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3 早朝の電車
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それから一週間後、港は柿原シーパラダイスへと向かうことになった。
アルバイトOKの連絡をした際に智から「頼みたいのはゴールデンウィークだけど、良かったら練習を兼ねて早めにやってみない?」と言われたからである。
最初は少し悩んだ。
しかし、急にできた休みを前に、やることもやりたいことも港は特になかった。
なので二つ返事で了承したというわけだ。
(朝はまだまだ肌寒いな……)
マンションを出発したのは朝の六時を少し回ったくらい。
柿島シーパラダイスがある柿島町へは、電車に乗って三十分くらいかかる。
約束した時間は八時だが、通勤ラッシュを避けたかった港は、少し早めに出たのだ。
駅にはサラリーマンの姿もちらほら見えた。
その中に、スーツを着ていない自分が混ざっているのは、何とも不思議な感覚だ。
(あー、やっぱり、着てくれば良かったかな)
智から制服はこちらで貸すから私服でいいよ、と言われたのでそうしたのだが、どうにも落ち着かない。
今までは自分もスーツを着て、この中に混ざっていたからだ。
「はぁ……」
何となく、ため息が出た。
そのままICカードを使って改札機を通り抜け、電車に乗る。
電車内は、思ったよりも混んでいた。
スーツ姿の大人に、学生たち。皆、それぞれに携帯電話をいじりながら、電車に揺られている。
(こんな風に周りを見たの、いつぶりだっけ)
これまでは、その日の仕事のことで頭がいっぱいで、周囲を気にする余裕がなかったからかもしれない。
そんなことを考えていたら、たまたま女子高生と目が合った。
彼女はちょっと顔をしかめて目を逸らす。そして携帯電話をいじりつつ、チラチラと港の方を見ている。
(……あれ?)
その視線に嫌悪感のようなものを感じて、港は軽く首を傾げる。
(あっ、もしかして勘違いされてる?)
痴漢とか、そういう類の視線と思われたのかもしれない。
港は内心慌てたが、あまりに急に動いてはそうだと言っているようなものなので、何でもないですよ、と言わんばかりにゆっくりと窓の外へ視線を向けた。
(さすがに不躾だったよな……)
港としては、いつもと違うように見えた電車の中が興味深くて眺めていただけだが、見られていると感じた側からすれば、それはそうかと反省する。
それからは特に嫌な視線を向けられることもなく、女子高生は二駅目で人の波と一緒に降りて行った。
港はホッとしつつ、再び動き出した電車の窓から景色を眺める。
街並みが、だんだん速度を上げて、通り過ぎて行く。
「あ」
その中に、見慣れた建物を見つけて、港は小さく呟いた。
子供のころに両親に連れられて行ったデパートだ。
もっとも今は、その中身は違うものになっているが。
不景気の煽りをくらって閉店してまい、今はおひとり様をターゲットにした外食チェーン店が入っている。
港は行ったことがないが、智は結構美味かったぜ、と言っていた。
(ま、行ってみるのもいいかもな。人生からリタイアする前に、貯金も使い切ってしまいたいし)
そんなことを思いながら、港は電車に揺られ続けたのだった。
アルバイトOKの連絡をした際に智から「頼みたいのはゴールデンウィークだけど、良かったら練習を兼ねて早めにやってみない?」と言われたからである。
最初は少し悩んだ。
しかし、急にできた休みを前に、やることもやりたいことも港は特になかった。
なので二つ返事で了承したというわけだ。
(朝はまだまだ肌寒いな……)
マンションを出発したのは朝の六時を少し回ったくらい。
柿島シーパラダイスがある柿島町へは、電車に乗って三十分くらいかかる。
約束した時間は八時だが、通勤ラッシュを避けたかった港は、少し早めに出たのだ。
駅にはサラリーマンの姿もちらほら見えた。
その中に、スーツを着ていない自分が混ざっているのは、何とも不思議な感覚だ。
(あー、やっぱり、着てくれば良かったかな)
智から制服はこちらで貸すから私服でいいよ、と言われたのでそうしたのだが、どうにも落ち着かない。
今までは自分もスーツを着て、この中に混ざっていたからだ。
「はぁ……」
何となく、ため息が出た。
そのままICカードを使って改札機を通り抜け、電車に乗る。
電車内は、思ったよりも混んでいた。
スーツ姿の大人に、学生たち。皆、それぞれに携帯電話をいじりながら、電車に揺られている。
(こんな風に周りを見たの、いつぶりだっけ)
これまでは、その日の仕事のことで頭がいっぱいで、周囲を気にする余裕がなかったからかもしれない。
そんなことを考えていたら、たまたま女子高生と目が合った。
彼女はちょっと顔をしかめて目を逸らす。そして携帯電話をいじりつつ、チラチラと港の方を見ている。
(……あれ?)
その視線に嫌悪感のようなものを感じて、港は軽く首を傾げる。
(あっ、もしかして勘違いされてる?)
痴漢とか、そういう類の視線と思われたのかもしれない。
港は内心慌てたが、あまりに急に動いてはそうだと言っているようなものなので、何でもないですよ、と言わんばかりにゆっくりと窓の外へ視線を向けた。
(さすがに不躾だったよな……)
港としては、いつもと違うように見えた電車の中が興味深くて眺めていただけだが、見られていると感じた側からすれば、それはそうかと反省する。
それからは特に嫌な視線を向けられることもなく、女子高生は二駅目で人の波と一緒に降りて行った。
港はホッとしつつ、再び動き出した電車の窓から景色を眺める。
街並みが、だんだん速度を上げて、通り過ぎて行く。
「あ」
その中に、見慣れた建物を見つけて、港は小さく呟いた。
子供のころに両親に連れられて行ったデパートだ。
もっとも今は、その中身は違うものになっているが。
不景気の煽りをくらって閉店してまい、今はおひとり様をターゲットにした外食チェーン店が入っている。
港は行ったことがないが、智は結構美味かったぜ、と言っていた。
(ま、行ってみるのもいいかもな。人生からリタイアする前に、貯金も使い切ってしまいたいし)
そんなことを思いながら、港は電車に揺られ続けたのだった。
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