思い出のチョコレートエッグ

ライヒェル

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夕焼けの海

きっかけは突然やってくる

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「わぁー、二階建てだよ、これ!」
美妃がオランダ国鉄NSの快速電車を前に、やや興奮気味に騒いでいる。
無事にスーツケースを受け取って入国審査も終わり、スキポール空港に連結している地下の駅プラットフォームにたどり着いた。
昔の記憶がないせいか、この近代的で広々としたスキポール空港にも感心したが、なんと言ってもびっくりしたのは、長身のオランダ人達だ。
とにかく背か高い。国際空港だから、オランダ人以外の国の人達もたくさんいるが、入国審査のスタッフや警備員、空港内のカフェやレストランで働く人達を見れば、明らかに平均身長が半端なく高いことがわかる。確か、世界で一番平均身長が高い国ではなかっただろうか。
「ちょっとまってよー、えっと1号車、2号車ってあるね。私達は2号車よね。カノン、2階行こっ」
「えー、スーツケース重いのに階段~?」
4歳しか違わないのに、このテンションの違いは何なんだろう?いや、年齢でなくて性格の違いということにしておこう。
黄色い車体のNS国鉄に乗り込んだら、中は青系の色で落ち着いた雰囲気だ。ラッシュアワーの少し前だからか、あまり混んでいない。
さっさと2階に上がり、向かい合わせの席を確保していて手を振る美妃のほうへゴロゴロとスーツケースを押して行く。
「なんだか広々としてる?窓も大きいような気がする」
座席に座ってみると、本当に広々としているのに驚いた。
「ミキ、ここってほんとに2号車?間違ってない?」
「間違ってない!ほら、ガラスの仕切りの向こうが1号車って書いてあるよ」
「ほんとだー」
「やっぱり、オランダ人って体が大きいから、すべてがゆったり作られているんじゃないの?」
「一理あるね」
オランダ人は背が高いが、だからといって太めの人が多いわけでなく、むしろスリムな人が多いようだ。
隣のボックスにいる女性も、モデル並みの身長だ。スリムジーンスの長い脚を優雅に組んで、携帯でおしゃべり中。時折長いブロンドを片手でかきあげながら大笑いしている様は豪快この上ない。
私達も160cm前後、日本の丁度平均くらいで低いほうではないが、この国にいるとかなり小柄な気分になる。

やがて快速電車はおばぁちゃんの住む街へ向けて出発した。
オランダはとても近代化していて、交通手段も駅もかなりモダンだ。駅で電車の乗車券を買うか迷ったが、ガイドブックにもあった無記名のチャージ式非接触ICカードだとオランダ国内の乗り物の殆どに乗れるので、それぞれ50ユーロ分をチャージしたICカード「OV-chipkaart」を購入した。しかも、カウンターでなく、乗車券販売機でこのICカードも買えるのだから便利なものだ。プラットフォームにあるマシンで、チェックイン、チェックアウトをするらしい。
車窓から見える景色も、あっという間に草原に変わった。
「これぞオランダって感じだね」
だだっ広い草原が広がり、羊の集団、牛の集団が点々としている。草原の中の細い道をものすごいスピードで自転車を漕ぐ人達も見える。さすが競輪とスピードスケートの国。脚力は半端なさそう。
「あっ、馬もいる。ほら、運河に鴨がたっくさん。癒される~」
「色彩がいいよね、煉瓦の建物が疲れ目に優しいって感じ」
「やだー、カノンって言う事が老けすぎ」
「だって飛行機で目が乾燥して、なんか少し痛い気がするんだから仕方ないじゃない」
ムッとして言い訳をする。でも、それだけじゃないと思う。彼に失恋してから、連日泣いた事もあるし、夜に眠れなくて睡眠不足気味だったのも結構影響しているはずだ。
「時差ぼけがいい感じだから、今晩はぐっすり眠れそう。おばぁちゃんに電話入れとこう」
私はパパから預かって来た携帯を取り出した。パパは仕事でヨーロッパに行くことがたまにあり、こちらのプリペイ式の携帯を持っていて、その一つを今回借りて来た。
登録されているおばぁちゃん宅の番号を探してダイヤルする。呼び出し音の後、すぐにおばぁちゃんが出た。
「あっ、おばぁちゃん、カノンだよ。うん、ミキも私も元気!今、もう電車の中だよ。駅についたらタクシーで行くね!」
おばぁちゃんは私達の為に張り切って夕ご飯を作っている最中だった。
機内でも結構あれこれ食べていたが、思ったよりお腹が空いてきた。日本はもう夜中。
「ミキ、忘れないうちにパパとママにメール打っといて」
やっぱり目がシバシバするので、携帯を美妃に渡して、外の景色に目をやった。
車窓を流れゆく田舎の風景。遠くに見えるのは昔ながらの風車小屋。風車は回転していない。運河沿いに連立する、白い巨大な発電用の近代的風車はくるくると回っている。なんだろう、なぜかナウシカを思い出した。
壮大に広がる空に交差している飛行機雲が、少し傾いて来ている太陽に反射してオレンジ色に輝いている。急に心に生まれて来た不思議な開放感。
私が悩んで落ち込んでいたことって、長い人生の中のほんの一瞬の出来事だったんじゃないか。
ふとそんなことを考えて、同時にまだチリ行きの機内に乗っているだろう彼のことを想った。貴方は今、何を考えているんだろう。

40分かかっただろうか、思ったよりあっという間にハーグ中央駅へ到着した。
工事中らしくやたらドリルなどの騒音がすごいのと、工事で閉鎖されたところが仕切られたりと迷路みたいになっていて、ラッシュの時間になったのか帰宅する人達で駅が混雑している。
「あっ、スタバある」
美妃がスターバックスを見つけて指を指す。そしたらそのスタバの近くに、タクシー乗り場の方向を示すサインが見えた。
駅になだれ込む帰宅ラッシュの人達と逆行する感じで進み、無事にタクシー乗り場に到着。
すぐにタクシーに乗り込み、運転手に行き先を告げた。
こちらの人は英語がほぼ100%通じるから助かる。タクシーの運転手のおじさんはトルコ系移民の方だったようだが、英語がペラペラだ。
オランダ人は陽気な人が多いとは聞くが、タクシーの運転手も同様、私達がどこから来たのか、バケーションに来たのかとかやたら話しかけて来て、「コンニチハ」「アリガト」などの日本語を披露してくれた。
「おばぁちゃんの家の記憶ないねー。写真で見ては来たけど。どの家も同じに見えて来る」
「確かに……煉瓦作りの家って素敵だけど、全部同じに見えて覚えにくいかも……」
こんなんじゃすぐ迷子になりそうだ。目印になるものがあまりなくて、どこを見ても同じ家に見えてくる。
やがて、教会の近くを曲がって住宅街に入り、運転手さんが番号を確かめながらのろのろと進む。ようやく、おばぁちゃんの家の番号、22番の前に来た。
チップの10%を上乗せして20ユーロを払ってレシートを貰い、タクシーから降りると、運転手さんがトランクをあけて私達の荷物を下ろしてくれた。
オランダ語でありがとう、と言うと、運転手さんは両手を合わせてお辞儀しつつ「サヨナラ」。

「カノン!ミキ~!よく来たね!!」
おばぁちゃんがタクシーの音に気がついたのか、手を振りながら満面の笑顔で家から出て来た。
「おばぁちゃーん!来ちゃったよ~」
「久しぶり~!相変わらず元気そうで良かった~!」
3人で抱き合って喜ぶ。おばぁちゃんは小柄で御年70歳だが、足腰が丈夫なのが自慢の健康体そのものだ。
エプロン姿のおばぁちゃんの後をついて家に入った。
「うっわぁ、いい匂いする!ご飯はなぁに?」
「あらあら、カノンは相変わらず食いしん坊だねぇ」
おばぁちゃんは笑いながらオーブンを指差した。
「ラザニアだよ。もう出来ているから、サラダを作ったらテーブルに並べて食べましょう」
「ああっ、美味しそう!」
二人でオーブンを覗き込む。ラザニアのチーズとホワイトソースが、こんがりと焼けて、はじっこのあたりはぐつぐつと煮えている。
私達は荷物は玄関に起きっぱなしのまま、早速手を洗うとおばぁちゃんを手伝い始めた。
三人で準備をすると早い。おばぁちゃんのバルサミコ酢入り特製ドレッシングをかけた山盛りのグリーンサラダ、熱々のラザニアが、美妃がセッティングしたテーブルに並ぶ。炭酸入りのミネラルウォーターをグラスに注いでいると、カラフルな花が活けてある壷をおばぁちゃんがソファーのほうのコーヒーテーブルへ移動させ、ダイニングテーブルの大小様々な大きさのキャンドル3つにマッチで火をつける。外は少し薄暗くなって来て、空には群青色とオレンジ色が混ざり始め、間接照明の室内とキャンドルの揺れる灯りが心地いい。
「17年ぶりのオランダにかんぱーい!」
美妃が声を張り上げ、おばぁちゃんは大笑いしながらグラスを持ち上げた。
熱々でとろけるようなラザニアをお腹で満たしながら、楽しく騒々しい夕食タイムはあっという間に過ぎ、私と美妃はシャワーを浴びて夜10時にはベッドへ倒れ込んだ。おばぁちゃんはこの時間、1階のリビングのソファーでハーブティを飲みながらしばらく読書して寝るのが日課だそうだ。本当ならもっとおしゃべりしたかったが、さすがに時差ぼけと満腹のお腹で強力な睡魔が襲って来たので仕方がない。まだ1週間あるんだから。そう自分に言い聞かせ、明日は何をしようか考えようと思っているうちにもう眠りに落ちていた。


翌朝、小鳥のさえずりが聞こえているなぁと思ったら、ゴーンゴーンという教会の鐘の音で目が覚めた。
携帯で時間を見ようと身を起こしたが、時間がまだ日本の設定になっていたので、オランダに切り替えてみる。丁度朝の8時だ。
隣を見ると、美妃の姿がない。
「早っ!」
見ればもう、スーツケースは開いていて、パジャマが畳んであるのを見ると、もう起きているのは間違いないようだ。
昨晩シャワーしたから今朝はもういいや、と思い、急いでG-Starのミディアムブルーのストレートジーンズを穿き、ホワイトカラーのオーガンジーシフォンチュニックを羽織り、バスルームへ。歯を磨いて顔を洗って……化粧は後回しに決めた。髪を後ろでぐるぐる巻いてピンで留めお団子にすると、化粧ポーチをベッドに投げて駆け足で1階へ下りた。

「おはよー!ってあれ?」
キッチンも、リビングにも誰もいない。おばぁちゃんはまだ寝てるのかな?
おかしいなと思いつつ、庭に目をやると、外のテーブルはもうテーブルセッティングされている。お皿にカトラリー、グラスやコーヒーカップも3人分並べてあるが、誰もいない。
「全部ミキがやったのかな?あの子、思ったより気が利くのかも」
とりあえず庭のサンダルをひっかけて庭へ出た。おばぁちゃんはガーデニングが好きで、お庭はとってもかわいい作りになっている。それほど広くないけれど、いろんな高さの木が植えてあり、根元にも色とりどりの花が咲いて、どちらかというと自然な花畑っぽくアレンジされていて、いかにも「デザインしました!」という人工的な感じじゃない。優雅に舞う蝶と花を眺めていると、庭から道路に面した通りから話し声が聞こえて来て、すぐにおばぁちゃんと美妃がドアを開けて庭に入って来た。
「おはよー!どこにいってたの?」
「おや、起きてたんだね、よく寝てるようだったから起こさなかったんだよ」
おばぁちゃんが手を振りながら言う。
「おっはよー!ベーカリーに焼きたてのパンを買いに行ってきたんだよーん」
美妃が嬉しそうに満面の笑顔で、紙袋の中を私に見せる。美味しそうなクロワッサンやロールがいくつも入っていて、ほんわりとしたバターや焼きたての匂いがした。
「うわぁー!美味しそうっ!いい匂いっ!私も行きたかった~!!!」
焼きたてのパンが並ぶベーカリーを想像して身悶えすると、おばぁちゃんが大笑いした。
「歩いて3分なんだからいつだって行けるよ。こっちのベーカリーは朝早くから開いているから助かるねぇ」
「食べよ、食べよっ!カノン、バター持って来て!後、チーズの盛り合わせとジュースも」
「はいはい、承知しましたっ」
美妃は焼きたてパンをテーブルの籠にどばっと移しながら鼻歌を歌っている。
おばぁちゃんと一緒に冷蔵庫からあれこれ持って来て、清々しい朝の空気と小鳥のさえずりの中、朝食の準備をする。
「カノン、ミキはコーヒーを飲むの?エスプレッソ?」
「私はカプチーノ!」
「私も~!シナモンかけたい」
おばぁちゃん宅にはエスプレッソマシンがある。こちらの人は結構な確率でマイエスプレッソマシンを持っているようだ。
エスプレッソにミルクフォーマーで泡立てたミルクを注いでカプチーノがふたつ、出来上がった。
「おばぁちゃんは?」
「わたしは食後に飲むんだよ。まずは食前の薬を飲んでおかないと」
おばぁちゃんは医者から処方されているという薬を棚から取り出している。そうこうしているうちに、朝食の準備が出来上がった。
何種類ものチーズが並ぶのもこちらならではだ。
「いっただきまーす!」
きちんといただきますと手を合わせてから、パンの籠へ手を伸ばす。
クロワッサンをナイフで切って食べながら、美妃が言う。
「絶対スーパーに行きたい」
「なんで」
私はサンドライトマト入りのロールブレッドを半分に割り、バターを塗りながら聞いた。
「面白いのいっぱいあるはずでしょ。食べれるだけ食べて、買えるだけ買いたい」
「うぁー、発想が幼稚」
誰かの真似をして肩をすくめて言うと、美妃がムッとして私を睨みつけた。
「せっかくの有給休暇だもんね、毎日ぶっ倒れるまで楽しんでやるんだから。今日は何しよっかな~」
美妃はチーズの盛り合わせプレートを真剣に覗き込みながらそうつぶやく。
「今日は夕方から気温が上がる予報だから、夕方は海に連れて行ってあげるわよ」
新聞から目を離しておばぁちゃんが言う。
「気温が上がるって何度くらい?」
「そうだね、25度くらいかねぇ。風があまりなければ、夕方には丁度砂浜も温まって散歩にもってこいだよ」
「行きたい、行きたいっ!じゃぁサンダル出しとかなきゃ」
「じゃぁ夕ご飯はビーチのカフェでどう?私がご馳走する!」
「やったー!おねえさま、有り難う!あっ、この山羊のチーズ、濃厚でうまうま~」
「どれ?私も食べるっ」
朝から二人してテンションが上がって来た。

「おやまぁ、二人ともすごく食べたね。チーズの盛り合わせ、全部食べちゃったじゃないの」
おばぁちゃんが驚いて空になったお皿を眺める。
調子に乗って散々チーズを食べてしまったが、よく考えたら高カロリー食品だった……と一瞬後悔したが、いやいや発酵食品は美容にいいからこれはOKだと自分に言い聞かせる。
「おばぁちゃん、コーヒーつくってきてあげる」
気の効く美妃がキッチンへ向かおうと立ち上がったので、
「私のカプチーノのおかわりもよろしく~」とマグカップを差し出すと、
「ッ……人使い荒いっ」
美妃が軽く舌打ちしてブツブツ言いながらカップを受け取る。
「後で美味しいものおごるから」
と言うと、しめた、という顔でニッと笑っていた。
「貴女達は本当に仲良し姉妹だねぇ」
おばぁちゃんがくすくすと笑いながら言う。
「おじぃちゃんが生きていたら、二人を連れ歩いて自慢していただろうねぇ。これがワシの自慢の孫娘だって」
「当時はあまり言葉も通じなかったからね、それが私が残念に思っていることなの」
「そうだねぇ……でも、明るい貴女達が見舞いに来た病室で大騒ぎして、おじぃちゃんがとっても喜んでいたのは本当よ。ところでカノン、貴女の髪はカラーリングしているの?」
おばぁちゃんは私のこめかみあたりに手を伸ばして聞いた。
「ううん、カラーリングはしてないよ。部分的に少し色が違うのは、あいかわらず変わらないみたい」
「そうなのね、とってもいい色合いよ。お日様があたると特にきれいだねぇ」
おばぁちゃんがニコニコして言う。
私の髪は殆ど黒いのだが、フロントと両サイドのこめかみあたりは赤身を帯びて明るい色が混じっていて、よく、ハイライトを入れているのかと聞かれる。妹の美妃はもともと少し色素が薄い焦げ茶色の髪なのだが、カラーリングして少し明るめのオークブラウン色になっている。
私達は父親がハーフベルギー人、母が日本人なので、クォーター姉妹というわけだが、妹のほうがどちらかというと父に似て、メイクなどもしっかりすると日本人離れした顔立ちになる。私は殆ど純日本人というアジアっぽい顔立ちだが、この髪の色合いと、若干色素の薄い目もとからやっぱりおじぃちゃんの血が流れているなぁという感じだ。
叔母家族はアメリカに住んでおり、叔母はアメリカ人と結婚しているので、従兄弟達は日本の血が四分の一。どちらかというと日本人ぽさは薄れてしまった感じだ。
「あんまり身長が延びなかったのは、やっぱりベルギーだからねぇ。おじぃちゃんがオランダ人だったら、貴女達も身長が伸びただろうけど」
「パパも別に高いほうじゃないしね。でも私達、日本じゃ快適サイズよ。それに、こっちに来たら、電車の2号車シートも、キングサイズみたいに感じるし、ある意味小柄で特しちゃってる気がする」
「まぁそういうこともあるけどねぇ。ここじゃぁ棚やら何でも高いところにあるから、わたしは脚立なしじゃ生きて行けない。いろいろ面倒なこともあるんだよ」
「そっかぁ。おばぁちゃんもこっちじゃ小柄だしねぇ」
なんて話をしていると、美妃がおばぁちゃんのコーヒーと、私のカプチーノを持って戻って来た。
「おばぁちゃん、ヨーグルト食べていい?」
「おや、ミキはまだお腹が空いているのねぇ」
おばぁちゃんがびっくりして振り返る。
「だって、なんか美味しそうなヨーグルトが冷蔵庫にあった」
「えー、私も見たい。っていうか、食べたい」
私も立ち上がり、カプチーノのマグカップを持ったまま美妃と一緒にキッチンへ戻った。
冷蔵庫に、チェリーヨーグルト、バニラヨーグルト、ブルーベリーヨーグルト……とスモールサイズのパックが何種類もあった。
「うわー、目移りする!」
「ほんとだ。あっ、チョコチップヨーグルトだって。美味しいのかな」
「私はマンゴーヨーグルトにしよっと」
それぞれヨーグルトを選び、庭のほうへ戻った。
朝からたっぷりの乳製品を摂った。体重管理のほうは旅行中は忘れておく事にする。
おばぁちゃんはお友達から電話がかかってきたので、室内に戻ってなんだかメモを片手にオランダ語で話している。
美妃と私は、今日の予定を相談した。
夕方、車でおばぁちゃんとビーチに行くまでの時間をどう過ごすかだ。殆ど時差ぼけを感じないので、朝から出歩くしかない。なんといっても限られた時間しか滞在しないのだから、やれることは全部やっておきたい。
「買い物とかは滞在の後半に回そう。早速市内に出る?」
「そうだね、せっかくOVなんとかっていうカードもあるし、バスとかトラム乗って市内観光?アムステルダムはどうする?」
「アムステルダムは片道1時間以上かかるから、今日は無理じゃない?」
「そうだね、じゃぁハーグ市内行って、観光っぽいことしてみようか」
「賛成!」
こういう時、姉妹だと便利だ。興味の対象が殆ど同じなので、一緒に行動しやすい。これが男兄弟だったら、意見が合わなくて面倒なことだろう。
「カメラ持ってく?」
「いいよー、荷物になるし。携帯で十分じゃない?」
「ランチは市内で食べて、3時くらいにお家に帰ってこようか」
「そうしよっ。さっ、片付けて出発準備!」
二人で朝食の片付けを始めると、電話中のおばぁちゃんがにこにこしながら親指を立てて「GOOD」サインを送って来る。
テーブルクロスに落ちていたパン屑をはたいてから室内へ戻ると、電話が終ったおばぁちゃんが美妃と話している。
「市内に行くんだったら、わざわざ一度こちらに戻ってこなくていいわよ、3時くらいに駅の近くでピックアップしてあげるから、そのままビーチへ行きましょう」
「ありがとー!じゃぁ後で市内から電話するね」
早速2階へ上がり、出かける準備をする。一応、日差しが強そうなので、日焼けクリームを塗り、きちんとメイクをしておく。リップは面倒なので、ペンシルで軽く描いておく。どうせいろいろ食べ歩いて取れちゃうだろうから、テカテカのグロスなんか塗っても意味はない。
「カノン、見て」
呼ばれて振り返ると、美妃がでっかいカメムシ色のサングラスをかけていて思わず吹いた。
「っっ、でかすぎっ!顔の半分見えないじゃない、それ」
「おかしいかなぁ……」
少し自信なさそうな顔をして、美妃がサングラスをヘアバンドのように頭の上にあげた。
「ま、そうすればそれなりにおしゃれな感じするかも……でも街の中や室内でそれをかけるのはコワい気がする」
一応、励ますすもりでそう言ってみる。
「ビーチに行くっていったらやっぱりサングラスでしょ。カノン、持って来てないの?」
「あっ、すっかり忘れてたかも……」
「紫外線、眼にもよくないし、将来、白内障?緑内障?かなんかになるリスクがどうとかって聞いたよ~」
「うーん。滞在中に買うことにする」
買い物リストを取り出して、サングラス、と書き込む。
美妃はジーンズを脱ぎ捨て、ホワイトのコットンパンツに履き替えて、サンダルを選び始めた。
私もサンダルにしようか迷ったが、結局歩き易いスニーカーを選んだ。
それからまもなくして、私達はおばぁちゃん宅を出て、バス停へと向かったのだった。


時間通りにやってきたバスに乗り、私達はハーグ中央駅に向かっていた。大きな木が生い茂る交差点の赤信号で停車していると、パカッパカッとリズミカルな音が聞こえて来た。なんだろうと視線を動かすと、向いのほうの自転車レーンをこちらへ向かって進む馬が3頭。乗馬服のお姉さん達がムチを片手に手綱を握って乗っている。
「あれっていわゆるお嬢様だよね」
美妃が少し腰を浮かして窓の外をのぞく。確かに気品のありそうな女性達だが、多分年齢は20歳前後と若いように見える。
「乗馬クラブってのもあるんじゃないの?近くで見ると結構な大きさだね、馬」
「うん、確かに大きい。私には無理だな」
「顔はかわいいんだけどねー」
通り過ぎるお姉さん方と馬をさりげなく携帯で写真を撮っていると、バスが発車した。
しばらくして中央駅に到着。バス乗り場にあった路線図を眺めるが、トラムとバスの路線が複雑に入り組んでいて、一体どの路線がどこに行くのかわかりづらい。そもそも、どこに行きたいのかをはっきり決めていないんだから尚更だ。

「道に迷ってる?」
後ろから英語で声をかけられて振り返ると、いかにもオランダ!という感じのセキュリティのお兄さんがコーヒー片手に爽やかな笑顔で立っていた。
「えっと……」
なんと言おうか一瞬口ごもっていると、美妃が代わりに答えた。
「どこに行こうか迷っているんです。はじめて市内に来たので」
おっ、しっかり英語喋っているじゃないの!感心して美妃を見ていると、セキュリティのお兄さんが路線図に手を伸ばし、エリアの一部を指差した。
「このへんに行ってみたらいい。ここから歩いて5、6分だよ。観光客が必ず行く、国会議事堂や騎士の館があるし、近代的なビルや、開発中の建造物もある。デパートやモールもあって、このあたりはバスもトラムも沢山走っているから、ここを拠点に移動すると楽だよ」
「国会議事堂!ビネンホフのことかな?マウリッツハウス美術館も近い?」
フェルメールの最高傑作「真珠の耳飾りの少女」を思い出して聞くと、お兄さんが「そうそう!」と頷いた。
「ついこの間まで続いていた改装が終ったマウリッツハウス美術館も、ビネンホフの隣りにある。近くにはカフェやレストランの広場もあるよ」
「ありがとう!」
お兄さんに二人そろってお礼を言うと、「どういたしまして」と爽やかな笑顔で手を上げて、駅構内のほうへ去って行った。
「親切だよねー!オランダ人ってすごく社交的なのかな」
「気のせいか、みんな楽しそうだよね」
周りを見渡すと、結構いろんな人がニコニコとおしゃべりしながら歩いている。弾き語りのギターのおじさんもかなり感情移入してドラマチックに歌い上げていて、道行く人がそのおじさんが置いた帽子の中に小銭をいれている。

私達はセキュリティのお兄さんに教えてもらった通りを歩き、ビネンホフのほうへ向かった。
お兄さんのアドバイスは的確だったようで、この周辺はとても賑やかで、クラシックな建築物とモダンなデザインの建物が入り交じったとても面白い場所だった。観光バスが何台も停まっているのも見えたが、集団で案内されているようでビネンホフ周辺は混雑はしているようには見えなかった。
所々煉瓦がはずれて穴が開いている道を気をつけて歩く。途中、写真を撮ったり、お店を覗いたり路地裏に入ったりしているとあっという間に時間が過ぎて、午後1時になってしまった。
私達はまだビネンホフの周辺のショッピングモールにいて、今日はもうここから他のエリアに行く余裕はなさそうだ。
「結構日差しが強いね。どっか日陰か室内で食べよう。帽子持って来るんだったなぁ」
「私ものどが乾いた!でも、カフェもレストランもたくさんあって迷うよね~。デパート内のフードコートはやっぱりナシだよね」
「何が食べたい?」
「和食以外なら何でもって感じ。カノンは?」
「そうだなぁ……甘いものもあるところに行きたい。観光客が少なめのローカルっぽいところ。この中央から外れたところ歩いてみない?」
「オッケー」
トラムの線路沿いに気の赴くままに歩いて行くと、教会らしき建物に隣接しているカフェの外にテーブルが出ていて、ランチを食べている人がいる。
結構美味しそうに見えるが、歩いてすぐに見つけたところにすぐ入るのもなんだか惜しい気がして、もう少し歩いてみる。トラムの路線に沿って歩いているので、迷ったとしても「中央駅行き」トラムに乗ればいいから心配することはない。

少し観光客らしい人が減ったなと思っていたら、突如結構大きな和食の店が見えて来た。
「へぇ、やっぱりお寿司、あるんだわ」
「結構混んでるみたい。お昼からお寿司食べるんだ」
その盛況ぶりに感心しつつお寿司屋を通り過ぎると、Bioの有機食品ショップが見えてきた。
「Bioのお店って結構多いみたいよね。カフェとかレストランもBioの食材使っているところ、結構ありそう」
「普通のスーパーも行きたいけど、Bioのスーパーも要チェックだわ。あっ、カノン、ほら隣はカフェだよ。メニューがあるから見よう!」
ちょうどその有機食品店の隣がカフェになっていたので、張り出してあるメニューを見てみる。
お店の名前は「De Bakkerswinkel」といって、ベーカリーカフェのようだ。理解出来るような出来ないようなオランダ語のメニューを眺めてみると、結構ランチメニューも充実しているようだし、入り口から見えるカウンターにずらりと並べられたケーキ類がものすごく美味しそうだ。
「よしっ、ここにしよう」
ちりん、とベルの音を立てて私達は中に入った。
「ハロ~!」
英語のハローとは微妙に違うオランダ語のハローが聞こえて来た。私達の顔を見るとすぐに英語でお姉さんが声をかけて来てくれた。
好きな席に座ってよいというので、中庭のそばのコーナー席に座る。ちゃっかり英語のメニューを受け取りながら、飲み物の注文をした。
ここにはアフタヌーンティもあるようだが、今日はそれほどゆっくりするつもりはないので、それぞれ個別に注文することにする。
美妃は、有機ハムとルッコラのトリュフマヨネーズサンドイッチ。私はスライスパンとバター付の本日のトマトスープを注文。
「大食いのカノンがスープなんかで足りるの?ついてくるパンなんて薄切り1枚くらいじゃない?」
カフェラテを飲みながら美妃が聞く。
「足りる分けないでしょ」
「え?」
「でも、あのでっかいケーキを食べるつもりだから」
私は視線を少し遠いカウンターへ向けた。意識はもうスープの先、ケーキだ。何種類ものケーキが並んでいる。
「あははっ、どっちがメインなんだって感じね。もちろん、私も食べるつもりだから人の事言えないけど」
「両方を半分こしようか」
「そうしよ、そうしよ」
美妃がカフェラテについてきた小さなクッキーをぽいっと口へ投げ入れる。
私も自分のカフェラテに口を付けた。濃厚なミルクの味が心地よく体に染みていく。カフェイン効果もあって頭も冴えて来たきがする。
やがてお姉さんがニコニコしながらサンドイッチとスープを運んで来た。
「美味しそう!」
早速スプーンを取ったら、「ストップ!」と美妃。
カシャリ。ちゃっかり自分のサンドイッチと、私のスープを携帯で撮っている。
一瞬、私も撮ろうかと思ったけれど、二人で同じ写真を撮るのも意味が無い気がしてやめた。
「いっただきまーす」
小声で二人でそうつぶやいて、それぞれの昼食をいただく。
大口でサンドイッチに噛み付く美妃が、もぐもぐ、ごっくんと飲み込んで言う。
「オランダってマヨネーズ好きなんでしょ?美味しいよ、マヨネーズ。もしかしたらホームメイドマヨかも」
「そうなの?マヨネーズ好きってアメリカじゃなくてオランダだっけ?」
「どっちも?アメリカってベーコンじゃなかったっけ」
「さぁ?」
美味しそうに眼を細めてまたサンドイッチに噛み付く美妃。この子は本当にあっけらかんとしていて落ち込むことはあまりない。
まぁ、だから今回無理矢理この旅行に同行してもらったのはこの「底なしポジティブエネルギー」を分けてもらいたかったからだ。
私も熱々のトマトスープに口をつける。日替わりのトマトスープということだが、今日のはクリーム入りのようでとってもなめらかな口当たりだ。
ちょこっとだけぴりっとするのは胡椒かもしれない。優しい甘みの人参が何個もはいっていて、トマトの酸味とクリームの濃厚さと3拍子、いい感じにまとまっている。
後でケーキを食べるつもりなので、カロリーを考えて付け合わせのパンにはバターをつけずに食べた。気休めレベルのカロリー調節だけど。
「カノンってさ、食べる時って真剣だよね」
「なにそれ、真剣って」
眉を潜めて美妃を見ると、上目遣いに私を見ながらもぐもぐしている。
「美味しい美味しいって感じているというより、なんかこう、分析しながら?あれこれ考えながら食べてる感じ。顔が真顔になってること多いよ」
「そうかなぁ?でもまぁ、確かにそれは否定出来ないかも?」
「結構1人カフェとか平気でしょ」
「うん、全然平気」
「私は嫌なんだよねー。カフェとか、わいわい行きたいタイプ」
「ま、姉妹といっても別人だし?わいわいって、打ち上げとか飲み会じゃないの?それにしても、結構なボリュームだよ、このスープ。人参ごろごろで満腹感出てきて、やばいかも」
「やばい?」
「こっちのケーキ、サイズが日本の2倍以上ありそうだしね。食べれるかな、全部」
「やだー、カノンがそんなこと言うなんて。スイーツバイキングであれだけ食べれる人が!」
かなり本気で引いた様子を見せる妹にムカッとして私は小声で怒った。
「いつの話よ!20歳の時でしょ。あの頃それで一気に太ってしまって、スイーツバイキングとかビュッフェとかいう無謀な食べ方は封印したから、最近は限界があるのっ」
「ふふふ……限界かぁ。でも、大食いの素質はあるんだから、平気平気。絶対余裕だから安心しなよ。心配ご無用ってやつ」
「あなたねー……」
「あっ、見て、付け合わせのサラダにクルミが入ってた!オメガ3、若返り~」
上手に話をそらしてサラダに集中する妹に呆れて、私は殆ど食べ終わったスープのボウルをのぞきこんだ。
このスープも有機野菜なのかな?
あっ、またいろいろ考えだすところだった。
私はサラダに集中している妹を置いて席を立ち、カウンターのほうに並んでいるケーキをチェックに行った。
メニューを見るより、実際に見て決めたいタイプなのだ。
特に、ケーキとか甘いものは、メニューの活字で想像するよりは、実際に見て決めるほうが絶対に後で後悔しない。
「美味しそうだろう?全部俺たちがここで焼いているんだよ」
カウンターのお兄さんが上機嫌で話しかけて来る。といっても、それはオランダ語だったので、なんとなくそう言っているのが解った感じだ。
「どれも美味しそうで、この中から選ぶっていうのは時間がかかりそう!」
本音を英語で答えると、お兄さんはうーんと言いながらカウンターから出て来て、それぞれのケーキを説明してくれた。
オランダ人が大好きなアップルパイ、クリームチーズのデコレーション付キャロットケーキ、どっしりとしたチーズケーキにレモンケーキ、フランス風チョコレートケーキ、くるみとカラメルのケーキ、ブラウニー……どれもこれも美味しそうで迷う。
これにしようかな、と思うと、いやでもやっぱりこっちが、、、となってしまう。
なんて優柔不断なんだ!と自分で自分に突っ込みたくなる。訪問中の身で滞在が限られている分、次に来れるとしてもかなり先のことだから、またいつでも来れるしー、なんていう能天気な考え方は出来ないのだ。だからこそ真剣に悩む。
「お兄さんのおすすめってある?」
埒があかないのでとりあえずお兄さんに丸投げしてみることにした。聞かれたのが嬉しかったのか、お兄さんはうーんと言って腕組みをして、じっとケーキ達を眺めた。
その腕がムキムキで思わず眼が点になったが、慌てて視線をケーキに戻す。
「そうだねー、まずはやっぱりアップルパイだね。フレッシュな生クリームを添えて。そしてチョコレートケーキも女の子には大人気だよ。勿論、他のケーキも美味しいんだけどね」
やっぱりまずは王道からだ!オランダといえばアップルパイ。女の子と言えばチョコレートケーキ。
「ありがとう!じゃぁそうする!アップルパイとチョコレートケーキ、両方とも生クリーム添えで!」
きっぱりそう言うと、お兄さんが代わりにウエイトレスに注文を伝えに行ってくれた。
席に戻って行くと、サンドイッチとサラダを食べ終わった美妃が、「ちょっとー」と不満げに口を尖らせた。
「いつまでカウンターに粘るのかと思ったじゃない。私もケーキを見に行きたい」
「あっ、ごめん。もうふたつ注文しちゃった」
「えっ」
美妃が眼をまんまるにして私を眺める。
「なにそれー!私も自分で選びたかったのにぃ。何を注文したの?」
「お兄さんに聞いて、おすすめのアップルパイとチョコレートケーキにしたよ」
「ふぅん、そうなの。ま、いっか」
基本的に楽観主義の妹は、すぐに機嫌を直してカウンターのほうを見ている。この切り替えの早さは姉として見習わなければならない。
やがて、さっきのお姉さんがケーキを運んで来た。
「わぁ、美味しそう!大きな角切りリンゴがこれでもかって入ってるね。シナモンの香りがいい感じ~」
私は早速アップルパイにフォークを伸ばし、そのひとかけに生クリームを付けて食べてみた。
甘酸っぱいサクサク感の残るリンゴに、ひんやりと濃厚な生クリーム。これは流石に唸ってしまう。
「おいしー!」
「どれどれ」
美妃もチョコレートケーキにフォークを突き立て、生クリームを付けながらぱくりと食べる。
「こ、濃い!もうこれ、ケーキというか、生チョコって感じ!ほろ苦のダークチョコっぽいよ。クリームと合う!うーん、これはくせになりそう」
私達はこの高カロリーなデザートをぺろりとたいらげたのだった。



数時間後、私達はNoordwijkというエリアのビーチの駐車場に到着していた。
観光客の多い有名なScheveningenはショッピングセンターや映画館、水族館やらホテルまで連立してとても賑やかなビーチなのだが、ローカル人はもう少し静かな海へ行くのが普通だ。このNoordwijkにはサイクリングにもうってつけの自転車レーンが海岸沿いに直線に走っているし、割とアットホームな地元のショップが並んでいたりして、のどかな雰囲気が漂う。夏期シーズンは、砂浜にビーチカフェやレストランがいくつも建てられて、皆のんびりと過ごすようだ。
「思ったより混んでなくてよかったわね。でももう少し遅かったら駐車場も空いてなかったかもしれないねぇ」
おばぁちゃんは車のトランクを開け、風よけのジャケットを取り出しながら言う。私達は海を目の前にもう子供並みにうずうずしていた。
「なんだかすごくわくわくしてきた」
胸を押さえながら言うと、美妃もうなずく。
「海って響きが、年齢に関係なくやっぱりドキドキしちゃう感じ」
「あらまぁ、二人とも。ほら、カノン」
呼ばれて振り返ると、おばぁちゃんがぽいっとオレンジと白のストライプ柄のビーチボールを投げてよこした。
「あっ、ビーチボール?おばぁちゃんの?!」
「まぁそんな感じだね。この間、銀行で貰ったんだよ」
「貸して~」
横から早速美妃がボールを引っぱる。
駐車場からしばらく歩くと、砂浜にたどり着いた。早速スニーカーを脱いで砂浜を踏みしめてみた。
結構暖かくなっているようだ。ぽかぽかする砂は、踏み込むとさっくりと沈み、さらさらと砂が流れて足を優しく包み込んでくれる。
「気持ちいい~」
「ちょっとくすぐったいなぁ」
私達ははしゃぎながら砂浜を歩き、おばぁちゃんが行きつけだというカフェにたどり着いた。

パラソルの下で海の面を向いた席が空いていたので、早速そこに陣取る。しばらくして、日焼けで肌が赤らんでいる女の子が注文を取りに来た。
この季節は、学校も休みだから学生達がアルバイトに励んでいるようで、17、8歳くらいの若い子達が楽しそうに仕事をしている。こんな奇麗な海を眺めて、お日様の下で仲間とバイトなんて、楽しいだろうなぁと羨ましくもあるが、ここへ来てリラックスしている様子の客も本当に幸せそうだ。
思ったより夏らしい暑さになったので、冷たいリプトンのアイスティを注文した。
今日市内で行ったところや、食べたもの、見たものをおばぁちゃんに話していたら、おばぁちゃんのお友達夫婦が声をかけて来た。
おばぁちゃんが嬉しそうに私達を紹介して、私達も挨拶をする。せっかくなので、お二人にも近くにあった椅子を運んで一緒のテーブルについた。
「以前、写真では見せてもらったけど、素敵なレディ達だねぇ」
おじぃさんがビール片手にそういって私達にウインクする。おちゃめなおじいさんだ。
「やっぱりサヨコに似ているわね!うちの孫達より随分としっかりして、利発そう」
そう褒められて、うちのおばぁちゃんがお腹を抱えて大笑いした。
「そりゃしっかりしてなきゃ困るわよ!なんたってもう27と23の孫ですよ。おたくのお孫さんはまだ20歳になったばかりでしょう」
それを聞いて私達はがくっと肩を落とした。しかっかりしていると褒められていい気分になっていたが、比較の対象が20歳とは。
「ええっ、27歳?どちらが?」
びっくりして聞かれて、私がのろのろと手を上げて苦笑いした。
おじぃさんが感心したように「ほぉ~」と声をあげ、おばぁさんも身を乗り出して私達の顔を覗き込む。気まずくなって姉妹で顔を見合わせていると、
「てっきりうちの孫と同じくらいかと思ったわ」
そんなことを言われ、急に気分が明るくなる。若く見られたというだけでテンションが上がる事自体、すでに微妙な年齢であるのだけど。
おばぁさんと私達のおばぁちゃんは、同じアートクラブのメンバーとかで、今度クラブの展覧会があるそうだ。なんだかそのイベントのことであーでもない、こーでもないと話始めてしまった。

しばらくして私と美妃は、波打ち際を散歩して来ると言って席をたった。
「なんだかんだと、おばぁちゃんは楽しそうでよかったよね」
「カノンもそう思ったんだ!私もそんなこと考えてたよ。おじぃちゃんが亡くなってもう17年も一人暮らしだから心配だったけど、たくさんお友達いるみたいだし、約束やらクラブやら、お友達に呼ばれたり家に招待したりと、私達以上に忙しそうで、毎日充実しているっぽいね」
「ほんとにね。あれじゃぁ、日本に本帰国する必要はないよ。こっちのほうがおばぁちゃんに合っているみたい」
「私達がもっと頻繁に来ればいいことよね。もっと前に考えとけばよかったなぁ」
「なにを?」
「おばぁちゃん宅に住んでオランダ留学とか」
「オランダ留学ねぇ……音楽とかそういう芸術方面ならありそうだけど……ま、でも過去のことだし、今更留学する年じゃないし」
「カノンはね。私はま、だ、23歳だから」
「あっ、なにその言い方!私だってまだ27歳っ」
ビーチボールを思い切り投げつけると、美妃を素早くそれをキャッチして、すごい勢いで波打ち際へ走って行く。
「……」
美妃がもと陸上部、ってのを忘れていた。運動神経は私より断然上だ。
私はどっちかというと文系で、一応、武道は数年やったので決して運動音痴ではないが、だからと言って胸を張って威張れるレベルでもない。
ゆっくりと砂浜を歩いて波打ち際を目指す。まだ日は高く、夕暮れまではしばらく時間があるようだ。水面がキラキラと輝いて、静かな波が打ち寄せては引いて行く。
波が打ち寄せたところにはピカピカに輝くたくさんの貝殻が打ち上げられていて奇麗だが、気をつけないと割れた貝殻で足を切ってしまう。
ひんやりと湿った砂浜を歩くと、足形ができてはゆっくりと消えて行く。
「カノン~!」
見れば、コットンパンツを膝上まで折上げた美妃が、すでに膝まで水に浸かってはしゃいでいる。
「すっごい冷たいよ!」
私も急いでジーンズの裾を膝上まで折上げて、海水に足を入れてみた。
「つ、冷たいっ」
驚く程の冷たさにびっくりする。
ひんやりなんて温度じゃない。体感温度は氷水レベルだ。
今、7月じゃなかったっけ?!
「なんかね、数日気温が高い日が続かないと、海水の温度が上がらないとかおばぁちゃんが言ってたよ」
「でもミキ、あれはどういうこと?」
私は沖のほうを指差した。かなりの人数が泳いでいる。このキンキンに冷える海水の中で!!!しかも、幼児達も波打ち際で全身ずぶぬれで遊んでいるじゃないか。
「まぁ、現地の人は慣れているんじゃない?寒中水泳と思えば私も出来るかな」
「無理!絶対無理無理っ!やめてよミキ、帰国前に風邪なんてシャレになんないからね」
「ちぇっ、カノンってつまんないねー」
「なんですって?!あっ、そうね、ミキなら大丈夫かな。ナントカは風邪引かないって言うし」
「っっ、ひっどーい!」
美妃がビーチボールをバシンと打ってよこす。波の上に落ちたボールを思い切り蹴飛ばして返すと、水が飛び散り美妃が悲鳴をあげた。
「鬼姉っ」
負けじとすごい勢いで水しぶきをあげて蹴り返して来る。
ぎゃぁっぎゃぁといい年して大騒ぎして波打ち際を走り回っていたら、服も髪も所々濡れて、いい加減にやめないとさすがに全身ずぶぬれになりそうだ。
「休憩!」
両手を上げて美妃に合図をし、私は少し波打ち際から離れて乾いた砂浜に座った。美妃はなにやらしゃがみこんで、波打ち際で貝殻を探している様子だ。
海の向こうには大きなタンカー?みたいな船が数隻見えるが、遠すぎて動いているのか停泊しているのかよくわからない。
外国だなぁ……としみじみしていると、突然女性に声をかけられた。
「ハロー?」
「?」
丁度お日様の方向に立っている人だったので逆光で顔がよく見えず、手で影を作って見上げる。人影は、もう一度「ハロー」と言った。
「ハロー」
彼女が横に回ったのでやっと顔が見えた。褐色の肌に背中を覆うクルクルヘアの大人っぽい女性だ。エキゾチックな顔立ちとは対照的にオリーブ色のグリーンがかった大きな瞳があまりに美しくて思わず見とれてしまった。
「ごめんなさいね、急に。英語、大丈夫?」
「あっ、はい。英語なら大丈夫です。オランダ語はあまり」
彼女もオランダ人じゃなさそうだ。少し訛りのある英語だから、英語圏の人でもなさそう。
彼女は手に持っていた割と大きなカメラを指差した。
「私ね、アーティストなの。気になる被写体を撮って、それをもとに絵やオブジェを作っていて」
話の内容が私の好きな分野だったので、思わず身を乗り出して彼女とカメラを交互に見た。彼女はにっこりと笑って、カメラを構えるふりをして言う。
「私、貴女がすごく気になるの。写真、撮らせてくれない?」
「えっ、私?!」
思わぬことを言われてびっくりしたせいか、声が裏返ってしまった。
私の写真を撮りたいなんて、一体どういうことなんだろう?!なにが面白いんだろうか。
戸惑って言葉を失っていると、「マリア!」と誰かがこちらのほうへ走って来るのが見えた。あ、と言って彼女が振り返ったところを見ると、彼女の名前はマリアなんだろう。ややして、1人の男性がやってきて、軽く私に笑顔を向けてから、ムッとした顔でマリアに文句を言い始めた。
「支払いをしていたらいきなり姿を消すからびっくりしたじゃないか」
「え、私ちゃんと言ったわよ、ちょっと海の方に行くからって」
「聞こえてない!俺が聞こえているのか確認してないじゃないか」
「まぁいいじゃない、ちゃんと私を見つけて今は一緒にここにいるでしょ」
このカップルの会話がおかしくて思わずクスクスと笑ってしまったら、二人が黙って振り返った。
「あっ、ごめん、つい」
失礼だったなと思って謝ると、マリアが眼を丸くして私の顔を覗き込んだ。
「あなた、ドイツ語、わかるの?」
あっそうか、二人はドイツ語で会話をしていたんだ。
私はちょっと笑って肩をすくめた。
「そんなにわからないけど、すごく簡単な内容ならわかるよ。殆ど喋れないけどね」
恥ずかしながら、ドイツ語を1年学んだ事がある。オランダ語同様、読むほうと聞く方は簡単なレベルならなんとかという感じだ。
「そうなのねー。じゃぁ英語のほうが楽なんだ」
「うん」
マリアはにっこりして手を差し出した。
「私はマリア。ポルトガル人アーティストよ。で、こっちは彼氏のヨナス。ドイツ人」
ヨナスと言うマリアの彼氏は、優しそうな青い眼を細めて手を差し出した。
交互に握手をしながら、私も自己紹介をした。
「私はカノン。あの波打ち際にいるのが妹のミキ」
「君たちはどこの国の人なの?妹さんの名前を聞くと、日本人の名前みたいだけど」
ヨナスが私と遠くの美妃を見ながら聞く。彼の英語は訛りが殆どなくきれいなブリティッシュイングリッシュだ。
「そうそう、日本。 亡くなったおじぃちゃんがベルギー人で、今はこっちにいるおばぁちゃんを訪ねて来ているの。二人はここに住んでいるの?」
「私達もバケーション中よ。ま、ヨナスは仕事もあるけど。私達が住んでるところは、ベルリン」
マリアがそういいながら、カメラを構える。
「ね、いい?貴女の写真が撮りたいの」
「あ……うーん、なんだか恥ずかしいんだけど……」
断りにくいしでも恥ずかしいし……と困っていると、ヨナスがマリアの肩を抱き寄せて、たしなめるように言う。
「あまりに唐突すぎる。彼女も困っているようだし、無理を言わないほうがいい」
「でも!私は彼女が撮りたいの。さっき、彼女を見つけて、逃がさないように大急ぎでここまで走って来たのよ!」
情熱的な眼を向けられて、思わずひるむ。逃がさないように大急ぎで走って来たって……こんなセリフ、一度かっこいい男性に言ってもらいたいもんだ。
結局、私は彼女に口説かれて(?)被写体になることを了承した。
彼女は私を立たせたり、歩かせたり、いろんな動きを指示したりして、何枚も写真を撮って行く。
海という開放的な場所のせいか、私も特に緊張することなく、ヨナスのジョークやマリアの笑い声に連れられて自然体で動いていた。
「あれー?カノン、モデルやってるの?」
こっちに戻って来た美妃までが気がついたら参加していて、なんだか単なるお遊びみたいな撮影会になっていった。
そろそろお腹が空いて来たなと思った時には日も傾いて、夕焼けが海の向こうに広がっていた。
「さぁ、そろそろ最後のショットを撮るわ。ライティングも最高の状態」
そういってマリアが夕日へ目をやり、私に砂浜に座るように指示をする。言われるがままに砂浜へ座ったら、今度はヨナスに私の隣に座れと言う。
ヨナスは「はいはい」と言う感じで私の隣に座る。
「そう、ヨナスは片膝を立てて、海の方を向いて。カノンは、ヨナスに寄りかかるように座って、両手は自然に砂浜へ下ろして、体はS字にねじる。そしてしっかり夕陽のほうを見て。眩しくても、まっすぐにお日様のほうを見る!ちゃんと、ヨナスに寄りかかってよ」
「え?」
私はびっくりしてマリアを見たが、マリアはすでにカメラを構えていて、有無を言わさぬ感じで微動だにしない。
ヨナスが私の耳元で小声で言う。
「言われる通りにしてくれる?マリアの頭の中には完成されたイメージがあって、何を言っても妥協はしないから」
そうは言われても……美妃はこの様子がおかしいのか、マリアの後ろで笑いをこらえている。
人ごとだと思って!美妃に腹が立ったが、今憤慨したところで状況が変わるわけでもなく。
問題はこのヨナスが、かなりの美形の男だということだ。かなりというか、本業はモデルか俳優かというレベルのハンサムで、しかも困った事に大人の色気がある。
たちが悪い。マリアの彼氏だと解っているから興味などさらさらないが、普通の感覚でも、こんなハンサムを意識するなと言うのが無茶なことだ。
しかし、息も止めているじゃないかと思うくらい1ミリも動かないマリア。威圧感が半端ないのは、やはりプロだからだろうか。
結局無茶な抵抗は諦めて、ヨナスの胸に背中を預けるようによりかかってみたが、その瞬間、思わずビクッとした。
ヨナスは薄手の白いコットンシャツを来ていたが、かなり鍛えられているらしい筋肉の弾力的な感覚を感じる。初夏で薄着だというのも災いして、体温まで伝わってきて、不覚にもドキマギしてしまった。
私、絶対に顔が赤くなってる!
かなり動揺してはいるが、今は夕日で全てがオレンジ色に染まって来ているので、顔が赤いのも見えないだろうと自分に言い聞かせ、あくまで平静を装う。
相変わらず1ミリも動かないマリアの後ろで、私の異変に気づいているらしい美妃が、口を手で覆って肩を揺らしている。
「カノン、もう少し体重かけたほうが自然だ」
ヨナスが気を使ってそう声をかけてくれた。
「う、うん」
これ以上、体温を感じるほどに密着したくない!と思ったが、一向にシャッターを切る音が聞こえないところを見ると、マリアはまだこのポージングに納得していないようだ。不自然な体勢が気に入らないのだろう。
私は被写体。
アートのため。
芸術のため。
そう言い聞かせ、思い切ってヨナスの胸にもっと体重をかけてよりかかり、言われた通りに夕暮れのお日様に目をやった。
眩しい……オレンジ色に燃える夕日が、直視出来ないくらいに眩しい。
一生懸命、目を開こうとするが、差し込んで来る強いオレンジ色の光でどうしても目を細めてしまう。
ふんわりと海風がなびいて、私の髪が空中にふわふわと漂う。
シャッター音はまだ聞こえてこない。
「カノン……足下にカニ」
突然ヨナスがそう呟いたので驚いて目を見開いた瞬間、ものすごい勢いで連続シャッター音が響いた。
カニ???カニ?
動いてよいのかわからず固まっていると、マリアがカメラを下ろして「オッケー!!!」と叫んだ。
「カニ……って」
立ち上がって自分の周りを見渡していると、ヨナスがクスクスと笑う。
「いい表情していたと思うよ」
「なにが?」
「君が」
「?」
訳が分からずぽかんとしていると、マリアがカメラを覗き込んでなんだかとても興奮している。
「さすが私のヨナス!よくわかってるわね。カニ!の瞬間のマリア、瞳孔が開いて最高の表情になってる!」
「はぁ?」
はしゃぐマリアに呆然としていると、大笑いしながら美妃が私の肩を抱き寄せて言う。
「だって、カノン、目が半分しか開いてなくて、じとーって夕日を睨んでいるんだもん!カニって言われてやっと目が完全に開いたって感じ」
「ええええっっっ」
やっとカニの意味というか、意図がわかり、最初はびっくりしたものの、あとはおかしくなって皆で大笑いになった。
しばらく大笑いした後、マリアがカメラをバッグに片付けながらとても残念そうに言う。
「私達、そろそろ行かなくちゃ……カノン、ミキ。本当にありがとう。そしてとても楽しかったわ」
「ううん、私達こそ有り難う。とってもいい思い出になった」
私も別れが寂しくなって少し声が小さくなってしまう。ひさしぶりに大声で笑った気がする。楽しい時間はこんなにも早く過ぎてしまうんだ。
マリアはバッグから1枚のカードを出して私に差し出し、にっこりと微笑んだ。
「これで最後にはしたくないわ。はい、これ、私の連絡先よ。あなたの写真をもとにきっと素晴らしい作品を作って展示してみせるから、必ず連絡して」
「ありがとう」
カードを見ると、ドイツのベルリンの住所とメールアドレスがある。
「ベルリン……アーティストが多いんだっけ?」
独り言のように呟くと、ヨナスがマリアの肩にコバルトブルーのストールを掛けてやりながら振り返り、いたずらっ子のような微笑みをむける。
「そう、ベルリンはヨーロッパのN.Y.と称されるくらい、芸術と自由の街だ。アーティストは皆、ベルリンを目指す」
「そうなの」
「知らなかったね、カノン」
美妃もびっくりした様子でヨナスを見上げた。
「ベルリン……ベルリンの壁が崩壊してから、どんどん変わって行ったんだね」
「そうよ、カノン。あなた、ドイツ語もわかるんだし、ベルリンに来てみなさいよ。被写体になってくれたお礼に、私が手伝えることは何でもするから」
マリアが髪を無造作にかきあげながら私にウインクした。
彼女の思いがけないオファーにびっくりしたが、その時私の心の中で何かがはじけたような感覚がした。
「うん。有り難う、マリア。必ず連絡する」
私達は交互に抱き合って、去って行くマリアとヨナスを見送った。
「チャオ!」
二人がもう一度振り返りそう叫んで手を振る。私達も手を振りかえした。

「なんだか思いがけない出来事だったね」
美妃がふうっとため息をつきながらオレンジ色の海に向かって大きく背伸びをした。
「うん……でも、なんだか吹っ切れた気がする」
「吹っ切れた?なにが?」
「全部」
「彼氏?」
「それだけじゃなくて、他の全部。固定観念とか、常識とか」
「相変わらず意味不明だけど、まぁ元気を取り戻したんならよかったじゃん!」
私はなんだかドキドキしていた。私はこれから、何か新しい始まりに向けて動き出すんだ。はっきりとした意思らしきものが、私の心の扉を開けて生まれた瞬間だった。
「さ、おばぁちゃんのところに戻ろう!お腹空いてきたっ」
「私も~!カノンのおごりだよねー、たっくさん注文しちゃう!」
私達は砂浜に足を取られながらも全速力で走って、おばぁちゃんが待っているだろうカフェを目指したのだった。
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