生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

文字の大きさ
75 / 95
両親の出会い

13-4

しおりを挟む
 九尾は今、自室でいびきをかき、お腹を出して眠っていた。

 今はお昼頃。あやかしであれど、起きている時間帯。

 外は明るく、陽光が注ぐ中、廊下が何故か騒がしい。
 パタパタと、女中だけではなく、屋敷に住まうあやかし全員が走り回っていた。

 さすがに気配と音がうるさいため、九尾は膨らませていた鼻提灯を割り、目を覚ました。

 体を起こすと同時に、九尾の部屋の襖がバタン! と、大きな音を立て開かれた。

「九尾様! あっ、起きられていたのですね」

「ふわぁぁあ……。今しがた起きたところじゃ。何があった、百々目鬼よ」

 まだ寝ぼけている九尾に近付き、襖を開いた百々目鬼は隣に座り、早い口調で状況を説明した。

「理由は不明なのですが、屋敷内に猫が大量発生しておりまして。今も、屋敷に侵入した猫を総出で捕まえております」

「…………ね、こ?」

「はい、猫です」

「なぜ、猫?」

「原因は今だわかりません。皆、猫を捕まえることに必死なので」

「そうか。なら、まずは猫を捕まえるところからだな」

 言いながら再度欠伸を零し、九尾は立ち上がる。

 服を着替えようとしたところで、百々目鬼が「着換えるなら先に言ってください!」と、廊下に飛び出しながら叫んだ。

「うるさいのぉ…………」

 肩を落としつつ、九尾は着換え廊下に出た。

 百々目鬼が赤い顔を抑えながら待機しており、しっかりと着替えた九尾を確認し、安堵の息を漏らした。

「では、捕まえに行くか」

「よろしくお願いします」

 九尾が首と手を鳴らし、ニヤリと笑う。
 刹那、姿が消えた。

 屋敷内には、猫が沢山走り回っている。
 力のないあやかしも、力のあるあやかしも。殺さないように捕まえようとすると、どうしてもうまくいかない。

 猫の動きは俊敏。しかも、反射神経も鋭く、体をうまく捻り伸びてくる手から逃げる。

 あやかし達が困り果てていた時、次々と猫の数が減り始めた。

「よっ! ほい!!」

 予め準備していた檻に、猫が溜まっていく姿を見て、あやかし達は安堵の息を吐いた。

「九尾様だ!」

 目で追えないくらいのスピードで、九尾が走り回る猫達を次から次へと捕まえる。
 最後の一匹を捕まえ、九尾は庭で立ち止まった。

 左手には、二匹の猫。右手には、猫が体を伸ばし、ダラーンと静かに捕まっていた。

「ふむ。なぜ、こんなに猫が入り込んでいるのだ?」

 疑問を抱きながら屋敷の玄関へと歩く。
 そこに檻が準備されており、数十匹はいる猫が「にゃーにゃー」と鳴き声を上げていた。

 一匹二匹なら可愛い鳴き声なのだが、数十匹ともなると、うるさくて仕方がない。

 周りにいるあやかしは耳を塞ぎ、歩いて来る九尾を見つけ、助けを求めた。

「「「「九尾様ぁぁぁぁあああ」」」」

「はい、状況説明。小豆洗い、詳細を教えてもらえぬか?」

 泣きながら縋りついて来るあやかしを落ち着かせ、九尾は一番冷静な小豆洗いに問いかけた。

 今も、シャコシャコと、ざるの上で小豆を洗っている。見た目は、小さいおじいちゃん。

 呼ばれた小豆洗いは、顔を上げ思い出すように空を見た。

「あれは、ワシがまだ小豆を洗っていた時だった」

「…………ほう」

 九尾は「聞く奴を間違えた」と思いながらも、小豆洗いがせっかく思い出し話してくれるようになったため、時間はかかりそうだが聞くことにした。

「ワシが朝方、庭の池で小豆を洗っておると、どこからか猫の鳴き声が聞こえたのですよ」

「ほうほう」

「いつものことだなと思いながら放置していると、徐々にその鳴き声は大きくなってきました」

「ほう」

「いつものことだと思い放置していると、猫が大量に庭から侵入。それも、いつものことだと思い放置していると――……」

「いつものことではないじゃろうが!!」

 流石に我慢できなくなった九尾は、小豆洗いの頭にげんこつを落とした。
 小豆に突っ伏してしまった小豆洗いを無視し、九尾は頭を抱える。

「これは、完全に猫又家族が絡んでおるのぉ」

「猫又家族と言いますと、猫花家でしょうか?」

 百々目鬼が聞くと、九尾は頷いた。

「猫又と言えばそこじゃろうなぁ。前から良くは思われていないことはわかっておったが、ここまで大きなことをしでかしてくるとは思わなんだ……」

 うーんと、腕を組み九尾は悩む。

「…………人間世界にも目を向けておるようだし、今日にでも動くかのぉ」

 ニヤリと笑い、九尾は猫の檻を一つ持ち上げた。

「小豆洗い、ぬしも手伝え。この猫を野生に返すぞ」

「…………あれは、ワシがまだ若い頃」

「早くしろ」

 またげんこつを落された小豆洗いは、うめき声を上げながら小豆の入ったざるを頭に乗せ、猫の檻を両手で持ち九尾の後ろをついて行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

侯爵令嬢ソフィアの結婚

今野綾
恋愛
ソフィアは希少なグリーンアイを持つヴィンセントと結婚したが、これは金が欲しいソフィアの父の思惑と高い爵位が欲しいヴィンセントの思惑が一致したからに過ぎない そもそもヴィンセントには美しい恋人がいる 美男美女と名高いヴィンセントとその恋人は身分に大きな差があるために結婚することは叶わないのだ その事をソフィアも耳にしており、この結婚が形ばかりのものであることを知っていた 結婚して早々、ソフィアは実家から連れてきた侍女夫婦とあばら家に住むように言われて… 表紙はかなさんです✨ ありがとうございます😊 2024.07.05

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

処理中です...