どうやら私はバッドエンドに辿りつくようです。

夏目

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第三章 嫌われた王子様と呪われた乞食

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「これより先、クロードディオス様はこちらのお部屋でお待ち下さいませ」

庭から出て、時間をかけて謁見室の近くまで歩いてきた。近衛兵が待っていて、私達に敬礼をしたのちにそんなことを言ってくる。
むっとクロードは眉を顰めた。

「どういう意味だ」

近衛兵は短く応えを返して続きを紡ぐ。

「国王陛下のご沙汰でございます。クロードディオス様はお待ちいただくようにと」
「だが俺はこいつの夫だ。そもそも、妻と国王陛下を二人っきりにさせるわけはいかない。この間まで妊婦だったんだ。体調が急変する可能性もあるだろう。俺が側にいるべきだろう?」
「ご心配なのは分かりますが、お聞き入れ下さい。それにバルカス公爵閣下が付き添われます」
「あの方こそ、男やもめであっただろうに。子を孕んだ女の何を知っていると? それに二人っきりになって妻を誘惑されては困る」
「クロードディオス様」

近衛兵は困ったように眉をくっと目頭に寄せた。

「お聞き入れ下さいませ。そう長くはございません。それに、バルカス公爵閣下はそのような品性下劣なお方ではございません。心根の透き通った無垢なお方です」
「はっ」

鼻で笑ったクロードの横顔はこわばっていた。

「成人が済んだ男に無垢とは笑わせる。……バルカス公爵は中にいるのか。話がしたい」
「なりません。クロードディオス様はこちらにお待ちいただくようにと陛下が仰せです」
「下がれ、偉ぶるな。お前が俺に命令出来る立場か? こうなってもう面倒だ、退け。国王陛下のお言葉が本当かどうかは俺自身が確かめる」
「おやめください!」

近衛兵を押しのけて、クロードが謁見室へと足を進めた。困惑しきった近衛兵は、何度も前に立ってクロードの気を変らせようとしている。流石に気の毒になって、声をかける。

「クロード」

名前を呼ぶと、足が止まった。

「一人で行けるわ」
「駄目だ」
「どうして? 何をそんなに怖がっているの」

クロードは何かを怖がっているように見えた。でも、何が怖いのかは、私には分からなかった。クロードを同伴出来ないのは、確かに何らかの意図を感じて空恐ろしいものがある。
けれど、この王宮内で害されるとは思えなかった。害されるのならば、謁見室に呼ばず、そのまま牢にでも連行すればいいのだから。

「……あの男、今日はかなり様子がおかしい」
「あの男……?」
「国王陛下だ」
「クロードディオス様!」
「黙れ、口を挟む権利を与えたつもりはない。――カルディア、お前は覚えていないか? あの日もこのように傲慢な限りを尽くしていた。気でも狂ったのかとーー」
「ま、待って!」

流石にこの王宮内で国王批判なんてしたらまずいだろう。私でも、わかる。

「大丈夫、分かっているわ。父王様は少し興が乗っていらっしゃるのよね。じゃないと私が『聖塔』で騒動に巻き込まれたからってここに呼んだりしないもの」
「父王……? な、何を言っている。まさか、それも覚えて」
「ど、どういう意味?」
「――だから、会話が噛み合わないところがあったのか。よく聞け……いや、待て。今日の謁見は取り止めにするぞ。分かっていない状態で会うのはまずい」
「待って。どうしたの? 何の話をしているの」

クロードが体を私の方に向ける。怯えたように私を見つめる彼は、唇を何度も噛んで濡らした。

「記憶のことだ。お前は大変な思い間違いをしている。いや、俺が気がつくべきだったな。そうか、あれがあったのはギスラン・ロイスターが死んだあとだったか。失念していた。覚えているものとばかりいた」
「落ち着いて。私には何の話をしているのか分からないわ」
「クロード!」

遠くで、聞き覚えのある声がクロードの名前を呼ぶ。
クロードとリストの父親――宰相だ。私が知る宰相よりも大分、ふくよかな体つきをしている。服のサイズも二つはあがっているのではないだろうか。

「カルディアも、久しぶりだ。何を揉めている? お前達が来ぬから、バルカス公爵が三十分間も謁見室の前で待ちぼうけを食らっておるぞ」
「ご、ごきげんよう。……どういうことですか。バルカス公爵が先にご挨拶されているものと思って、時間を潰していたのですが」

なんで、私達が来ないから、待ちぼうけを食らうことになるんだ。

「陛下は、カルディア、お前とバルカス公爵の両名に一緒にお会いしたいようだ。あの方の悪癖にも困ったものだ」
「……やはり、嫌な予感がする。父上、陛下にとりなしてはくれませんか。後日にして欲しいと」
「馬鹿を言うな。ほら、カルディアさっさと行っておいで。この子は、お前のことになると過保護になりすぎる。この子の言う通りにばかりしてはいけないよ。たまには社交界にも顔を見せなさい。屋敷にばかり閉じこもっていては足が萎えて使い物にならなくなってしまう」

まるで子を叱る親のような言い方に頬を掻く。そうか、この人にとって、私は息子の妻なのか。明らかに身内として見られているのが分かって、視線を逸らしてしまう。なんだか、とても気まずい。
どうしたらとクロードを見つめると、明らかに嫌だと顔が言っていた。

「ディア、行くな」
「クロード、でも今更、行かないと言うわけにもいかないでしょう。ここまで来ているのに」
「……だが、ここでお前と離れるのが恐ろしい。この間も言っただろう。お前は俺の心臓だ。お前が死ねば、俺も死ぬ」
「国王陛下に会うだけよ。死ぬようなことはないでしょう」

クロードの懸念が私には正しく理解できていない。こいつがどうして取り乱しているのかも分からない。私が何を勘違いしているというのだろう。何を、忘れている? 何を覚えていないというのだろう。
謁見室には父王様がいるんじゃないのか?

「約束してくれ、ディア。俺のために謁見室で何があっても、どんなものを見ても、軽はずみな行動を取らないと。衝動的な行動は決してしないと」
「わ、私のこと、動物か何かだと勘違いしていない? 心配しなくても子供のような真似はしないわ」
「……それが本当だといいんだか。レオンの名前を出すなよ。マイクの名前もだ」
「え?」

どういう意味だ?

「カルディア様、こちらへ」

近衛が私の名前を呼ぶ。
宰相がクロードの肩を抱いた。名残惜しそうにクロードが流し目を送って、背中を見せた。
私には、最後まで何が何だか分からなかった。クロードが見せる悲壮感が理解できなかった。
レオン兄様とマイク兄様の名前を出すな? 
父王様の前で、ということだろうか。でもさっぱり意味が分からない。どうして名前を出してはいけないんだ。

――そういえば、王宮に来たというのに、レオン兄様にも、マイク兄様にも会えていない。あとでご挨拶に行かなくては。フィリップ兄様も、王宮にいらっしゃるといいけれど。

近衛に促されて、謁見室の扉の前まで歩いていく。やっぱり、どう考えても、クロードの言っていたことが分からない。擦り合わせが出来なかったことが、今更恐ろしくなる。
クロードのあの焦り様をきちんと汲み取って、今日は帰った方がよかったのではないだろうか。
けれど……。
頭の中で競うように矛盾する感情が争う。不安と楽観がくるくると入れ替わり、私のなかで奇妙なダンスをしているようだった。

この世界は、私の知る世界と同じようで、その実、決定的に違う部分が多い。もしかしたら、ユリウスがいて、ダンがいなくなっているように異質なことが起こっているのかもしれない。国王陛下が父王様ではない、とか?
けれど、宰相はふくよかになってはいたが、根本的な部分が変わっているようには見えなかった。おそらく、地位もそのままだろう。父王様の弟だから、宰相を任されているのだし、父王様が国王陛下であることは疑いようがないと思うのだけど……。
いや、でもレオン兄様が父王様の跡を継いだとすれば、宰相はそのままの地位にいるかもしれない。けれど、クロードはレオン兄様とマイク兄様の話はするなと言った。
本人にむかって、兄様の話をするなと言うだろうか。
他の可能性を考えて、馬鹿げた妄想のようなものを絞り出す。
たとえば、私に、もう一人兄がいるのだ。
レオン兄様、マイク兄様、フィリップ兄様、サガル兄様。そして、もう一人のその人。私の本当の兄。腹違いではなく、母から生まれた血を分けた兄妹。
父王様は愛人に産ませた長子を王座に座らせたくなった。女であった私にさえ、王になれるように狂った法を作ろうとしていたと聞いたことがある。もし、本当に兄がいたら、その白昼夢のような幻が現になっているかもしれない。もし、この世界がそうだとしたら?
謁見室には、見知らぬ兄がいて、私を出迎えるのだ。カルディアと名前を呼んで、こちらへおいでと手招く。

――ありえないか。
自分の妄想を笑い飛ばす。そんなこと、あるはずがない。


しばらくして、謁見室の前にやっと辿り着いた。一旦、馬鹿げた妄想は全部頭の中から消してしまう。
その男は、馬鹿みたいに扉の前に立ち尽くしていた。真っ白なローブには銀のラインがはいっている。足をすっぽり隠すようなそれには、太もものあたりからくるぶしまでしなだれかかる藤の花が描かれていた。
背中を見せていた男は、私の足音に今気が付いたというようにくるりと体を回す。

ーー上げる声さえ見当たらなかった。

オクタヴィスのあの歪な見た目に驚いたが、彼の姿の方が異様だった。
なにせ彼の額には聖痕があったのだ。
初めて見た。
聖書には、悪しきものを祓うもの。聖なる使徒。朝を迎えることを助ける美しきものと書かれている。国の宝、ひいては世界の宝石とも。
とても珍しい証だし、神聖なものだ。
天使も同じように額には聖痕があるとする宗教画もあるくらいだ。昔いたという善なる王が、磔刑に処されたときに受けた苦難の印。頭に釘を打ちつけれた傷跡。額を横断する苦痛の証。
王は惨い処刑を受けてもなお女神の寵愛を受けて、傷はたちどころに治り、老いもしなかったという。磔刑をとかれた王は慈悲深く、自分を磔にした者を家臣として召し抱えた。敵対した者にも情けをかける善良な心を持った者と今でも厚い信仰の対象だ。
イーストン領にいた理由が、よくわかった。聖痕を額に刻まれている人間は教会で保護され、聖人として扱われるからだ。
それなのに、クロード! あの男ときたら。確かに聖職者ではあるが、聖人と聖職者じゃあ、全然違うじゃないか。
額を見つめ過ぎていたのだろう。彼は手をあてて、じろりと私を見下ろした。

「これが気になるか」
「――あ」

思ったよりも労るような優しい声だった。

「聖痕は珍しいものだからな。じろじろと見られるのは慣れている。少し、気恥ずかしいが」
「……ご、ごめんなさい」
「構わない。慣れていると言っただろう? だが、そろそろ、国王陛下へ挨拶に向かわなくては。……どうか、手を」

――な、なんなんだ。
手を差し出された。戸惑いながら、手を重ねる。
ふと柔らかく、男が笑った。金色の髪がそれに合わせてかすかに揺れる。
靴を響かせるたび、違和感が膨らんでいく。この男が、フィガロ・バルカス公爵。サガルが望んでいたバルカス家当主の座を奪い取った男。叔父様が娼婦に産ませた子供。
本当に叔父様に似ている。そっくりだし、どんな人でも、二人を見比べれば親子だろうと思うだろう。
――清廉な、男だ。
聖職者という言葉はこれほど似合う男もいない。無欲そうで、いるだけで周囲が水のように澄んでいく。
愛人の子という肩書があるのに。ふと醜悪な感情を抱いていた自分に気が付き、頬が熱くなる。愛人の子なのだから、爛れた人間に決まっている。野卑で、下劣な品のない男なのだろうと勝手に思っていた。だって、愛人の子はそういうものだから。

――私が、そうだから。

けれど、この男は、まるで穢れをしらないように純朴だった。
娼婦の子供なのにと、意味が分からない怒りがわきあがってくる。どうして、私とは全然違うのだろう。
ちらりとフィガロ・バルカスに視線を向ける。彼は少しだけ安心したように笑った。その穏やかな顔が、どうしてか私の心の柔らかいところに爪を立てた。どうして、私を見て笑うんだ。愛人の子の癖に。サガルから、居場所を取った癖に。
どうして、私の手をひいたりするんだ。
私の母は、父王様の愛人だった。王妃は妹で、母は妹から夫を盗んだふしだらな女だった。
愛人の子なのに、王女の地位があるのは父王様たっての願いであり、王妃の恩情によるものだと何度も聞かされていた。侍女達の口さがない噂話を耳にしたこともある。褥であがった嬌声の真似事をする侍女もいた。いつか私もそういう風に、男を誑かすのだと。
頭のてっぺんが熱い。怒りだが、憤りだか分からない燃えるような感情がぐるぐると胸のなかで燻っている。

謁見室の扉が開く。頭を下げ、入室する。部屋の真ん中まで頭を下げたまま進む。王の許しがあるまで顔を上げてはいけない。その決まりが、今の私にはありがたかった。だって、目が潤んで、泣き出しそうなのがばれてしまうから。



謁見室の中に入っていく。部屋の真ん中付近で止まり、王が声をかけるまで顔を上げないのが決まりだ。隣で歩幅を合わせるようにして、フィガロ・バルカスが同じ速度で歩いているのが分かる。
彼が止まったのと同じぐらいで足を止めると、しんと室内が静まり返った。まるで、人がいないみたいな静寂に、緊張感が高まっていく。
声がかかるまで、気が遠くなるように長く感じた。
面をあげよと、凛とした声が響いた。若く、健康的な声だった。
一拍ののち、顔をあげる。久しぶりに父王様にご挨拶をする。考えていた口上を、口の端に乗せようとして、視線を合わせる。

「――え?」

玉座に腰掛けていたのは、フィリップ兄様だった。

「よく来たな、ディア」

ディア、と甘く名前を呼ばれる。
鳥肌が立って、背筋にぴりぴりと痺れのような疼きが走る。
王座にいるのはフィリップ兄様だ。
父王様がいるべき場所に兄様がいる。
王冠を、兄様が被っている。煌びやかなマント。贅沢を凝らしたような服を着て、悠然と腰掛けていた。

「さあ、もっと近づいて。おれにその顔を見せて?」

父王様じゃない。王座にはフィリップ兄様がいる。

「フィリップ兄様?」

名前を呼ぶと、不思議そうに彼は目を丸くして、ふにゃりと破顔した。


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