生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
70 / 95
旦那様と許嫁……?

12-8

しおりを挟む
「――――まったく、何を考えておるのだ、雫よ」

「何を怒っているのかしら。あぁ、息子を傷つけられたことを怒っているの? それは申し訳なかったわね。でも、女性に負けて傷つけられているそちらの息子にも非はあるのではなくて?」

 っ、それは、そうだ。
 さきほど、父上にも言われてしまった。
 非道になれ、と。

「何を言っておる。実力だけであれば、七氏なら一瞬で静稀など殺せる」

「っ、そんなこと……。現に今――……」

「七氏は、ワシと違って優しいからな。まだ、非道な判断ができんのだ」

 父上が、我を見る。
 その目は、悲しそうにも見えるが、温かい。
 親の目をしている。

「だが、それも、こやつの個性だと思い、ワシは気にしてはおらん。少々物は言うがな。だが、この娘はどうだ? 自分の欲のために牙を向け、相手を傷つけ無理やり自身のモノにしようとする。まるで、昔のぬしのようだ」

 冷たい瞳で言うと、雫様が顔を真っ赤にし怒り出した。

「黙りなさい!!! やはり、貴方はいけ好かないわ。あの時、殺しておくべきだった!!」

の間違いだろう」

「黙りなさい!!!」

 っ、雫様が父上に爪を向けた!!

「しねぇぇぇぇえええ!!」

「父上!!」

 いきなり前ぶりもなく駆けだした雫様。
 我が駆けだそうとしたが、父上は指を鳴らした。

 瞬間、雫様が急に首を抑え苦しみ出した。

「な、何が?」

 父上を見ると、冷たい目を浮かべている。
 何を思っての、目ですか? ものすごく、冷たく、どこか哀れんでいるような目。

「さて、興覚めだ。帰るぞ、七氏」

「ち、父上?」

 まだ、後ろでは雫様が「待ちなさい!!」と叫んでいるが、父上は振り向きすらしない。

 廊下を歩き、外へと向かう。
 我もついて行くが、一つ気がかりがあった。

 ――――静稀は、大丈夫だろうか。

 ※

「――――ちっ、いつの間に……」

 外に出ると、馬車が無くなっていた。
 我らを帰さないようにの手段なのだろう。

 まぁ、馬車が無くても帰れるのだが……。

「気になるか?」

「…………はい。今まで、沢山困らされてきました。ですが、親にあのようなことを言われてしまったら、子供はどうなってしまうのだろうか。大人だろうと、傷ついてしまうのではないかと思いまして」

 だが、我が戻ったところで、場を鎮めることなど出来るわけがない。
 それどころか、もっと場を乱してしまう可能性がある。ここは、静かに去るしかないのか。

 だが、最後に見た静稀は、今まで見た事がないほどに顔を青くし、今にも泣き出しそうになっていた。
 その表情を一言で表すのなら、絶望。

「――――今は、我慢してもらうしかない。こちらはこちらで動くぞ」

「う、動く、とは?」

「今回の件は、ワシらだけでは解決できんのだ。氷璃にも話さんとならん」

 父上は目を細め、心苦しそうに言う。
 母上も猫花家と関わりがあるという事なのだろうか。

 ※

「――――あ、あれ? 旦那様?」

「っ、九尾様」

 九尾様と旦那様を見送った後、何故か氷璃様の顔が青く心配だったため、共に部屋でお話をしておりました。
 楽しくお話をしていましたが、そこまで時間は経っていないはず、忘れ物でしょうか?

 いや、ただの忘れ物ではありませんね。
 お二人とも、何故か表情が暗い。何かあったのは確実。

 九尾様が部屋の中に入り、まっすぐ氷璃様の隣へと移動します。
 耳打ちしたかと思えば、お話しして笑っていた氷璃様の顔がまたしても青く、怯えたような表情を浮かべてしまいました。

「……わかりました」

 九尾様の話を聞き、お二人は廊下へといなくなってしまいます。
 残されたのは私と、旦那様の二人だけ。

 ど、どうしたのでしょうか。
 聞いても、いいのでしょうか。でも、旦那様は顔を俯かせており、声をかけられません。

 でも、あの……。

「華鈴」

「は、はい」

「話があるのだが、まず父上達が空いてからにしたい。それまで、我は部屋にいる」

 あっ、旦那様が行ってしまわれます。
 …………確実に、何かありましたよね、旦那様。

 置いてけぼりにされてしまい唖然としていると、旦那さまとは入れ替わりに二口女さんとろくろっ首さんが声をかけてくれました。

「奥様? いかがいたしましたか、顔色が悪いですよ」

「…………私は、大丈夫です。旦那様が苦しそうにしており、どうすればいいのかわからないだけなので」

 どうすれば、よかったのでしょうか。
 なんと、声をかければよかったのでしょうか。

「奥様、先程旦那様は部屋に戻られました。お疲れの様子でしたので、何か甘い物でもお持ちしましょう」

「でも、今は一人になりたいのでは…………」

「私達には、そのように言ってしまうでしょう。ですが、奥様でしたら、きっと求められますよ」

 ニコッと笑みを浮かべる二口女さん。
 隣にいるろくろっ首さんも頷き、私の背中を押し、台所へと促されます。

「で、でも!」

「さぁ、さぁ。迷っている時間はありませんよ」

 うー!!! 本当に、大丈夫なのでしょうか……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...