転生したら実は神の息子だった俺、無自覚のまま世界を救ってハーレム王になっていた件

fuwamofu

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第10話 勇者との模擬戦でなぜか圧勝

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勇者一行が神殿を去ってから三日後、俺はまた面倒ごとの真っ只中にいた。  
「模擬戦を提案する」――あのレオン=ガルディア勇者がそう言い出したのだ。  
曰く、「神の子の力がどれほどのものか、直接確かめたい」と。  
セレスティアもアリアも猛反対したが、王の許可が出てしまった。  
「王が見たいと言うのなら断れません」とセレスティアがため息をついた時、俺は心の底から社畜時代を思い出した。上命は断れない、と。  

そして今。  
俺は王立訓練場の真ん中に立っている。砂の匂い。剣戟の音が少し離れた場所から響いてくる。  
観覧席には神殿関係者や貴族たちがずらり。王ですら姿を見せていた。  
どこの闘技場かと突っ込みたい。  

目の前には、金の鎧をまとったレオンが剣を構えて立っていた。  
「手加減はしない。全力でいく。君の本質、確かめさせてもらう」  
「いや、手加減してくれよ! 俺戦闘経験ほぼゼロだから!」  
「大丈夫だ、模擬戦だ。命は取らん」  
それでも十分怖いわ!  

試合の監督役である聖堂騎士が声を上げる。  
「模擬戦、開始!」  

掛け声と同時に、レオンが動いた。  
一瞬で視界から消える。風を裂く音だけが残った。  
は? どこ? 思った瞬間、気づけば目の前。すでに剣が振り下ろされる寸前――。  
「危なっ!」  
とっさに両腕を上げた瞬間、ガキィンッ! と硬質な音が鳴り響く。  
光の壁が俺の前に展開され、剣を弾き返していた。  

「何!?」とレオンが目を見張る。  
俺もびっくりだ。完全に反射的に防いだ。  
いや、防いだというより、俺が意識する前に勝手に出た。神印の保護機能、相変わらずチートすぎる。  

周囲がざわつく。貴族の誰かが「今のが結界か?」と声を上げた。  

「次は本気でいく!」  
気づけば、レオンが飛び上がっていた。大剣が空気を切り裂き、真上から落ちてくる。  
その剣の速度と威圧感だけで本来なら圧死してるレベル。  

「来るな来るな来るな来るなぁぁぁっ!」  
恐怖と反射で俺は思わず叫んだ。  
白い光が爆ぜた。  

ドゴォンッ!!  

眩しい閃光が訓練場を包み込み、爆風が砂を巻き上げた。  
観覧席にいた貴族たちが悲鳴を上げて身を伏せる。その中で、俺だけぽかんと立っていた。  
気づくと、レオンは十数メートル先の地面に転がっていた。鎧にひびが入り、剣はすっぽ抜けて地面に突き刺さっている。  

静寂。  

「………………あ、やっちゃった?」  

観衆の口が一斉に開く。  
セレスティアが顔に手を当てて溜息をついた。アリアは両手を握りしめて目を輝かせている。  
「また発動しちゃった……」  
「それを自覚なしでやるのが一番恐ろしいんです!」とセレスティアが叫んだ。  

レオンはやがて身を起こし、息を吐いた。  
「……なるほど。まるで冗談みたいだ。自動防御に自動反撃か」  
「いや、俺ほんとに何もしてない!」  
「それが余計に恐ろしい……」  

王が玉座で立ち上がり、拍手をした。  
「見事! これぞまさしく神の守護者! レオンもよくやった!」  
戦いを茶番のように終わらせた本人は、誉められても困るだけだ。  

勇者は剣を拾い、俺の前にゆっくりと歩み寄った。  
その顔に怒りはなかった。むしろ、どこか清々しい笑みを浮かべていた。  
「負けはしたが、納得した。お前の力、確かに神のもので間違いない。……ただ、それをどう使うか、それだけは間違うな」  
「いや、俺は使う気ないから! 平和に暮らしてたいんだって!」  
「……願わくば、その平和が長く続くことを祈る」  
レオンは静かに去っていった。その背中がまっすぐで、少しだけ格好よかった。  

*****  

模擬戦のあとは神殿中が騒ぎになった。  
報告の書類が飛び交い、神殿評議会は緊急会議を開くという。  
レオンとの戦いは、その場にいた全員が見た。  
結果――俺は王国史上最強の存在として噂されることになった。  
もうどこに行っても「神の御子」呼ばわり。屋台の婆さんですら拝んでくる。  

「ユー様、どうしてそういつも目立ってしまうんですか……」  
セレスティアは頭を抱えていた。  
「いや、俺も聞きたいよ。毎回自動で光ってるんだからこっちが困る」  
アリアがにこにこしながら横から挟む。  
「それがユー様の素敵なところです!」  
「いや、フォローになってない」  

そんな折、勇者レオンから一通の書簡が届いた。  
『私はまもなく北方へ出立する。魔王軍の残党の動きがある。そなたも神の導きに従い、いずれ戦場に立つことになるだろう。その時は同じ剣を交えよう――レオン』  
なんだよ、ゾッとする未来暗示。絶対イヤなフラグだ。  

その夜、神殿のバルコニーで一人風に当たっていると、女神ルナリアの声が聞こえた。  
『ほう、勇者をあっさり倒したか。さすが我が……いや、何でもない』  
「今、“我が子”って言いかけなかった?」  
『気のせいじゃ、気のせい。だが、そなたの力は少しずつ覚醒に近づいておる。制御せぬままだと、いずれ世界が壊れるぞ』  
「その最悪の予告をサラッと言うな!」  
『ふふ、そう身構えるな。そなたの傍らにあの聖女二人がおる限り、まだ均衡は保たれよう』  
「その“均衡”が物理的に修羅場を生んでるんだけどな……」  

ルナリアの声がやがて薄れていく。  

背後から小さな足音がした。振り向くと、セレスティアが立っていた。  
「こんな時間にどうされたのですか?」  
「ちょっと風に当たってただけ」  
「……あなた、笑っていてもどこか寂しそうです」  
「そんなことないよ。俺は今でも十分幸せだ」  
「本心ですか?」  
問いかける声は優しかった。  

俺は少し考える。  
「前の世界じゃ、働いて働いて、誰も信じられなくなって。でも、ここに来て、色んな人に“ありがとう”って言われるようになった。……それが不思議でさ」  
セレスティアの表情が柔らかくなる。  
「あなたは救うための存在ではなく、愛されるための存在なのかもしれませんね」  
「……それ、なんか照れるな」  
二人で静かに笑った。  

夜の王都に風が吹き抜ける。水面が揺れ、遠くの鐘が鳴った。  
その音が、次の不穏な出来事の予感にも聞こえた。  

遠い空の向こうで、深紅の月がぼんやりと昇り始めていた。  
何かが大きく動き出す――そんな夜だった。  

続く
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