生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-

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これからも

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 約束の日、私は旦那様と共に猫花家へと馬車で向かっております。
 近付くにつれ、心臓がバクバクと音を大きく鳴らします。

 緊張、してしまっていますね、私。
 当たり前です。だって、今から私は、旦那様が大好きな女性に会いに行くのですから。

 何を言われてしまうのか、旦那様にどのように声をかけるのか。
 不安でいっぱいです。ですが、私にも今回は役割があります。

 そう!! 私が今回、旦那様のナイト様になるのです!!

「華鈴よ。今回はあまり前に出るでないぞ。なんだか、気合入れているようだが、我の後ろから動かないことは絶対だ」

「うっ、はい……」

 ……そうです。実は、今回の私は、旦那様の後ろで待機が役割なのです。
 ナイトになるというのは、私が勝手に言っていました、残念です。

 今日は、ただの話し合い。
 今後のことと、これからの関係性についてを話し合おうという時間なのです。

「今回も、ただでは終わらんだろう。華鈴、怖ければ引き返して構わんぞ」

「いえ、絶対に引き返しません! 私は今日、旦那様を守るナイトになるのですから!」

「武士ではなく、ナイトなのだな。それより、さっきの話を聞いていたか?」

「…………め、迷惑だけはかけません!」

 そんな話をしていると、馬車が止まります。

「着いたみたいだな」

「は、はい」

 やばい、またしても緊張してきました。
 少しだけ旦那様とお話しして気持ちが落ち着きましたが、またしても心臓がバクバクです。

 うぅ、でも、ここで絶対に引き返すわけにはいかないのです。
 旦那様の手を借りて馬車を降りますと、一人の女中が頭を下げ、私達をお出迎えしてくれました。

「ようこそお越しくださいました。では、こちらへ」

 あまり、歓迎はされていないみたいですね。
 空気が固く、目すら合わせてくださいません。顔も、無表情。いや、これが普通なのでしょうか。
 旦那様の女中さん達が笑顔の素敵な方達だったのでしょうか。わかりませんね……。

 旦那様の背中を着いて行く形で中へと入ります。
 綺麗な廊下を歩いていると、一つの部屋の前で止まりました。

「静稀様、雫様。七氏様と華鈴様がお越しくださいました」

 中にいるであろうお二人に声をかけると、中から凛々しい声で「入りなさい」と聞こえました。
 女中さんが襖を静かに開け、私達を中へと促します。

 中を覗くと――わぁ、凄く綺麗な方がいらっしゃいます。
 凛々しく美しい女性と、茶髪のかわいらしい女性。

 おそらく、美しい女性が雫様。頭を下げている方が、娘の静稀様ですね。
 座るように促されたため、テーブルを挟み、私と旦那様が隣同士で座りました。

 女中がお茶を人数分準備すると、「失礼します」と、部屋を後にしました。
 そのあと、すぐに話し合いがはじま――る訳ではありませんでした。

 どなたも口を開くことも、お茶に手を付けることもしません。
 …………空気が!!! 重たいです!!!!

「あ、あの…………ひっ!?」

 何とか重たい空気を改善しようと手を上げたのですが、お二人に睨まれてしまいました!
 こ、怖いです。さすが、猫又。眼力が、素晴らしいです……。

「え、えぇっと、あの…………」

 何とか言葉を繋げようとしますが、お二人の眼力でうまく話が出来ません!!

「あまり無理するでない、華鈴よ」

「旦那様……」

 あっ、旦那様が私の肩に手を添えます。
 ほんの少しだけ引き寄せてくださいました。

 やっぱり、旦那様の温もりは安心しますね。
 すぐに恐怖心が落ち着きます。

「コホン。それで、今回はどのような要件でしょうか? 七氏様」

「あぁ」

 雫様が咳ばらいをし、空気を変えいきなり本題に入ります。
 旦那様は、どのように話し出すのでしょうか。

 私の肩から手を話し、姿勢を正す。
 緊張が、走ります。

「今回、改めて時間を作ってくださったことに感謝する」

「えぇ、まったくだわ。私達も暇ではないの。早く要件を済ませてくださいませんか?」

 うっ、冷たい。言葉が、鋭利な刃物のように鋭いです。
 私が一人たじろいでいると、旦那様が口を開きました。

「わかりました。では、さっそく本題に入らせていただきます。まず、雫さん。貴方には一つ、聞かなければなりません」

「なんでしょうか?」

「私は、父上から過去の出来事を聞きました。それを踏まえて聞きます。貴方は今も、あやかしの長を狙っておるのでしょうか?」

 っ、いきなり、そこを聞くのですね。
 雫様も流石に驚き、一瞬息を飲みました。

「…………なぜ?」

「静稀の、我への執着。それは、貴方が招いたことではないのでしょうか?」

「なぜ、そう思うのかしら?」

「変だと思ってはいた。接点はあまりないはずなのに、強い執着を見せてくる。女性として、もっと慎重に相手を見定めなければならないはずなのに、話したこともあまりない我に執着するのが不自然でたまらなかった。おぬしが噛んでいるのではないか?」

 旦那様が聞くと、雫様はいきなり顔を下げてしまわれました。
 どうしたのかと思っていると、急に笑い声が聞こえ始め、ま、した?

 ど、どうしたのでしょうか。

「くくく、ふふふふ、あーはっはっはっはっ!!」

 え、え? どうしたのでしょうか。なにか、面白い話がありましたか?
 私には、わかりませんでした……。

 困惑していると、笑い出した雫様が急に静かになります。
 数秒間笑って、落ち着いたのでしょうか。一体、何が面白かったのでしょうか……。

「えぇ、そうよ。まぁ、長が無理だとしても、せめて娘である静稀を嫁にしてもらおうとは思っていたわ」

 す、素直に自白するのですね。

 旦那様は、どう言うのでしょうか……。
 隣を見上げると、旦那様の額から、一粒の汗が滲み出ております。
 緊張、でしょうか。膝に置かれている手も、微かに震えています。

 言葉を、少しでも間違えてしまえば、状況が悪化してしまう。
 雫様を少しでも興奮させないように気を付けなければならない。
 緊張、してしまいますよね。

 ――――旦那様、大丈夫ですよ。

「っ、華鈴」

 旦那様の手に、私の手をそっと添えます。
 この場は、二人で乗り越える。絶対に、旦那様を一人に負担をかけるようなことはしませんよ。
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