生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

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これからも

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「――――そこから、わしが名前が呼びにくいのと、嫁に来るのだから名前が欲しいだろうと、氷璃と名を付けたのだ」

 氷璃様の肩を引き寄せ、九尾様が話を終らせました。
 隣で話を聞いていた旦那様は、「ふむ」と腕を組み、考え込みます。

「話は分かりました。ですが、それと娘である静稀が我に執着するのは、何か関係があるのですか?」

「おそらくだが、雫は娘である静稀にも、あやかしの長。それが難しいのならせめて妻になり、頂点になろうと思っているんだろうな。自分が下僕として扱っていた氷璃があやかしの長の嫁と言う立ち位置に立てるのだ、自分の娘なら余裕だとでも考えているのだろう」

 そういう考え方を、してしまうのでしょうか。
 私は、親になったことがないので、母親の気持ちはわかりません。

 私には、母親と呼べる方もいませんでした。
 なので、断言が出来ませんが、そういうことを考える母親が本来、普通なのかもしれないですね。

 娘を利用し、自分の欲を満たす。
 それが、母親なのかもしれませんね。

「許せんな」

「あぁ、許せないだろう」

 あっ、旦那様と九尾様が額に青筋を立て、怒っております。

「自分の娘を何だと思っているのだろうか。母親と言う立場の人間が、娘を自分の利益のために利用するなど、そんなことを考える事すら腹立たしい」

「気持ちはわかるぞ、七氏。やはり、あの時にでも殺してしまえばよかったかと、今でも考える」

 旦那様の拳が、強く握られております。
 痛めてしまいそうな程に、強く。

「ですが、九尾様。そんな人でも、家族がいます。私達で例えると、私が殺されてしまうという事ですよ。九尾様はいかがですか?」

「絶対にあってはならんな」

 あっ、九尾様が今まで以上に真剣な表情で否定しています。
 顔がどことなく青いです。ものすごく嫌なのは、伝わりました。

「なら、やはり現状維持が一番なのでしょうか?」

「いや、それは危険だ。今以上に被害を出されてはたまらん。このままでは、娘である静稀に命令し、過去と同じように人間世界へ被害を出す可能性がある。それに、鬼をまたしても封印解除されてはたまったものではない」

 またしても、神妙な面持ちで考え込んでしまいました。
 …………私も、なにか、したいです。
 でも、なにかいい案が思いつくわけでも――あっ。

「あ、あの」

「む? どうした? 華鈴よ」

 手を上げると、旦那様が振り向き首を傾げます。

「私が間に入りますか?」

「駄目だ」

「か、間髪入れずに…………」

 言うと、旦那様が間髪入れずに拒否してしまいました。
 これは、何を言っても聞き入れてはもらえないかもしれませんね……。

「…………いや、それはいい案かもしれんぞ、七氏よ」

「何を言っているのですか父上!! 今、華鈴は静稀にとっては邪魔な存在。前に出してしまえば、何を言われるか、何をされるかわからないのですよ!?」

 旦那様、必死です。ものすごく、必死です。
 あっ、九尾様と氷璃様が私を見ます。

「ぬしは、どうだ?」

 わ、私は――……

「私は、役に立ちたいので、出来る事があるのなら何でもやりますよ!!」

 九尾様に聞かれたので、すぐに答えました。
 素直な気持ちを。

 すると、旦那様は眉を下げてしまいました。
 こ、困らせてしまっています。ですが、こればかりは毎度の事なので、心は苦しいですが、慣れましたよ!
 だって、私は、役に立ちたいのですよ!

 言い切ると、九尾様が「だ、そうだが?」と、ニヤニヤしております。
 なんか、楽しんでおりませんか? 九尾様…………。

「楽しんでおりますね、父上」

「そんなことなかろう。今は緊急事態だ。楽しむなど……プッ。そんな不謹慎な事をワシがするわけないだろう」

 笑っておりますよ、九尾様。
 楽しんでおりますね。

 旦那様が怒っております。でも、実の父親相手に迂闊に手を出せない様子です。
 …………仲良しさんです、思わず笑ってしまいます。

「か、華鈴まで、なぜ笑っているのだ」

「す、すいません!! …………ふふ」

「華鈴が何やら楽しいらしいから、まぁよい」

 あっ、頭を撫でてくださいました。
 呆れているようにも見えますが、肩の力は抜けたみたいです。

「ちなみに、今回は氷璃と共にワシらは我が家に戻る。巻き込みたくはないからな」

 氷璃様の頭を、九尾様が優しく撫でます。
 当たり前です。今の話を聞いてからでは、絶対に氷璃様を猫花家に行かせるわけにはいきません。

 ストレスになってしまいますし、怖い記憶がフラッシュバックして、苦しくなってしまうかもしれません。

「だから、これからはぬしらで決めるのだ。自分達で、あとは決めるのだ。これからは、それが重要になってくるだろう。あやかしの長として、その妻として、な」

 九尾様は、これ以上余計なことを言わないようにと、氷璃様と共に部屋を出てしまわれました。
 残されたのは、私と旦那様の二人。静かな空気が流れております。

「あ、あの、旦那さま」

「…………」

 あぁ、私を心配そうに見ています。
 言葉を考えていそうですね。私を危険な目に合わせないために、どういえば私が引き下がるか。
 今、頑張って考えてくださっていますね。

 …………不安、なんですよね。
 私も、旦那様がこれから危険な所に行くと思うと、怖いです、不安です。

 でも、わかっています。
 ここは、旦那様は動かなければなりません。
 あやかしの長として、動かなければならないのです。

 だったら、私も、役に立つだけです。
 行かせないようにするのではなく、私が、旦那様の背中を押せるように頑張るだけです!
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