姫ポジ幼馴染の貞操を全力で守っていたのに、いつの間にか立場が逆転して伸し掛かられた件

イセヤ レキ

文字の大きさ
3 / 7

3 男前幼馴染

しおりを挟む
清流が下調べを念入りにしてくれていた甲斐もあってトントン拍子に物件は決まり、俺たちは大学のキャンパスから三十分ほど離れた、とある団地の一室を借りてルームシェアをすることになった。

家賃五万五千円を清流の家と折半することとなり、親は喜んでいる。
喧嘩するなよ、と言われつつ俺たちは同じ日に引越しを終えて、いよいよ新生活がスタートした。


「あっ……、柳君だ」
「本当だ!ラッキー!」
 
まぁ、モテるだろうなとは思っていた。
男子校でも声を掛けられるくらいだ、共学に通えばこうなるのは当然である。
女の子たちの黄色い声に気づかないわけがないのに、清流は食堂でカレーを貪る俺に話し掛けてきた。

「元弥、サークルはどこに入る?」
「んー、身体は動かしたいから空手は続けて、後は飲みサーいくつか覗いてみたいかも」
「まだ飲めないのに?」

憧れるのは自由だろ!
新入生歓迎会に出れば、新しい出会いがあるかもしれないだろ!
……と、視線だけで清流に返事をする。

「オーケーわかった、飲まないつもりならいいよ。あと、バイトはそろそろ何にするか決めた?」
長い付き合いなだけあり、すぐに俺の視線だけで返事をする清流。
口の中に入れていたカレーがなくなったタイミングで、俺は口を開く。

「駅前のカフェが募集してたから、応募しようかなと思ってる」
「そっか、なら俺もそこにしようかな」
「お前が応募したら、俺が落とされる予感しかしないんだが!?」

俺たちが普通に話している後ろから、女の子たちがひそひそと話している会話が聞こえてきた。
いや、俺に聞こえる時点で、ひそひそ話ではない。
むしろ、聞かせたいのかと思うような声の大きさだ。


「あの人さ、いつも柳君の隣にいるけど……仲良いのかな?」
「なんか、高校から一緒らしいよ」

正確には小学からだがな。

キャンパスの食堂で、本人たちを前にしながら噂話に花を咲かせる女の子たちに心の中で突っ込みをいれつつ、顔をあげる。

清流は俺と視線が合うと、嬉しそうににっこり笑った。
そのイケメンの笑顔に、俺までドキリとする。

女の子たちに噂されているのは嬉しいのだろうか。
中高時代なら、自分の話をされると仏頂面を隠さなかったのに。

「柳君と一緒だと、どんな男もかすんじゃうよね」
「ね~」

見慣れた清流の顔。
昔は姫ポジだったと聞いても、イケメンに成長を遂げた今しか知らなければ、想像もつかないだろう。

ガタン、と席を立った清流が、コソコソと話をしていた女の子たちのところへと足を向ける。

きゃあ、と頬を染めて色めき立った女の子たちは、清流が耳元で何かを囁くと、途端に顔色を悪くし足早に食堂から立ち去って行った。

「どうした?」
「ちょっと煩かったから、注意してきた」
「そっか」

別に嬉しかったわけじゃないらしい。
単に外面を身に付けただけだった。


憧れの一人暮らし。
憧れのキャンパス通い。
全てが目新しいことばかりなのに、清流が横にいるだけで安定感が半端ない。

憧れの初恋人……は、もう少し先かな。
そりゃ、芸能人の隣に一般人がいれば、一般人は霞んで見えるだろう。

今に限ったことではない。
清流は性格も良いし、直ぐに彼女が出来るはず。
そしたら俺の役目も御免で、清流の横は彼女の場所になる。
その時は誰かひとりくらい、俺を見てくれる人がいれば良いな。

俺はパクリと食堂の甘いカレーを頬張った。



「おい、おかしくないか、清流」
「ん? 何が?」
俺たちが大学進学して、三ヶ月。

清流は何人もの女の子たちから告られていたが、誰とも付き合う様子がなかった。

「お前、いつ彼女つくるんだよ」
「え? なんで?」

目を瞬いて、清流はポテチを齧りながら俺を見上げる。

「お前が彼女作らないと……だろうが」
「え?」

清流はフリーという噂が流れて、俺たち一般人に向けられる視線はごく少数だ。

「お前が彼女作らないと、俺も恋人を作れないだろうが」

そんな言い訳をする自分が恥ずかしくて、頬が赤くなる。
もっと外泊が増えると思っていたから、夜のも滞って仕方がない。

「俺は元弥以外の誰とも付き合う気はないよ」

ごくごく当たり前のように言われて、俺は口を尖らせる。
俺の気も知らないで、なんでそんなことを言うんだ。

「俺に近づく女の子たち、皆お前狙いで超困ってるんだけど」

清流の距離が近すぎて、友達すら増えない。

「俺は元弥がいればいい。ずっと傍にいてくれるって約束しただろ?」
「そんなこと言っても、お前のほうが背も高いし体格も良いんだし、もう俺が守る必要ないだろ」

元姫ポジ清流があまりにも不憫で、「友達を守る俺カッコイイ」と自分に酔いしれ、俺がずっと一緒にいて守ってやるから大丈夫だ的な発言をした記憶は確かにある。
しかし、今の清流ならもう、俺の出番はないだろう。
そんなことでもしようものなら、番犬を守る子犬状態だ。

正直に言えば、清流は誰の目から見ても超イケメンで、俺の隣は似合わない。

「今まで元弥が守ってくれた分、今度は俺が守るよ」
「何からだよ」
清流の言葉はほんの少し嬉しくて、胸がくすぐったくて、俺はつい笑ってしまった。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

友人の代わりに舞踏会に行っただけなのに

卯藤ローレン
BL
ねずみは白馬に、かぼちゃは馬車に変身するお話のパロディ。 王城で行われる舞踏会に招待された隣家の友人のエラは、それを即断った。困った魔法使いと、なにがなんでも行きたくない友人に言いくるめられたエミリオは、水色のドレスを着て舞踏会に参加する。壁の花になっていた彼に声をかけてきたのは、まさかの第二王子で——。 独自設定がわんさかあります。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

お姉ちゃんを僕のお嫁さんにするよ!「………私は男なのだが」

ミクリ21
BL
エリアスの初恋は、森で遊んでくれる美人のお姉ちゃん。エリアスは、美人のお姉ちゃんに約束をした。 「お姉ちゃんを僕のお嫁さんにするよ!」 しかし、お姉ちゃんは………実はお兄ちゃんだということを、学園入学と同時に知ってしまった。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ真に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

好きな人に迷惑をかけないために、店で初体験を終えた

和泉奏
BL
これで、きっと全部うまくいくはずなんだ。そうだろ?

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

処理中です...