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第三章 若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
094◆ディー編◆ 03.見つかる証拠、晴れない嫌疑
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ディートフリートが父王であるラウレンツの元へ行くと、王は疲れた顔をして王座に座っている。
人払いがされて、親子二人だけの言葉が広い王の間で響いた。
「父上。ホルストの件でお話があります」
「あやつが不正を働くなど、あり得ないというのだろう。そんなこと、私が一番よくわかっておる……っ」
王とホルストの関係は長い。誰よりも王が、彼の嫌疑を晴らしたいに違いなかった。王は悔しそうに顔を歪め、唇を噛んでいる。
「しかし、次々に証拠が出てきおった……証言者もおる!」
「その証言者は、真の犯人に金を握らされたか脅されているかに過ぎないでしょう」
「今、その件に関して証言者を尋問している。だが期待はできん……証言者を長時間拘束することも拷問することも禁じられているからな」
お金を握らせて吐かせる方法を、王も考えてはいるだろう。
多額のお金を渡せば、犯人の方を売ってくれるかもしれない。
だがもし証言が覆らなかった場合、そんなことをした王家の信用は失墜してしまう。
「まさか、諦めたりはしませんよね?」
「当たり前だ。私はあやつを……ホルストを信じておる。ホルストが無実である証拠を探す!」
父王の頼もしい言葉を聞いて、ディートフリートは王の間を出た。
しかし、何日経っても結局は見つからなかったのだ……ホルストの、無実に繋がるようなものは。
ホルストの罪が確定すると、ユリアーナとディートフリートの結婚は絶望的だ。
ルーゼンとシャインも走り回ってくれたが、結局はどれも徒労に終わっていた。
最終的に、ホルストの嫌疑を晴らすことは……できなかった。
憔悴したラウレンツに呼び出されたディートフリートは、この世で一番聞きたくない言葉を言われてしまう。
「ディートフリートよ。明日の審議会が終わった後、ユリアーナとの婚約を破棄しろ」
予想はしていたが、実際に耳にすると目の前が真っ暗になった。
「……父上……っ」
「どうしようもない……これは、命令だ」
ユリアーナとの婚約を破棄した後で、ホルストの罪が世間に公表されるのだろう。
ホルストの無実を信じてはいても、それを証明できない以上、彼は犯罪者だ。そして、ユリアーナは犯罪者の娘となる。
王家は犯罪者の血縁を、迎え入れるわけにはいかないのだ。
「どうにも、ならないのですか! ユリアーナは……ユリアーナは、どうなるんです!?」
ホルストのやったことは重罪だ。最悪の事態を考えて、ディートフリートはゾッとした。
「お願いです、父上! ユリアーナは、ユリアーナと母君には、どうか温情を」
「わかっている。お前も審議会に出席せよ。周りを説得し、自分でユリアーナを守れ」
「ありがとうございます!!」
頭がクラクラとした。もう、ユリアーナと一緒にはなれないのだと思うと。
しかし、今すべきことはユリアーナの処遇を軽くすることだ。嘆いていてはなにも守れない。
この国は、王制とはいっても独裁ではないのだ。守るべき法が制定されていて、国民はもちろん、王でさえもそれを遵守しなければならない。それがこのハウアドル王国の治世を守るということなのだから。
頭を抱えながら部屋に戻ると、二人の騎士が心配そうにディートフリートを覗いてきた。
「王子……どうなりましたか」
遠慮がちなシャインの問いに、ディートフリートはギリと拳を握りながら答える。
「ホルストの嫌疑は晴れなかった。明日の審議会で、アンガーミュラー家の処遇が決まる。決まれば、僕はすぐにでもユリアに婚約破棄を言い渡さなければならない」
「っく……」
「そんな!!」
シャインは端正な顔を曇らせ、ルーゼンは眉を吊り上げる。
「王子! どうしてそんなに冷静でいられるんですか!」
ルーゼンの言葉に、思わずドンと机に拳を叩きつける。
「冷静なわけないだろ!! どうしろっていうんだよ!! やれることは全部やった!! やったんだ!!」
普段やらないディートフリートの行動に、ルーゼンはハッとして自分を責めるように頭を下げた。
「申し訳ありませんでした……つらいのは、王子なのに……」
「僕もごめん……ルーゼンに当たっても、どうしようもないっていうのに……」
部下の前だというのに、涙が溢れてくる。
ユリアーナと、結婚できない。それだけではなく、明日の審議会次第ではもう二度と会えなくなるかもしれない。
十歳の頃からずっとずっと大切にしてきたユリアーナ。
一緒に遊んで、一緒に勉強して。
王と王妃になるために、互いに努力し合ってきた戦友でもあった。
だいすきなユリアーナと結婚することを、つゆほどにも疑わなかったのだ。
なのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
ユリアーナと別れなければいけないことが、こんなにもつらい。
自分の口で婚約破棄を言い渡し、愛する人を傷つけなければいけないことが、こんなにも。
「う……くう、ユリア……ユリアぁぁあ…………っ」
「王子……」
「出ましょう、ルーゼン」
シャインとルーゼンが部屋を出て行く音がする。
今は、泣いている場合ではない。明日の審議会のための準備をしておかなければいけないのだ。ユリアーナが、少しでも自由に生きられるように。
ディートフリートは溢れる涙を拭きながら、審議会に向けて準備を始めた。
人払いがされて、親子二人だけの言葉が広い王の間で響いた。
「父上。ホルストの件でお話があります」
「あやつが不正を働くなど、あり得ないというのだろう。そんなこと、私が一番よくわかっておる……っ」
王とホルストの関係は長い。誰よりも王が、彼の嫌疑を晴らしたいに違いなかった。王は悔しそうに顔を歪め、唇を噛んでいる。
「しかし、次々に証拠が出てきおった……証言者もおる!」
「その証言者は、真の犯人に金を握らされたか脅されているかに過ぎないでしょう」
「今、その件に関して証言者を尋問している。だが期待はできん……証言者を長時間拘束することも拷問することも禁じられているからな」
お金を握らせて吐かせる方法を、王も考えてはいるだろう。
多額のお金を渡せば、犯人の方を売ってくれるかもしれない。
だがもし証言が覆らなかった場合、そんなことをした王家の信用は失墜してしまう。
「まさか、諦めたりはしませんよね?」
「当たり前だ。私はあやつを……ホルストを信じておる。ホルストが無実である証拠を探す!」
父王の頼もしい言葉を聞いて、ディートフリートは王の間を出た。
しかし、何日経っても結局は見つからなかったのだ……ホルストの、無実に繋がるようなものは。
ホルストの罪が確定すると、ユリアーナとディートフリートの結婚は絶望的だ。
ルーゼンとシャインも走り回ってくれたが、結局はどれも徒労に終わっていた。
最終的に、ホルストの嫌疑を晴らすことは……できなかった。
憔悴したラウレンツに呼び出されたディートフリートは、この世で一番聞きたくない言葉を言われてしまう。
「ディートフリートよ。明日の審議会が終わった後、ユリアーナとの婚約を破棄しろ」
予想はしていたが、実際に耳にすると目の前が真っ暗になった。
「……父上……っ」
「どうしようもない……これは、命令だ」
ユリアーナとの婚約を破棄した後で、ホルストの罪が世間に公表されるのだろう。
ホルストの無実を信じてはいても、それを証明できない以上、彼は犯罪者だ。そして、ユリアーナは犯罪者の娘となる。
王家は犯罪者の血縁を、迎え入れるわけにはいかないのだ。
「どうにも、ならないのですか! ユリアーナは……ユリアーナは、どうなるんです!?」
ホルストのやったことは重罪だ。最悪の事態を考えて、ディートフリートはゾッとした。
「お願いです、父上! ユリアーナは、ユリアーナと母君には、どうか温情を」
「わかっている。お前も審議会に出席せよ。周りを説得し、自分でユリアーナを守れ」
「ありがとうございます!!」
頭がクラクラとした。もう、ユリアーナと一緒にはなれないのだと思うと。
しかし、今すべきことはユリアーナの処遇を軽くすることだ。嘆いていてはなにも守れない。
この国は、王制とはいっても独裁ではないのだ。守るべき法が制定されていて、国民はもちろん、王でさえもそれを遵守しなければならない。それがこのハウアドル王国の治世を守るということなのだから。
頭を抱えながら部屋に戻ると、二人の騎士が心配そうにディートフリートを覗いてきた。
「王子……どうなりましたか」
遠慮がちなシャインの問いに、ディートフリートはギリと拳を握りながら答える。
「ホルストの嫌疑は晴れなかった。明日の審議会で、アンガーミュラー家の処遇が決まる。決まれば、僕はすぐにでもユリアに婚約破棄を言い渡さなければならない」
「っく……」
「そんな!!」
シャインは端正な顔を曇らせ、ルーゼンは眉を吊り上げる。
「王子! どうしてそんなに冷静でいられるんですか!」
ルーゼンの言葉に、思わずドンと机に拳を叩きつける。
「冷静なわけないだろ!! どうしろっていうんだよ!! やれることは全部やった!! やったんだ!!」
普段やらないディートフリートの行動に、ルーゼンはハッとして自分を責めるように頭を下げた。
「申し訳ありませんでした……つらいのは、王子なのに……」
「僕もごめん……ルーゼンに当たっても、どうしようもないっていうのに……」
部下の前だというのに、涙が溢れてくる。
ユリアーナと、結婚できない。それだけではなく、明日の審議会次第ではもう二度と会えなくなるかもしれない。
十歳の頃からずっとずっと大切にしてきたユリアーナ。
一緒に遊んで、一緒に勉強して。
王と王妃になるために、互いに努力し合ってきた戦友でもあった。
だいすきなユリアーナと結婚することを、つゆほどにも疑わなかったのだ。
なのに、どうしてこんなことになってしまったのか。
ユリアーナと別れなければいけないことが、こんなにもつらい。
自分の口で婚約破棄を言い渡し、愛する人を傷つけなければいけないことが、こんなにも。
「う……くう、ユリア……ユリアぁぁあ…………っ」
「王子……」
「出ましょう、ルーゼン」
シャインとルーゼンが部屋を出て行く音がする。
今は、泣いている場合ではない。明日の審議会のための準備をしておかなければいけないのだ。ユリアーナが、少しでも自由に生きられるように。
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