願屋港は幽霊さんたちの雑談相手

石動なつめ

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22 手紙

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 昼食を終えた港は、そのままそこで少し休みつつ受け取った手紙を読むことにした。

『拝啓、カキペンくん様』

 そんな書き出しから手紙は始まる。
 ちなみにカキペンくんは『くん』までが名前だ。なのでそこに、様とか、さんとか、敬称がつくのはおかしなことではない――智曰くだが――らしいが、実際に目にすると不思議な感覚になった。
 何となくむずかゆい気持ちになりながら、港は手紙を読み進める。

『突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。私は刀根市とねしに住む鶴巻華と申します』

 手紙の差出人はどうやら柿原市のお隣の市の人らしい。
 ちなみに刀根市は、港の自宅マンションのちょうど反対側にある市だ。
 へぇ、と思いながら読んでいると、

『実は夢で、亡くなった親友と再会し、その時にあなたのことを聞いたのです』

 ――急にオカルトじみた話が出てきた。
 手紙の文章を追っていた目が思わず止まる。

(ああ、でも、そういえばSNSにもそういう投稿があったっけ)

 先ほど智が見せてくれたツブヤキッターだ。
 ゆきみやの店の人が、亡くなった父親と夢で再会することが出来たと投稿していた。
 カキペンくんのおかげでとの部分は少々良く分からないが。

(となると、もしかしたらこれも同じような感じだろうか)

 うーん、と心の中で唸りながら、港は再び手紙を読み始める。

『その子は恋人に騙されて、それがショックで自ら命を絶ってしまいました。けれど夢で会った彼女は、カキペンくんが話を聞いて励ましてくれたおかげで元気が出たと言っていました。そして私と連絡を取ってみたらどうかと背中を押してくれたとも。都合の良い夢だと思われるかもしれません。ですが、もう会えないと思っていた彼女に再び会うことが出来て、とても嬉しかったのです』

 読んでいる内に、手紙の送り主の親友が誰なのか港の頭にふわっと浮かんだ。
 アルバイト初日に自動販売機のところで出会ったあの女性だ。

(あの人も亡くなっていたのか……)

 心の中でぽつりと呟く。
 同時に、別れ際に彼女が自分に向けて言った言葉を思い出した。

『願屋さん。あなたは、まだ、こちらにいてくださいね。私のおすすめです』

 あれはゆっくり休んでくださいねとか、そんな意味の言葉ではなかった。
 生きていてくださいね、だ。

「…………」

 それを理解して、港は何だかちょっと泣きたくなった。
 人生をリタイアしたいと言った自分を、彼女は引き留めてくれたのだ。
 見ず知らずの自分を心配してくれたのだ。

「…………こりゃ、出来ないよなぁ」

 だっておすすめされたんだから。
 港は小さく笑いながら手紙を読み続けた。
 ちなみにその酷い恋人は、コンビニエンスストアへ強盗に入り捕まったらしい。それを知って港は少しすっきりした。自業自得とはこのことである。

『あの子も、私も、あなたに感謝しています。ずっと悲しくて苦しかったけれど、ようやく、前を向いて歩いて行けそうです。本当にありがとうございました』

 手紙はそう締めくくられていた。
 そうか……と港は小さく息を吐く。

「……俺の方こそ、ありがとうございます」

 そして手紙に向かって、港もまた小さな声でお礼を言ったのだった。
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