追放された凡人、実は伝説の創造主だった ~気づけば女神も勇者も俺に跪いていた件~

fuwamofu

文字の大きさ
3 / 21

第3話 勇者パーティーは勘違いしていた

しおりを挟む
 王都の一等地にそびえる白亜の城。そこでは今、異様な緊張感が漂っていた。  
 円卓を囲むのは、勇者アルドとその仲間たち――魔法使いのシェリル、槍士カイル、神官ライザ。  
 王の許可を得て「レン追放」からわずか数日。だがすでに彼らの表情には焦りが滲んでいた。

 「おい、これ……何の冗談だ?」  
 カイルが机を叩いた。広げられた報告書には、信じ難い文字が並んでいる。  
 『王都外縁部にて“時間停止現象”発生』『創造の加護を受けし者の可能性』『勇者パーティー元補給係・レンの名あり』  

 「馬鹿な。奴が……あの凡人がそんなことできるわけねぇ!」

 シェリルも眉をひそめる。「でも実際、王宮魔導院の観測にも同じ反応が出ているのよ。王都の東神殿に“創造神の波長”が確認されたって。」

 アルドは無言だった。  
 強く拳を握りしめ、歯を食いしばっている。  
 「あいつは……ただの村人だったはずだ。」

 「追放直前の戦い、もう一度思い出してみなさいよ。」  
 シェリルが静かに言う。「あなたが炎竜と戦っていたとき、急に嵐が起きて敵の攻撃が逸れたでしょう? あれもレンが叫んだ後だった。」

 「偶然だ。」

 「本当に?」

 沈黙。  
 部屋を圧迫するような緊張が続いた。  
 ライザ神官が祈りの言葉を唱えるように呟いた。「リュミナ様の加護が彼に戻ったのかもしれません……。」

 その瞬間、アルドが机を叩き割った。  
 「ふざけるな! 俺が勇者だ! 神に選ばれたのは俺だ!」  
 声が城中に響き渡る。魔導灯がかすかに震え、空気が凍りついた。  

 シェリルが小さく息を吐く。「あんた、何に怯えてるの?」  
 「怯えてなどいない!」  
 「じゃあ認めれば? レンが――“お前より上”の存在だったって。」

 その言葉に、アルドの顔から血の気が引いた。  
 彼には、勇者の称号こそが生きる証だった。  
 それが否定されるなど、死より耐え難い屈辱だ。

 「……あいつは何者なんだ。」  
 アルドが低く呟く。  
 誰も答えなかった。答えられる者など、この場にはいない。

 

 一方そのころ、王都を離れたレンは霧風の森へ入っていた。  
 朝露に濡れた木々の間を抜けながら、慎重に足を進める。  
 森の中は静かだった。鳥の声すら遠く、風の音だけが聞こえる。  

 「……やっぱり何かがおかしい。」

 気配が変だ。森そのものが息を潜めている。  
 俺は足元の落ち葉をかき分け、地面に散らばる奇妙な黒い結晶を見つけた。  
 指で触れると、冷たいというより“空気を吸い取るような”感触。  
 これが女神の言っていた“魔力の歪み”なのかもしれない。

 「長くは持たないな、この世界……」

 その時だ。  
 風の流れが止まり、黒い結晶がぶるりと震えた。  
 次の瞬間、地面が割れ、影のような狼が飛び出した。  
 口から吐き出される瘴気が、周囲の草を枯らしていく。

 「魔物……いや、もう“生物”じゃないな。」

 俺は後ずさりしようとしたが、狼の動きは速かった。  
 気づけば爪が目前に迫っている。

 反射的に、心の中で叫ぶ。  
 「消えろ。」

 ――空気が圧縮されたような音が響き、影の狼は形を失った。  
 粉々の光となり、風に溶ける。

 静寂。  
 俺は拳を握ったままその場に立ち尽くす。  
 何の呪文も詠唱もしていない。ただ“そう願った”だけだ。

 「……やっぱり、俺に力がある。」

 確信と同時に、背中を冷たい汗が伝う。  
 使えば使うほど、この“感覚”は拡大する。  
 だが、これは単なる力ではない。何かを“上書きする”力だ。

 「創造……か。」

 

 森を抜けた先に、古びた小屋が見えた。  
 扉をノックすると、中からひょろりとした青年が顔をのぞかせた。  
 「おお、やっぱりお前か! レン!」

 見覚えのある顔――森の研究者ラウルだ。  
 俺の幼なじみであり、この世界でも数少ない“魔力観測学者”の一人。

 「生きてたんだな、ラウル。」  
 「当たり前だ。けどお前こそ、勇者パーティーから追放されたって聞いたぞ? 大騒ぎだったじゃないか。」

 「まあな。そのおかげで今こうしてのんびりしてる。」

 軽い冗談を交わしながら小屋に入る。中は魔導書や鏡水晶だらけだった。  
 ラウルは慌ただしく机の上の結晶球を指し示す。

 「見ろよ、王都の観測データだ。昨日から魔力が不規則に揺れてる。まるで“世界そのものが再構築されてる”みたいなんだ。」

 俺の脳裏にリュミナの言葉がよぎる。  
 “あなたが動けば、世界が応えるでしょう。”

 「ラウル、その現象の中心はどこだ?」

 「……王都だよ。お前がいたあたり。」

 俺は無意識に息をのんだ。

 「……それって、偶然か?」

 「いや。あの波長、まるで“創造主の殻”が動いてるような波だ。」  
 ラウルは冗談めかして笑うが、俺には笑えなかった。

 「何か隠してるな、レン。」  
 ラウルが鋭く言う。「お前、ただの村人じゃないんだろ。」

 俺は苦笑した。「まさか。俺はただ、流れに任せて生きてるだけさ。」

 「はっ。相変わらず嘘が下手だ。」

 ラウルは溜息をつき、椅子に腰を下ろす。  
 「魔王軍の動きも活発化してきてる。俺が言うのもなんだが……お前、巻き込まれるなよ。」

 「それを防ぐために来たんだ。」  
 その一言で、ラウルは目を見開いた。  
 だが俺はそれ以上何も言わずに、窓から外を見た。

 遠くの空に、黒い雲が渦巻いている。  
 いや、あれは雲じゃない。何千もの黒い粒子――魔力の暴走体だ。

 「まずいな。」

 俺が呟くより早く、地響きが森の奥から伝わってきた。  
 空気が震え、影が蠢く。  
 “何か”がこちらに近づいている。

 次の瞬間、小屋の壁が破壊され、黒い触手のようなものが突き出た。  
 ラウルが悲鳴をあげる。「ま、魔瘴気の塊が実体化してる!?」

 「下がってろ!」

 俺は腕を一振りした。  
 触手が砕け散り、地面ごと光に染まる。  
 爆音が走り、森が一瞬で静寂に包まれた。残ったのは焦げた匂いと風のうねりだけ。

 「……おいおい、待てよレン。今の……魔法じゃねぇよな?」

 「知らない方がいい。」  
 俺は静かに言って、崩れた扉を跨いだ。  
 「ラウル、森を離れろ。しばらくここは危険だ。」

 彼は唖然とした表情で俺を見ていたが、やがて頷く。「わかった……けどお前、どこへ行く気だ?」

 「この“歪み”の根を見つける。たぶん、神殿の奥――いや、そのさらに上層だ。」

 風が吹き、木々がざわめく。  
 まるで世界が小さく呼吸したような音がした。  
 その時、遠くで雷鳴が響いた。

 「レン!」

 振り返ると、ラウルの声が。  
 「お前、気をつけろよ! ……もう、ただの人間じゃないんだから!」

 その言葉に、俺はひとつ笑って答えた。  
 「俺は、最初から“ただの人間”じゃなかったのかもな。」

 そして、霧の森の奥へと歩き出した。  
 その背後で、微かな女神の声が重なる。

 ――勇者たちが怯えています。  
 ――けれど、彼らはまだ何も知りません。  
 ――あなたが、すべてを創ったということを。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神眼の鑑定師~女勇者に追放されてからの成り上がり~大地の精霊に気に入られてアイテム作りで無双します

すもも太郎
ファンタジー
 伝説級勇者パーティーを首になったニースは、ギルドからも放逐されて傷心の旅に出る。  その途中で大地の精霊と運命の邂逅を果たし、精霊に認められて加護を得る。  出会った友人たちと共に成り上がり、いつの日にか国家の運命を変えるほどの傑物となって行く。  そんなニースの大活躍を知った元のパーティーが追いかけてくるが、彼らはみじめに落ちぶれて行きあっという間に立場が逆転してしまう。  大精霊の力を得た鑑定師の神眼で、透視してモンスター軍団や敵国を翻弄したり、創り出した究極のアイテムで一般兵が超人化したりします。  今にも踏み潰されそうな弱小国が超大国に打ち勝っていくサクセスストーリーです。  ※ハッピーエンドです

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

処理中です...