生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
28 / 95
七氏と巫女の出会い

8-1

しおりを挟む
 我は自分の両親が、他の家族より仲が良いと思っている。
 その理由は、今、目の前で繰り広げている二人の食事光景が物語っているのだ。

「九尾様、こちらは私が丹精込めて作りました、天ぷらでございます。火を扱うのには慣れておりませんが、練習を沢山しました。いかがでしょう、食べてみてください。はい、あーん」

「うむ、あーん。むっ、前より温かく、美味いぞ! さすがワシの嫁だ!」

 息子である我の目の前でも、外でも。そこでも構わずイチャイチャする両親。
 
 ――――はぁ、仲が良いのは良いのだが、こちらとしてはもう少し自重してほしいものだ。 
 見ているこっちが恥ずかしいぞ。

「あら、七氏。食べないの? 具合でも悪いのかしら」

「甘いものを目から摂取しておりますので、お気になさらないでください、母上」

「それはどういう意味かしら?」

「胸やけしそうですが、具合は悪くありませんので大丈夫という意味です。ご飯もしっかりと食べますので、お気になさらず」

 首を傾げておるが、父上が母上の裾を引っ張り、次をせがんだためかすぐに目を離し、また食べ合いっこをし始めた。
 
 ため息を吐きながらご飯を食べ終え、いつものように部屋に戻ろうと立ち上がると、何故か父上に止められた。


「七氏、明日あすは暇か?」


「はい、特に予定はありません。仕事の手伝いでしょうか?」

「似たようなものだ。七氏、明日は現代へ行く用事がある。共にかぬか?」

 現代へ同行ということか? 
 今まで、我がいくら行きたいと言っても、危険だからと連れ出してはくれなかったのに。
 
 とうとう我も、父上にお近づきになれたということか。
 大人に一歩、近づいたな。嬉しい限りだ!

「行きたいです!!」

「くくっ、そうか。まだ少々不安ではあるが、ワシと共になら問題ないだろう。だが、約束してくれ」

「約束、ですか?」

 いきなり真剣な表情になった父上。普段ヘラヘラしている父上が急に真剣になると、なんだか怖いぞ。
 何を言われてしまうのだ、我。覚悟して聞かねば……。

「あぁ。気分が悪くなったらすぐに言うこと。あと、ワシから絶対に離れないこと。この約束を破れば、二度と現代へ連れては行かぬからな?」

「は、はい…………」

 真剣から表情から、笑顔になった父上。
 その笑顔、怖いです。黒いですよ、父上。

 だが、父上が警戒するのも、無理は無い。
 今まで自由に過ごしてきた自覚はある。

 仕事ばかりしている父上に構ってほしくて襖を壊したり、廊下を走り回ったり。
 一度、母上に後ろから突進してしまい、沸騰していたお湯が顔にかかったことがあったな。

 あの時の母上は、泣きそうな顔を浮かべ何度も謝っていた。

 我が構ってほしくてやってしまったというのに、母上は自分を責め何度も謝罪していた、させてしまった。
 父上は事情を聞いて、何度も母上に『大丈夫だ』と『お前のせいではない』と言っていた。
 
 我も何度も母上と父上に謝り、その場は収まったが……。
 ほとぼりが冷めた頃に、一日中怒られた記憶が蘇る。

 いや、怒りというより、諭すような感じ。しかも今と似たような黒い笑みを浮かべて……。

 我はもう、絶対に父上を怒らせてはならないと心に誓った出来事だったな。

「旦那様、本当に大丈夫なのでしょうか。現代の空気は、我々あやかしにとって毒となります。体調を崩さないか心配なのですが…………」

「それも含めての提案だ。七氏には、ワシの後を継いでもらわんとならん。そのためには、現代の空気にも慣れ、偵察や、現代にいるあやかしの様子を確認する術を手にしてもらうのだ」

「ですが……」

「今はまだ、体調を崩したとしてもすぐに戻ってこれる。少々手荒だが、問題はないだろう」

 父上の膝に乗っている母上が父上を見上げ、心配そうに眉を下げて聞いている。 
 そこまで心配するくらい、現代の空気は汚いらしい。
 
 我が住んでいるこの世界は空気が澄んでおり、風も心地よい。昼寝には最適の環境だ。
 この空気に慣れていると、現代の空気は気持ち悪くなる。だがら、少しでも気分が崩れたら教えてくれという事だな。

「恐らくだが、最初は現代に行っただけで体を崩す。七氏が体調を崩しても良いように、氷璃は氷枕やタオルなどを準備しておいてくれ」

「わかりました」

 え、体調を壊してもいいようにの事前準備? おかしくないか?
 ……………………現代とは、恐ろしい所なんだな。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...