転生したら追放された雑用スキルで世界最強になっていた件~無自覚に救国してハーレム王になった元落ちこぼれの俺~

fuwamofu

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第1話 追放された「雑用」

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カイは土埃の舞う訓練場の真ん中で、ぽつんと立ち尽くしていた。  
肩にかけた鞄の中は軽い。今までの旅で得た金貨も、仲間への信頼も、もう残っていなかった。

「はっきり言うけどさ、お前は足手まといなんだよ、カイ。」

鋭い声で言い放ったのは、パーティのリーダー、剣士のライルだった。  
銀の剣をくるりと回し、得意げに笑うその顔には、かつての友情の影すらない。

「俺たちはBランクに昇格した。これ以上、戦いに慎重すぎる奴はいらねぇんだよ。」

「……でも、俺なりに役には立ってきたつもりだ。」

しぼり出した言葉が、乾いた空気に消えた。  
カイのスキルは「雑用」。探索の際の明かりを灯したり、荷物整理を瞬時に行ったり、怪我をした仲間を応急手当てしたり──。  
確かに地味だ。それでも、誰かの役に立てると信じて頑張ってきた。  

「ははっ、雑用スキルで魔物を倒せるとでも思ってんのか?」  
短杖を手にした魔法使いのミーナが鼻で笑う。「姉さん、もう放っとこうよ。」と僧侶のリアナが苦笑した。  
誰もカイをまっすぐ見ようとしない。  

「……分かった。出ていくよ。」  
カイは荷物をまとめ、最後に仲間たちに頭を下げた。  
「今まで、ありがとう。」

「二度と顔見せんなよ、落ちこぼれが!」  
ライルの罵声を背に、カイは振り返らずにギルドを後にした。



日は傾き、街外れの森に足を踏み入れたころには、もう空が紫色に染まりつつあった。  
荷物の軽さが、胸の重さを強調する。空気が冷たく、息を吐くたび白く曇った。

(俺、本当に何もできないのか……?)

スキルウィンドウを開けば、いつもの淡い光文字が浮かぶ。

【固有スキル:雑用(レベル3)】  
【効果:あらゆる補助的行為に補正を与える】

補助的行為って、どこまでが範囲なんだろう。  
食事の用意、治療の応急、物の運搬……確かに補助だ。でも「補助に補正」がかかるって、曖昧すぎる。

ため息をつきながらも、カイは野営の準備を始めた。  
焚き木を集め、火打ち石を打つ。だが火はなかなかつかない。  
焦り始めたそのとき、不思議なことが起きた。

ぱち、と火花が大きく散る。焚き木が一瞬で炎を上げた。  
慣れない強い火力に驚いて後ずさるカイ。

「今の、補正……なのか?」

焚き火の炎は不思議な安定感を放っている。煙がほとんど出ない。  
まるで焚き火が「理想的な状態」に自動で調整されたかのようだった。

試しに、傍の枯れ枝を拾い、ナイフで削ってみる。手が軽い。切れ味も滑らか。  
雑用の一環としての作業——その補助精度が極端に上がっている。

「ひょっとして、これ……普通のスキルじゃないのか?」

それでも信じきれない。だって、自分は“無能”と呼ばれてきたのだ。  
魔物と戦う力も、派手な魔法もない。

思考を中断させたのは、森の奥から聞こえた唸り声だった。  
ガサリ、と草むらが揺れ、金色の瞳が闇の中から現れる。

巨大な灰色の狼。体長は三メートルを超えている。  
その毛並みには魔力の残滓が漂っていた。下級魔獣ではなく、危険指定種だ。

「……アルファウルフ……!」

逃げなくちゃ。そう思った瞬間には、体が固まっていた。  
足が震え、息が詰まる。

「お前……まだ生きてる人間か?」  
声が、聞こえた。  
狼が、喋った。

カイは混乱した。古代語ではない。確かに、今のは共通語だ。  
喉を鳴らして答える。

「な、何を……?」

「我はこの森の番だ。久しく人の気配などなかった。お前の炎……妙なる気配だな。」

その金の瞳が、まっすぐにカイを見据える。  
獣ながら、軽い敵意と、わずかな興味が混じっている。

「まさか、こいつも……俺のスキルの影響で?」

狼は唸りを止め、鼻を鳴らした。「貴様、怯えるな。興味があるだけだ。」

その声の低さに反応し、カイは我に返った。腰の短剣を握る。  
だが、武器を構えた瞬間――視界に光の文字が浮かんだ。

【対象:アルファウルフ】  
【雑用補助開始】  
【調整結果:敵対解除/友好行為推奨】

「はぁっ!?な、なんだこれっ!」

目の前の狼が、唸りをやめ、尻尾を軽く振った。  
まるで、敵ではなく“仲間”を認識したかのように。

そして狼が口を開く。  
「……奇妙だな、人間。何故かお前といると、心が穏やかになる。」

カイの脳裏を雷のようなひらめきが走る。  
“雑用”とは、どんな環境でも最適化し、補助するスキルなのではないか。  
それは、火おこしや荷物運びだけでなく、存在そのもののバランスすら補正する。

もしそうなら——。

「……俺は、もしかして……最強なのか?」

自嘲気味につぶやき、すぐにその考えを振り払う。  
そんな都合のいい話があるはずがない。

けれど、狼は静かに頭を垂れた。  
「我が名はフェンリルト。お前の主従となろう。」

「は、はぁ!? ちょ、ちょっと待っ……!」

「力を貸す。ただし共に戦うなら、心を許せ。」

唐突な展開に呆気を取られながらも、カイは手を差し出した。  
その手を、巨大な狼が鼻先で触れ、契約の光が辺りを包む。  

淡い金色の紋章がカイの手に宿った。  
【新スキル派生:契約補助】の文字が浮かぶ。  

彼の心臓が高鳴った。何かが始まった。  
これがただの“雑用”なわけがない。



夜明け前、森の影を抜け出すと、遠くに新しい街の灯が見えた。  
冷たい風が頬を撫でる。隣には、静かに歩くフェンリルトの姿がある。

「行こう。これから、どうするかは分からないけど。」

「ふむ、人間。お前の旅は、まだ始まったばかりだ。」

カイは一度だけ森を振り返った。  
そこにはもう、追放された孤独な青年の姿はなかった。  
あるのは、運命の歯車を回し始めた“無自覚な最強”だけ。

(続く)
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