生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

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旦那様と許嫁……?

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 今日は旦那様は、お部屋に籠ると言っておりました。
 理由は、お仕事が山積みになっているから。

 珍しいことです。
 いつもお仕事は早めに終わらせる旦那様なのですが……。

 私はいつものように、女中さん達のお手伝いをしております。

 お休みになってくださいと言われましたが、部屋にいても特にやることがないため、お願いして手伝わせていただいております。

「今日もいい天気ですね、二口女さん」

「えぇ、洗濯物が良く乾きそうで何よりです」

 二口女さんと共に洗濯籠を持ち、干し竿に洗濯物を干していきます。

 今の季節は、夏。
 晴天が広がり、陽光が木の隙間を縫い私達へ降り注ぐ。

 気温が高く、汗が流れてしまいます。
 化粧が落ちないか心配ですが、こればかりは仕方がありません。

 夏は暑いもの。耐えるのですよ、華鈴。

「むっ!!」

「だ、大丈夫ですか!?」

「だ、大丈夫です……」

 髪が、風に吹かれ視界を遮られてしまいました。
 簡単にでも結べば良かったです。

 私が髪を苦々しい顔で見つめていたからでしょうか。
 二口女さんが笑みを浮かべ、私の後ろに立ちます。

「失礼致しますね、奥様。動かないでください」

「え、は、はい」

 どうしたのでしょうか。
 ……?? 髪を触られていますね。結ってくださっているみたいです。

 数秒後、二口女さんは満足し、私の前に移動しました。

「ふふっ、簡易的になってしまいましたが、奥様はなんでもお似合いですね」

 簡易的? ど、どのように髪を結って下さったのでしょうか。
 触りたいのですが、無闇に触ると崩してしまわれないか怖くて触れません。

 うずうずしていると、二口女さんが一つの手鏡を出して私に渡してくださいました。

 覗き込むと、私の髪は後ろで一つにまとめられております。
 これは、現代で言うとこのポニーテールと呼ばれている髪型ですね。

「ありがとうございます!」

「いえ、少々気にしているように見えたため。では、残りを干していきましょう」

「はい!」

 二口女さんは、本当に人の事をよく見ております。
 少しの変化にも気づき、さりげなく手助けをしてくださいます。

 私も二口女さんみたいな出来る女になれるように、日々頑張りますよ!!

「おー!!」

「ふふっ、気合十分ですね。ですが、洗濯物を落してしまいそうですよ、大丈夫ですか?」

「っ!? わっ、わぁっ!」

 手から洗濯物が滑り落ちるところでした。
 慌てて抱きしめると、二口女さんが口に手を当てくすくすと笑います。

 うぅ、二口女さんのようになるには、まだまだ時間がかかりそうです………。

 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・

「はぁぁぁぁぁ……。まいった……」

 部屋で一人、一枚の手紙を見て思わずため息を吐いてしまった。
 だが、それは仕方がない。仕方がないと、許して頂きたい。

「むむむ……。あの娘に会いに行かんと行かぬのか……」

 華鈴には仕事で部屋に籠ると言ってしまったが……。
 いや、仕事と言えば仕事ではあるから嘘ではないのだが……。

 今我が悩んでおるのは、一枚の手紙に書かれている内容と、送り主について。

「宴のお誘い……。普通の宴なのなら嬉しいが、相手が相手……。我は、この一家の娘に会いたくはないぞ」

 行きたくない、断りたい。

「だが、ここでお誘いを断れば、今後何をされるかわからぬ……」

 ぐぬぬぬぬぬ、どうすればっ──!

 悪寒、後ろ?
 振り向くと、部屋への被害がないように風が突如現れ、渦を巻いていた。
 数秒、何もせず待っていると、風が弱まり九尾の狐が姿を現した。

 九本の尾、白銀の毛並み。
 人の大きさはありそうな九尾の狐は、赤い瞳を向けてきた。

「――――可愛いお姿をしておりますね、父上。今日はそちらのお気分なのですか?」

「可愛いは余計だ七氏!! あと、気分とはなんだ気分とは! そうではないことくらいわかるだろう!!」

 ペチペチと畳を叩きながら怒っても怖くはないぞ、父上。

「まったく、ほれ」

 空中に跳びくるりと一回転。
 父上はいつもの男性の姿へと一瞬のうちに姿を変えた。

「空間移動は体が出来る限り小さい方が体力を消費せんでいいのだ。それくらいわかるだろう」

「あぁ、確かにそうでしたね。今はそれどころではなかった為、思考が回りませんでした」

 鼻を鳴らし、腕を組み我を見下ろしてくる父上。
 威圧的な視線ですが、もう慣れました。

 目を逸らすと、父上はテーブルの上に置かれている手紙を見て片眉を上げた。
 ヒョイと拾い上げ、手紙を読み始める。

 文字に慣れている父上はすぐに読み終わり、苦笑いを浮かべ我を見てきた。

「なるほど。これに参っていたのか」

「はい、我は行きたくないです」

「正直、ワシも行かせたくはない。この家は、少々癖が強いからなぁ」

 頭をガシガシと掻き、手紙を我に返す。

 この手紙は、ある一家から出された宴のお誘い。
 その一家の名前は、猫花家みょうかけ

 猫又というあやかしの家。
 自由奔放で気高い。プライドが高すぎるため、周りからは煙たがられていたはずだ。

 だが、この一家はあやかしの世界では、我ら九火家の次に大きな家柄。

 商売上手で、様々な場所の有名品を輸入しており利益をしっかりと出している。
 だからなのか、父上は自由に動く猫花家に対し、何も言わんのだ。

 適度な距離を保つのが一番だろうと、父上は我に話してくれていた。
 だが、それは我が父上の仕事で共に猫花家に行ったことで色々と崩れてしまったのだ。

「むむむ……。猫花家には一応送っているはずなのだがなぁ、七氏に配偶者がいるということは……」

「そうですよね。それなのに、なぜこのような手紙を……」

「まだ七氏を狙っておるのだろうな。猫花家の愛娘、猫花静稀が……」

 …………はぁぁぁぁぁ。
 何故か我は、猫花家の一人娘である猫花静稀に気に入られてしまい、勝手に許嫁にされてしまったのだ。
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