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3 男前幼馴染
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清流が下調べを念入りにしてくれていた甲斐もあってトントン拍子に物件は決まり、俺たちは大学のキャンパスから三十分ほど離れた、とある団地の一室を借りてルームシェアをすることになった。
家賃五万五千円を清流の家と折半することとなり、親は喜んでいる。
喧嘩するなよ、と言われつつ俺たちは同じ日に引越しを終えて、いよいよ新生活がスタートした。
「あっ……、柳君だ」
「本当だ!ラッキー!」
まぁ、モテるだろうなとは思っていた。
男子校でも声を掛けられるくらいだ、共学に通えばこうなるのは当然である。
女の子たちの黄色い声に気づかないわけがないのに、清流は食堂でカレーを貪る俺に話し掛けてきた。
「元弥、サークルはどこに入る?」
「んー、身体は動かしたいから空手は続けて、後は飲みサーいくつか覗いてみたいかも」
「まだ飲めないのに?」
憧れるのは自由だろ!
新入生歓迎会に出れば、新しい出会いがあるかもしれないだろ!
……と、視線だけで清流に返事をする。
「オーケーわかった、飲まないつもりならいいよ。あと、バイトはそろそろ何にするか決めた?」
長い付き合いなだけあり、すぐに俺の視線だけで返事をする清流。
口の中に入れていたカレーがなくなったタイミングで、俺は口を開く。
「駅前のカフェが募集してたから、応募しようかなと思ってる」
「そっか、なら俺もそこにしようかな」
「お前が応募したら、俺が落とされる予感しかしないんだが!?」
俺たちが普通に話している後ろから、女の子たちがひそひそと話している会話が聞こえてきた。
いや、俺に聞こえる時点で、ひそひそ話ではない。
むしろ、聞かせたいのかと思うような声の大きさだ。
「あの人さ、いつも柳君の隣にいるけど……仲良いのかな?」
「なんか、高校から一緒らしいよ」
正確には小学からだがな。
キャンパスの食堂で、本人たちを前にしながら噂話に花を咲かせる女の子たちに心の中で突っ込みをいれつつ、顔をあげる。
清流は俺と視線が合うと、嬉しそうににっこり笑った。
そのイケメンの笑顔に、俺までドキリとする。
女の子たちに噂されているのは嬉しいのだろうか。
中高時代なら、自分の話をされると仏頂面を隠さなかったのに。
「柳君と一緒だと、どんな男もかすんじゃうよね」
「ね~」
見慣れた清流の顔。
昔は姫ポジだったと聞いても、イケメンに成長を遂げた今しか知らなければ、想像もつかないだろう。
ガタン、と席を立った清流が、コソコソと話をしていた女の子たちのところへと足を向ける。
きゃあ、と頬を染めて色めき立った女の子たちは、清流が耳元で何かを囁くと、途端に顔色を悪くし足早に食堂から立ち去って行った。
「どうした?」
「ちょっと煩かったから、注意してきた」
「そっか」
別に嬉しかったわけじゃないらしい。
単に外面を身に付けただけだった。
憧れの一人暮らし。
憧れのキャンパス通い。
全てが目新しいことばかりなのに、清流が横にいるだけで安定感が半端ない。
憧れの初恋人……は、もう少し先かな。
そりゃ、芸能人の隣に一般人がいれば、一般人は霞んで見えるだろう。
今に限ったことではない。
清流は性格も良いし、直ぐに彼女が出来るはず。
そしたら俺の役目も御免で、清流の横は彼女の場所になる。
その時は誰かひとりくらい、俺を見てくれる人がいれば良いな。
俺はパクリと食堂の甘いカレーを頬張った。
「おい、おかしくないか、清流」
「ん? 何が?」
俺たちが大学進学して、三ヶ月。
清流は何人もの女の子たちから告られていたが、誰とも付き合う様子がなかった。
「お前、いつ彼女つくるんだよ」
「え? なんで?」
目を瞬いて、清流はポテチを齧りながら俺を見上げる。
「お前が彼女作らないと……だろうが」
「え?」
清流はフリーという噂が流れて、俺たち一般人に向けられる視線はごく少数だ。
「お前が彼女作らないと、俺も恋人を作れないだろうが」
そんな言い訳をする自分が恥ずかしくて、頬が赤くなる。
もっと外泊が増えると思っていたから、夜のアレも滞って仕方がない。
「俺は元弥以外の誰とも付き合う気はないよ」
ごくごく当たり前のように言われて、俺は口を尖らせる。
俺の気も知らないで、なんでそんなことを言うんだ。
「俺に近づく女の子たち、皆お前狙いで超困ってるんだけど」
清流の距離が近すぎて、友達すら増えない。
「俺は元弥がいればいい。ずっと傍にいてくれるって約束しただろ?」
「そんなこと言っても、お前のほうが背も高いし体格も良いんだし、もう俺が守る必要ないだろ」
元姫ポジ清流があまりにも不憫で、「友達を守る俺カッコイイ」と自分に酔いしれ、俺がずっと一緒にいて守ってやるから大丈夫だ的な発言をした記憶は確かにある。
しかし、今の清流ならもう、俺の出番はないだろう。
そんなことでもしようものなら、番犬を守る子犬状態だ。
正直に言えば、清流は誰の目から見ても超イケメンで、俺の隣は似合わない。
「今まで元弥が守ってくれた分、今度は俺が守るよ」
「何からだよ」
清流の言葉はほんの少し嬉しくて、胸がくすぐったくて、俺はつい笑ってしまった。
家賃五万五千円を清流の家と折半することとなり、親は喜んでいる。
喧嘩するなよ、と言われつつ俺たちは同じ日に引越しを終えて、いよいよ新生活がスタートした。
「あっ……、柳君だ」
「本当だ!ラッキー!」
まぁ、モテるだろうなとは思っていた。
男子校でも声を掛けられるくらいだ、共学に通えばこうなるのは当然である。
女の子たちの黄色い声に気づかないわけがないのに、清流は食堂でカレーを貪る俺に話し掛けてきた。
「元弥、サークルはどこに入る?」
「んー、身体は動かしたいから空手は続けて、後は飲みサーいくつか覗いてみたいかも」
「まだ飲めないのに?」
憧れるのは自由だろ!
新入生歓迎会に出れば、新しい出会いがあるかもしれないだろ!
……と、視線だけで清流に返事をする。
「オーケーわかった、飲まないつもりならいいよ。あと、バイトはそろそろ何にするか決めた?」
長い付き合いなだけあり、すぐに俺の視線だけで返事をする清流。
口の中に入れていたカレーがなくなったタイミングで、俺は口を開く。
「駅前のカフェが募集してたから、応募しようかなと思ってる」
「そっか、なら俺もそこにしようかな」
「お前が応募したら、俺が落とされる予感しかしないんだが!?」
俺たちが普通に話している後ろから、女の子たちがひそひそと話している会話が聞こえてきた。
いや、俺に聞こえる時点で、ひそひそ話ではない。
むしろ、聞かせたいのかと思うような声の大きさだ。
「あの人さ、いつも柳君の隣にいるけど……仲良いのかな?」
「なんか、高校から一緒らしいよ」
正確には小学からだがな。
キャンパスの食堂で、本人たちを前にしながら噂話に花を咲かせる女の子たちに心の中で突っ込みをいれつつ、顔をあげる。
清流は俺と視線が合うと、嬉しそうににっこり笑った。
そのイケメンの笑顔に、俺までドキリとする。
女の子たちに噂されているのは嬉しいのだろうか。
中高時代なら、自分の話をされると仏頂面を隠さなかったのに。
「柳君と一緒だと、どんな男もかすんじゃうよね」
「ね~」
見慣れた清流の顔。
昔は姫ポジだったと聞いても、イケメンに成長を遂げた今しか知らなければ、想像もつかないだろう。
ガタン、と席を立った清流が、コソコソと話をしていた女の子たちのところへと足を向ける。
きゃあ、と頬を染めて色めき立った女の子たちは、清流が耳元で何かを囁くと、途端に顔色を悪くし足早に食堂から立ち去って行った。
「どうした?」
「ちょっと煩かったから、注意してきた」
「そっか」
別に嬉しかったわけじゃないらしい。
単に外面を身に付けただけだった。
憧れの一人暮らし。
憧れのキャンパス通い。
全てが目新しいことばかりなのに、清流が横にいるだけで安定感が半端ない。
憧れの初恋人……は、もう少し先かな。
そりゃ、芸能人の隣に一般人がいれば、一般人は霞んで見えるだろう。
今に限ったことではない。
清流は性格も良いし、直ぐに彼女が出来るはず。
そしたら俺の役目も御免で、清流の横は彼女の場所になる。
その時は誰かひとりくらい、俺を見てくれる人がいれば良いな。
俺はパクリと食堂の甘いカレーを頬張った。
「おい、おかしくないか、清流」
「ん? 何が?」
俺たちが大学進学して、三ヶ月。
清流は何人もの女の子たちから告られていたが、誰とも付き合う様子がなかった。
「お前、いつ彼女つくるんだよ」
「え? なんで?」
目を瞬いて、清流はポテチを齧りながら俺を見上げる。
「お前が彼女作らないと……だろうが」
「え?」
清流はフリーという噂が流れて、俺たち一般人に向けられる視線はごく少数だ。
「お前が彼女作らないと、俺も恋人を作れないだろうが」
そんな言い訳をする自分が恥ずかしくて、頬が赤くなる。
もっと外泊が増えると思っていたから、夜のアレも滞って仕方がない。
「俺は元弥以外の誰とも付き合う気はないよ」
ごくごく当たり前のように言われて、俺は口を尖らせる。
俺の気も知らないで、なんでそんなことを言うんだ。
「俺に近づく女の子たち、皆お前狙いで超困ってるんだけど」
清流の距離が近すぎて、友達すら増えない。
「俺は元弥がいればいい。ずっと傍にいてくれるって約束しただろ?」
「そんなこと言っても、お前のほうが背も高いし体格も良いんだし、もう俺が守る必要ないだろ」
元姫ポジ清流があまりにも不憫で、「友達を守る俺カッコイイ」と自分に酔いしれ、俺がずっと一緒にいて守ってやるから大丈夫だ的な発言をした記憶は確かにある。
しかし、今の清流ならもう、俺の出番はないだろう。
そんなことでもしようものなら、番犬を守る子犬状態だ。
正直に言えば、清流は誰の目から見ても超イケメンで、俺の隣は似合わない。
「今まで元弥が守ってくれた分、今度は俺が守るよ」
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清流の言葉はほんの少し嬉しくて、胸がくすぐったくて、俺はつい笑ってしまった。
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