今、どんな剣を振るうのか──
目を背けずに見る。それが、今の自分にできること。
風のように、控え室の空気が動いた。
過去は、すでに終わった。
でも。
その続きは、これから始まるのだ。
──エリナの物語の、“第2章”が。
その日のノーザリアの空は、どこまでも澄んでいて、青というより白に近い色をしていました。
私、エリナ・ヴァイスハルトは、窓辺からその空を見上げながら、心臓がドキドキ鳴るのを両手で押さえていました。
明日は、武闘大会。少年の部といっても、ノーザリア全土から腕に覚えのある子供たちが集まる一大行事。しかも私は——
「ヴァイスハルト家の代表として出るんだもん。絶対に、負けられない」
自分に言い聞かせるように、そう呟きました。
「その意気だ、エリナ」
ふいに、背後から父の声がしました。振り返ると、父——ロイ・ヴァイスハルトが優しい目で私を見ていました。
赤い軍装のような上着に身を包んで、堂々とした姿。私の、ずっと目標だった人。
「明日は、全力を尽くしてきなさい。勝っても、負けてもいい。だが、誇りは……誇りだけは、忘れてはならない」
「……うん。うん、分かってる」
私は小さく頷いて、でも思わずぎゅっと拳を握ります。
勝っても、負けてもいい?
そんなの、私は——嫌だ。
私は、勝ちたい。
“エリナ”としてじゃない。“ヴァイスハルト家”の誇りとして、勝ちたい。
そうじゃなきゃ、意味がない。
小さな私には、家族が、そしてヴァイスハルトの名が何より大事でした。
私は——その名前が、好きだった。だから、背負いたかった。
「お父様、明日は……必ず、勝ってきます」
「ふふ……そうか。じゃあ、約束しよう。勝ったら、あの新しい剣をプレゼントしてやる。銀の細工の入った、あれが気に入ってたんだろう?」
「……えっ、本当!? やった!」
私は思わず飛び跳ねました。そんな私に、母が呆れたように笑いながら近づいてきます。
「もう、あなたたち。女の子が戦ばっかりなんて、ほんとにこの家の子ねぇ」
母はそう言って、私の髪を撫でてくれました。その手はあたたかくて、ふわふわしてて、ほんのり香水の匂いがして——
私は、その夜、一度も眠れませんでした。
剣のことを考えて、勝った後のことを考えて、お父様とお母様に笑ってもらうことを想像して——何度も、枕に顔を埋めて転がりました。
勝つんだ。明日、きっと——
武闘大会の会場は、子どもが飲み込まれてしまいそうなほど、大きくて、眩しかった記憶があります。
観客の声、剣が交わる音、太鼓のような足音。全部がごちゃごちゃしてて、でも不思議と怖くはありませんでした。
私は、控え室の隅っこで、自分の剣を布で磨いていた。明るい光の中でも、この剣だけは静かに凛としているようで——
「やあ、君が……エリナ・ヴァイスハルト嬢かな?」
声をかけられたのは、その時でした。
顔を上げると、そこにいたのは、一人の少年。
金の髪。水色の瞳。白と青の装飾が施された軍装風の上着。年齢は私より少し上、たぶん十一歳くらい。
だけど、背筋の伸ばし方も、言葉の選び方も、どこか“大人びて”いました。
「……はい。あなたは……?」
「ルクレウス・ノーザリア。ノーザリア王国、第一王子だよ」
え……?
一瞬だけ、心臓が止まりかけました。
“王子”……。
噂には聞いていた。剣の天才。王国の未来。大会の最有力候補。
でも、目の前にいる彼は——その噂とは少し違っていました。
笑ってる。にこやかに。でも、何かが変。
笑ってるのに、目が笑ってない。
声はやさしいのに、心がこっちを見ていない。
「明日の試合、楽しみにしているよ。僕も全力で戦わせてもらうから」
「……はい。私も、全力で」
私は自然に答えたけれど、その瞬間、背中にゾワッと寒気が走りました。
この人は——何かが違う。
たとえば、花が咲いてると思ったら、触ったら針があったみたいな。
たとえば、あたたかい水に見えて、でもその奥には氷の塊が沈んでるみたいな。
私の剣は、敵を斬るためにある。だけど、目の前の彼は——違う。
「じゃあ、明日、いい勝負をしよう」
笑って、ルクレウス王子は背を向けて歩いていきました。
私はその背中を見ながら、なぜか、ひとつも足音が聞こえなかったことを、不思議に思っていまひた。
◇◆◇
あの夜の空は、まるで水墨画のように、どこまでも薄暗くて冷たかったのです。
わたくしは、控え室の片隅で、父様に手を握られながら、試合の順番を待っていました。
「エリナ、お前は誇り高きヴァイスハルト家の娘だ。だが、勝ち負けにこだわる必要はない。何よりも——全力を尽くしてきなさい」
父様の手は、いつも大きくて、あたたかくて、安心できる匂いがしました。
「うん、頑張るね、父様!」
胸がドキドキしていたけど、わたくしは胸を張って、父様に微笑み返しました。
けれど——そのあと。
控え室から一人、トイレに行こうとしたわたくしに、ひとりの男の人が声をかけてきました。
「お嬢さん。少し、いいかな?」
金の髪を撫でつけた、細身の貴族でした。第一王子派のひとり。名前までは覚えていません。
彼はわたくしの前にかがみこみ、小さな笑みを浮かべながら、優しげな声で言いました。
「君のご活躍、評判だよ。ヴァイスハルト家のご息女にして、剣の天才……ふふ、素晴らしい。だがね、明日はルクレウス殿下との決勝戦だ。分かるね?」
「……はい。分かってます」
わたくしが答えると、彼は一層にこやかに笑いました。
「なら話が早い。殿下は王族、ノーザリアの未来を背負うお方だ。君の力を否定する気はないが、“貴族”として、賢明な選択をしてくれることを願っている」
その言葉の意味を、わたくしはすぐに理解しました。
「……負けろってこと?」
彼は何も答えず、ただ立ち上がって、微笑のまま立ち去っていきました。
後に残ったのは、冷たい風と、じんわりと震える指先だけ。
わたくしは——それでも決めていました。
父様が言ってくれた言葉を。
「全力を尽くしてきなさい」
だから、絶対に、手は抜かない。あのルクレウス王子が相手でも、剣を曲げたりしない。
それが、わたくしの誇り。
……ヴァイスハルトの名に懸けて。
◇◆◇
決勝戦の舞台は、朝焼けに染まった闘技場。
観客席はいっぱいで、空には王家の紋章が描かれた旗がなびいていました。
目の前に立つのは、ルクレウス・ノーザリア殿下。
あのときと同じ、あたたかな笑みを浮かべて、わたくしを見ていました。
「来てくれて、ありがとう。エリナ嬢」
「……わたくし、全力で行きますわ」
「うん。僕もだよ」
言葉に偽りはなかった——けれど。
(やっぱり……どこか、分からない)
戦いが始まる直前でさえ、ルクレウスの笑顔の裏にある「本心」が見えなかったのです。
木剣がぶつかる音が、何度も響きました。
何十合も斬り結び、どちらも譲らない戦い。
彼の剣は綺麗で、無駄がなく、速く、力強く……だけど、どこか「薄い」気がしました。
そう、まるで——誰かに「見せる」ための剣みたいな。
わたくしは、ただがむしゃらに、父様の言葉を思い出しながら戦いました。
膝が震えても、腕が痺れても、何度でも立ち上がって——
そして最後、わたくしの木剣が、ルクレウスの胸元に軽く触れました。
「……一本! 勝者、エリナ=ヴァイスハルト!」
歓声と、拍手。
ルクレウスは倒れていませんでした。ただ、微笑んだまま、木剣を鞘に収めて、わたくしに小さく頷きました。
「強いね、君は」
その言葉に、わたくしは——少しだけ、胸が痛みました。
◇◆◇
数日後。
わたくしと父様と母様は、表彰式を終えて馬車で屋敷へ戻る途中でした。
父様が笑って言いました。
「よくやったな、エリナ。あのルクレウス殿下に勝つとは、正直驚いたぞ」
「ふふ……父様の言葉通り、全力を尽くしたもの」
「エリナ、今日は町に着いたら新しい剣を見に行きましょうね」
「うん! それなら、もっと強くなれる剣がいいな!」
その会話が、最後になりました。
突然、馬車が止まりました。
車外から、何人もの足音と、怒号。そして——剣戟の音。
「エリナ、伏せていろ!」
父様の声と共に、母様がわたくしを抱きかかえた瞬間、馬車の扉が破られました。
仮面をつけた男たちが、鋭い刃を手に、怒声を上げながら馬車に突入してきました。
父様が剣を抜いて迎え撃ちました。母様が、わたくしを庇いながら、叫びました。
「逃げなさい……エリナ!!」
……それから、先の記憶があまりありません。
後から聞いた話では、駆け付けた冒険者の皆様が、私を賊から救って下さったのだとか。
気がついたときには、血まみれの馬車の中で、ひとりだけ、泣きながら父様と母様の手を握っていました。
──確証はありませんでした。ですが、わたくしの中で、ひとつの結論だけが、静かに、残っていました。
——わたくしがルクレウス王子に勝ったから。
それが、全ての始まりだったのだと。
──あの時、わたくしが、別の選択をしていたら。
父と母は死なずに済んだのかも知れない。
今でもそんな思いが、どうしても胸の奥に消えず残っているのです。
──────────────────
──沈黙が、降りた。
控え室に満ちていた魔導灯の淡い光が、エリナの横顔をそっと照らしている。
語り終えたばかりの彼女は、膝の上で組んだ両手をきつく握りしめていた。
声の震えは抑えたつもりだったが、話し終えた今、背筋の奥がわずかに痺れるように疼いていた。
数秒。
誰も何も言わなかった。
だがその沈黙は、重苦しいものではない。
静かに、慎重に──彼女の言葉を受け止めるための、“尊重”の沈黙だった。
「……お前とルクレウスの間に何かあるのは、うっすら気付いてはいたけどよ」
一番に口を開いたのは、ミィシャだった。
彼女らしくない、しんと落ち着いた声。
普段なら「うそだろ!」とか「信じられねぇ!」とか、もっと感情の赴くままに言葉を投げるはずなのに、
今は、ただそっと、手をそばに伸ばしていた。
「……エリナ。ひとりで、ずっと……そんなことを抱えてたのかよ」
その手がエリナの背に触れる。あたたかかった。
「……ありがとな、話してくれて」
ミィシャのその言葉に、エリナの瞳がふるりと揺れる。
「こっちこそ、ありがとう、ミィシャ。ライネルにも今度ちゃんとお話しするつもりですわ。」
エリナは泣かなかった。泣きたくはなかった。
それでも、張りつめていたものが少しずつほどけていくのが、自分でも分かった。
「……私、ずっと信じたかったのかも知れません。あのときの勝利が……ちゃんと意味のあるものだったって」
そう呟く彼女に、今度はカリムが静かに頷く。
「……貴殿は誇るべきだ、エリナ・ヴァイスハルト」
声は低く、まっすぐだった。
「その勝利は、誰に強いられたものでもなく。己の矜持に従って掴んだものだ。……それは、剣士として、何よりも尊い」
彼の言葉には、打算も慰めもなかった。
ただ剣を生きる者としての、揺るがぬ敬意だけが宿っていた。
エリナは、ぽつりと笑う。
「……ありがとう、カリムさん。そう言ってもらえると、少しだけ……救われた気がしますわ」
すると──
「……で、本当にそれ、ルクレウスが関与してたって確証、あるのか?」
静かに口を開いたのは、やはり迅だった。
ずっと黙って話を聞いていた彼は、椅子の背にもたれたまま、組んでいた腕を解いてゆっくりと前かがみになる。
その黒曜石のような瞳が、真っ直ぐにエリナを見つめていた。
「……いや、責めるつもりはねぇよ。お前がそう感じてるのも、今まで一人で背負ってきたことも、ちゃんと伝わった」
その言葉に、エリナは一瞬だけまばたきをする。
「でもな、エリナ。俺は……当事者じゃないし、事の全貌も知らねぇ。
お前がルクレウスに勝ったことが原因だったかもしれねぇし、そうじゃないのかもしれねぇ。
あの時、お前の勝利に“感情的にキレた誰か”が、勝手に動いた可能性だってある」
声音に熱はない。ただ淡々と、事実としての可能性を並べていく迅。
だがその眼差しは、どこまでも真剣だった。
「……だから、間違いなくひとつ言える事があるとしたら。お前が今まで『全部自分のせい』って思い込んできたその重荷……全部、お前一人で抱え込む必要はねぇってことだ。エリナは、何も悪くねぇよ。」
その声が、不思議なほど優しく感じた。
「世界ってのはもっと雑で、不条理で、非合理的で、時々くだらねぇくらい人間くせぇんだよ。
なのに全部自分が悪い、なんて言ってたら──お前みたいな、ちゃんと剣を握って立ってる奴が先に壊れちまうだろ。」
静寂が、控え室に落ちる。
エリナは、小さく息を吸った。
何かが、胸の奥で音を立てて崩れた気がした。
「……迅様、それは……優しすぎますわ」
声がかすれる。視界がほんの少し、にじむ。
「優しいっていうか……お前、ちゃんと戦ったんだろ?」
そう言って、迅はふっと笑う。
「お前は……その時、“勝ち”を選んだ。
誰に媚びるでもなく、誇りを選んだ。……それだけで十分だろ。カッコつけじゃなく、俺はそう思ってるぜ。」
気づけば、エリナの目尻には涙が一粒、こぼれていた。
慌てて袖でぬぐいながら、顔を背けようとする。だが——
「……やっぱりずるいですわね、貴方は」
「ん?」
「……そんな顔して、そんな風に言われたら……誰だって、ちょっとは心が動きますわ」
頬が、ほんのりと赤くなる。
ミィシャがこっそりニヤニヤしながらカリムと目を合わせているのに、エリナは気づかなかった。
でも、いい。
胸のどこかがふっと軽くなった気がして、久しぶりに深く息が吸えたから。
エリナは、笑う。静かに、柔らかく。
「……ありがとう、迅様」
それは、過去と、今と、そしてこれからを踏みしめるための——一歩だった。
同時に──
「続いての試合は、第二試合ッ! ルクレウス・ノーザリア選手と、バルドル・ノルダート選手の登場です!」
魔導スピーカーが控え室にアナウンスを響かせる。
ピリ、と空気が変わった。
席を外していた善鬼が、タイミングを見計らって戻ってくる。
「……お、ちょうど始まりますか。いやぁ、さっきの話……全部聞いたらあきませんよね? ちょっとだけ、耳が勝手に聞いてしまったような……」
「……聞いてたんですのね」
「すんません……でも、誰にも言わへんよ。」
ミィシャが苦笑して、ぺちんと善鬼の背中を叩く。
「とにかく! あのバカ王子がどんな戦いを見せるか、ちゃんと見届けねーとな!」
カリムが静かに頷き、迅は観戦モニターの前へと向かう。
そしてエリナもまた、胸の奥に張りついた痛みをそのままに、立ち上がった。
あの男が、今、どんな剣を振るうのか──
目を背けずに見る。それが、今の自分にできること。
風のように、控え室の空気が動いた。
過去は、すでに終わった。
でも。
その続きは、これから始まるのだ。
──エリナの物語の、“第2章”が。
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世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
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冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした
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旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。
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異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
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突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
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「RPGゲームと一緒だ。よし!おいしいご飯を食べるためにお金を貯めるぞ!」
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■注意■
作中に薬や薬草、配合など単語が出てきますが、現代をヒントにわかりやすく書いています。現実世界とは異なります。
現実世界よりも発達していなくて、でも近いものがある…という感じです。ご理解ご了承いただけますと幸いです。
知らない植物を口にしたり触ったりするのは危険です。十分気をつけるようにしてください。
この作品はフィクションです。
☆なろうさんでも掲載しています
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仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
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