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19 見知らぬ人からの手紙
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二日間の休日が終わり、港は再び、アルバイトをしに柿原シーパラダイスへと向かった。
ついにゴールデンウィークに突入だ。
智の話によれば、この連休期間に向けてウェブ広告も打ってあるそうで、これはなかなか忙しくなりそうである。
「そのための二連休、かな」
二日間しっかりのんびりしたため、身体の疲れはすっかりと取れている。
(よし、頑張るか)
そう思い、着ぐるみの頭を抱えて港が歩いていると、
「あっ、すみません、願屋さん」
水族館の受付を担当する女性スタッフに声をかけられた。
黒髪を頭の後ろでシニヨンにした笑顔がかわいらしい三十代半ばくらいの人で、名前を篠崎美和という。
港は、お客さんからの質問で、受付に連絡を取ることがたまにあって、そういう関係で他のスタッフよりも話す機会が多かった。
「はい、何でしょう?」
「昨日なんですが、鶴巻さんという女性のお客様が、願屋さんを訪ねていらっしゃいまして」
「俺をですか? 鶴巻……うーん、知り合いにはいませんが」
学生時代の付き合いにも、仕事の関係者にも、鶴巻という名前の人間はいない。
結婚して苗字が変わった、という可能性はあるかもしれないが、それでも付き合いのある中で思い当たらない。
「誰ですかねぇ」
港が首を傾げていると、篠崎は手紙を一通渡してくれた。
宛名は「カキペンくんへ」となっている。
(もしかして、普通にお客さん?)
港はピーンときた。
ここでのアルバイト中に会っていた人なら、それは名前を知らないはずだ。
「願屋さんにとても感謝されていましたよ。良かったですね。願屋さんのカキペンくん、すごく評判が良いから」
「いやいや、俺なんて」
「本当ですよ? 親切だし、どんな人にも雑にならずにちゃんと相手をしてくれるって。……実は今までのアルバイトさんたち、あんまり積極的じゃなかったんですよ。大きな声では言えませんけどね」
篠崎さんは少しだけ声を潜めてそう教えてくれた。
その仕草が何となくぐっとてきて、港はほんの少し照れた。
しかし篠崎は特に気付かず、両手の拳を作ってにこっと笑う。
「今日もがんばりましょうね!」
「あ、は、はい! がんばりましょう!」
「それでは!」
篠崎はそう言って、自分の持ち場へ向かって歩いて行く。
その後ろ姿を見送ってから、港は手紙に目を落とした。
「それにしても、誰だろうなぁ……」
カキペンくんをしている間、そんなに記憶に残るほど、誰かに親切なことをした覚えはない。
(……あ、親切とは違うけれど、一人いたな)
アルバイトの初日の休憩中に、自動販売機の近くで出会った女性だ。
そういえば名前を聞いてはいなかったが、自分は名乗っていたなと思い出す。
あの人だろうか?
(いやでも、俺、名乗ったしなぁ……)
宛名がカキペンくんであることに少々疑問を抱きつつ――しかしそろそろ開園時間だ。
手紙を読むのは休憩時間にして、今は仕事に集中しよう。
そう思い、着ぐるみの隙間から懐に上手く手紙をしまうと、港もまた自分の持ち場に向かって歩き出したのだった。
ついにゴールデンウィークに突入だ。
智の話によれば、この連休期間に向けてウェブ広告も打ってあるそうで、これはなかなか忙しくなりそうである。
「そのための二連休、かな」
二日間しっかりのんびりしたため、身体の疲れはすっかりと取れている。
(よし、頑張るか)
そう思い、着ぐるみの頭を抱えて港が歩いていると、
「あっ、すみません、願屋さん」
水族館の受付を担当する女性スタッフに声をかけられた。
黒髪を頭の後ろでシニヨンにした笑顔がかわいらしい三十代半ばくらいの人で、名前を篠崎美和という。
港は、お客さんからの質問で、受付に連絡を取ることがたまにあって、そういう関係で他のスタッフよりも話す機会が多かった。
「はい、何でしょう?」
「昨日なんですが、鶴巻さんという女性のお客様が、願屋さんを訪ねていらっしゃいまして」
「俺をですか? 鶴巻……うーん、知り合いにはいませんが」
学生時代の付き合いにも、仕事の関係者にも、鶴巻という名前の人間はいない。
結婚して苗字が変わった、という可能性はあるかもしれないが、それでも付き合いのある中で思い当たらない。
「誰ですかねぇ」
港が首を傾げていると、篠崎は手紙を一通渡してくれた。
宛名は「カキペンくんへ」となっている。
(もしかして、普通にお客さん?)
港はピーンときた。
ここでのアルバイト中に会っていた人なら、それは名前を知らないはずだ。
「願屋さんにとても感謝されていましたよ。良かったですね。願屋さんのカキペンくん、すごく評判が良いから」
「いやいや、俺なんて」
「本当ですよ? 親切だし、どんな人にも雑にならずにちゃんと相手をしてくれるって。……実は今までのアルバイトさんたち、あんまり積極的じゃなかったんですよ。大きな声では言えませんけどね」
篠崎さんは少しだけ声を潜めてそう教えてくれた。
その仕草が何となくぐっとてきて、港はほんの少し照れた。
しかし篠崎は特に気付かず、両手の拳を作ってにこっと笑う。
「今日もがんばりましょうね!」
「あ、は、はい! がんばりましょう!」
「それでは!」
篠崎はそう言って、自分の持ち場へ向かって歩いて行く。
その後ろ姿を見送ってから、港は手紙に目を落とした。
「それにしても、誰だろうなぁ……」
カキペンくんをしている間、そんなに記憶に残るほど、誰かに親切なことをした覚えはない。
(……あ、親切とは違うけれど、一人いたな)
アルバイトの初日の休憩中に、自動販売機の近くで出会った女性だ。
そういえば名前を聞いてはいなかったが、自分は名乗っていたなと思い出す。
あの人だろうか?
(いやでも、俺、名乗ったしなぁ……)
宛名がカキペンくんであることに少々疑問を抱きつつ――しかしそろそろ開園時間だ。
手紙を読むのは休憩時間にして、今は仕事に集中しよう。
そう思い、着ぐるみの隙間から懐に上手く手紙をしまうと、港もまた自分の持ち場に向かって歩き出したのだった。
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