22 / 34
22 手紙
しおりを挟む
昼食を終えた港は、そのままそこで少し休みつつ受け取った手紙を読むことにした。
『拝啓、カキペンくん様』
そんな書き出しから手紙は始まる。
ちなみにカキペンくんは『くん』までが名前だ。なのでそこに、様とか、さんとか、敬称がつくのはおかしなことではない――智曰くだが――らしいが、実際に目にすると不思議な感覚になった。
何となくむずかゆい気持ちになりながら、港は手紙を読み進める。
『突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。私は刀根市に住む鶴巻華と申します』
手紙の差出人はどうやら柿原市のお隣の市の人らしい。
ちなみに刀根市は、港の自宅マンションのちょうど反対側にある市だ。
へぇ、と思いながら読んでいると、
『実は夢で、亡くなった親友と再会し、その時にあなたのことを聞いたのです』
――急にオカルトじみた話が出てきた。
手紙の文章を追っていた目が思わず止まる。
(ああ、でも、そういえばSNSにもそういう投稿があったっけ)
先ほど智が見せてくれたツブヤキッターだ。
ゆきみやの店の人が、亡くなった父親と夢で再会することが出来たと投稿していた。
カキペンくんのおかげでとの部分は少々良く分からないが。
(となると、もしかしたらこれも同じような感じだろうか)
うーん、と心の中で唸りながら、港は再び手紙を読み始める。
『その子は恋人に騙されて、それがショックで自ら命を絶ってしまいました。けれど夢で会った彼女は、カキペンくんが話を聞いて励ましてくれたおかげで元気が出たと言っていました。そして私と連絡を取ってみたらどうかと背中を押してくれたとも。都合の良い夢だと思われるかもしれません。ですが、もう会えないと思っていた彼女に再び会うことが出来て、とても嬉しかったのです』
読んでいる内に、手紙の送り主の親友が誰なのか港の頭にふわっと浮かんだ。
アルバイト初日に自動販売機のところで出会ったあの女性だ。
(あの人も亡くなっていたのか……)
心の中でぽつりと呟く。
同時に、別れ際に彼女が自分に向けて言った言葉を思い出した。
『願屋さん。あなたは、まだ、こちらにいてくださいね。私のおすすめです』
あれはゆっくり休んでくださいねとか、そんな意味の言葉ではなかった。
生きていてくださいね、だ。
「…………」
それを理解して、港は何だかちょっと泣きたくなった。
人生をリタイアしたいと言った自分を、彼女は引き留めてくれたのだ。
見ず知らずの自分を心配してくれたのだ。
「…………こりゃ、出来ないよなぁ」
だっておすすめされたんだから。
港は小さく笑いながら手紙を読み続けた。
ちなみにその酷い恋人は、コンビニエンスストアへ強盗に入り捕まったらしい。それを知って港は少しすっきりした。自業自得とはこのことである。
『あの子も、私も、あなたに感謝しています。ずっと悲しくて苦しかったけれど、ようやく、前を向いて歩いて行けそうです。本当にありがとうございました』
手紙はそう締めくくられていた。
そうか……と港は小さく息を吐く。
「……俺の方こそ、ありがとうございます」
そして手紙に向かって、港もまた小さな声でお礼を言ったのだった。
『拝啓、カキペンくん様』
そんな書き出しから手紙は始まる。
ちなみにカキペンくんは『くん』までが名前だ。なのでそこに、様とか、さんとか、敬称がつくのはおかしなことではない――智曰くだが――らしいが、実際に目にすると不思議な感覚になった。
何となくむずかゆい気持ちになりながら、港は手紙を読み進める。
『突然お手紙を差し上げる失礼をお許しください。私は刀根市に住む鶴巻華と申します』
手紙の差出人はどうやら柿原市のお隣の市の人らしい。
ちなみに刀根市は、港の自宅マンションのちょうど反対側にある市だ。
へぇ、と思いながら読んでいると、
『実は夢で、亡くなった親友と再会し、その時にあなたのことを聞いたのです』
――急にオカルトじみた話が出てきた。
手紙の文章を追っていた目が思わず止まる。
(ああ、でも、そういえばSNSにもそういう投稿があったっけ)
先ほど智が見せてくれたツブヤキッターだ。
ゆきみやの店の人が、亡くなった父親と夢で再会することが出来たと投稿していた。
カキペンくんのおかげでとの部分は少々良く分からないが。
(となると、もしかしたらこれも同じような感じだろうか)
うーん、と心の中で唸りながら、港は再び手紙を読み始める。
『その子は恋人に騙されて、それがショックで自ら命を絶ってしまいました。けれど夢で会った彼女は、カキペンくんが話を聞いて励ましてくれたおかげで元気が出たと言っていました。そして私と連絡を取ってみたらどうかと背中を押してくれたとも。都合の良い夢だと思われるかもしれません。ですが、もう会えないと思っていた彼女に再び会うことが出来て、とても嬉しかったのです』
読んでいる内に、手紙の送り主の親友が誰なのか港の頭にふわっと浮かんだ。
アルバイト初日に自動販売機のところで出会ったあの女性だ。
(あの人も亡くなっていたのか……)
心の中でぽつりと呟く。
同時に、別れ際に彼女が自分に向けて言った言葉を思い出した。
『願屋さん。あなたは、まだ、こちらにいてくださいね。私のおすすめです』
あれはゆっくり休んでくださいねとか、そんな意味の言葉ではなかった。
生きていてくださいね、だ。
「…………」
それを理解して、港は何だかちょっと泣きたくなった。
人生をリタイアしたいと言った自分を、彼女は引き留めてくれたのだ。
見ず知らずの自分を心配してくれたのだ。
「…………こりゃ、出来ないよなぁ」
だっておすすめされたんだから。
港は小さく笑いながら手紙を読み続けた。
ちなみにその酷い恋人は、コンビニエンスストアへ強盗に入り捕まったらしい。それを知って港は少しすっきりした。自業自得とはこのことである。
『あの子も、私も、あなたに感謝しています。ずっと悲しくて苦しかったけれど、ようやく、前を向いて歩いて行けそうです。本当にありがとうございました』
手紙はそう締めくくられていた。
そうか……と港は小さく息を吐く。
「……俺の方こそ、ありがとうございます」
そして手紙に向かって、港もまた小さな声でお礼を言ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる