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カラス天狗
氷鬼先輩の初恋!
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「こんにちは、なんだか久しぶりね」
「ここに来ること自体、少ないからね」
「仕事の話をする時しか来ないからゆっくりもしてくれないし、お姉ちゃんは悲しいぞ」
「はいはい」
紅井神社にたどり着くと、巫女の姿をしている女性が出迎えた。
お姉ちゃんと言い、わざとらしく悲しんでいる女性は、紅井神社の一人娘である紅井涼香。
明るい茶色の長い髪を後ろで一つに結い、茶色の瞳を司に向ける。
ほうきを持ち直し、距離をちぢめた。
「やっと、再会出来たの?」
クスクスと笑う涼香に、司は眉を吊り上げた。
「戻ってきていたことを知っていたのなら、何で教えてくれないの」
「同じ学校だったから、もうとっくに会っているのかと思ったんだもの。まさか、会っていなかったなんて……」
「それでも、一言くらいあっても良かったのに」
「私だって悩んだのよ? ずっと一緒に居たのに突然、詩織ちゃんが親の都合で引っ越してしまって。それで、またこちらへ戻って来た。どんな顔をして会えばいいのかわからないのかもしれないとか、会うタイミングとか。色々考えていた結果、言えなかったのよ」
涼香の言葉に、司はくちびるを尖らせた。
「確かにそうかもしれないけど……。まぁ、今はいいや。それより、聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたの?」
「詩織は、涼香のことを覚えてた?」
「んー? 最初はわからなかったみたいだけど、名前を言ったら思い出してくれたわよ?」
「そ、うなん……だ」
ショックを受けたように肩を大きく落とし、司はうなだれる。
なぜそこまで落ち込んでしまったのか涼香はわからず、首をかしげた。
「どうしたの?」
「俺のことは、完全に忘れてたんだ……。しかも、すごい怖がっててさ。氷の王子様って、言われた……」
「~~~~~ッ!!! わ、わら、笑わせっ、ないで~~~~!!」
「笑わせてないんだけど」
お腹を抱えて笑う涼香に、顔を青くしながら文句を言う司。
本気で落ち込み、その場にしゃがみこんでしまった。
「あらあら、そんなにショックだったの?」
「そりゃ、まぁ。完全に忘れているわけだし……。一緒に居た期間は一年と短いけど、出来る限り毎日一緒に居たんだよ? そりゃ、ショックだよ…………」
「それもそうよねぇ」
自身の頬に手を添え、ほんのり顔を赤くする涼香に、司は首をかしげ見上げた。
「あなたの初恋相手ですもんね。忘れられていたらショックよねぇ~」
「待って、なんで知っているの?」
「分かりやすかったわよ。昔からあやかし退治以外に興味を持つものってなかったのに、いきなり『しーちゃんは僕が守る!!』って宣言したのよ? 一目ぼれだったのかなぁって思うじゃない」
「うかつだった…………」
「子供の頃の話よ? でも、その反応するってことは、もしかして~?」
ニヤニヤする涼香に、司の顔がりんごのように赤くなった。
見られないように顔を手で隠し「勘弁して……」と呟く。
初々しい反応に、涼香は控えめに笑うとほうきをにぎり直した。
「それじゃ、これから男を見せないといけないわね。それで、今回も言ったの? これからは僕が守るとか」
「言った」
「あら、いいじゃない。どんな感じで伝えたの? そこはやっぱり、かっこよく伝えたんでしょうね?」
「かっこよくは分からないけど、僕なりな言い方で伝えたよ」
「ふーん。いいじゃない」
司の頭をなでて、涼香は優しくほほえむ。
彼女の温かい手に目を細め、司は横に垂らしていた拳をにぎった。
「ねぇ、涼香」
「なぁに?」
「詩織の体質を治すことってできないのかな」
小さな声で呟く司に、涼香は手をはなし見上げる。
少し考え、ゆっくりと首を横に振った。
「それは難しいわね。あなたは数年も調べていたじゃない。それでも、手がかりすらつかめていない。治すのは不可能だと思うわよ」
「だよね……」
悲し気に揺れる瞳は地面を写す。
どうにか出来ないか、どうすることも出来ないのか。そればかりが頭の中をかけ回り、司は整理するため目を閉じた。
「まぁ、これからは僕がまた守ればいいか。口実は無理やり作ったし、何とかなるでしょ。お守りも渡したし」
「あら、渡したのね。あなたが作ったのなら、効果も期待できるわね」
「いや、それに関してはわからない」
「あら、それはなぜ?」
司の言葉に目を丸くする詩織。彼を見上げ、問いかけた。
「あのお守りには、僕の氷が入っている。知っていると思うけど、僕が作り出す氷は魔除けになり、”魔”のモノを寄せ付けなくなる。だから、お守りとしては適しているんだけど……」
「だけど?」
「どこまでのあやかしに通用するかわからないし、僕から離れすぎると効力が薄くなるから、正直不安しかないよ」
守れなかったら、大事な人が怪我をしてしまったら。
今の司の頭の中は、不安だらけ。
そんな彼の額に、涼香は右手を添えた。
親指で中指をはじくような形を作りながら。
――――――――バチンッ!!
かわいた音が聞こえた瞬間、司は額を抑えその場にしゃがむ。
涼香は腰に手を当て仁王立ち。眉を吊り上げ、口をとがらせていた。
見るからに怒っている彼女のことがわからず、涙目で見上げた。
「目、覚めた?」
「え? 目が覚めたって、何が? 普通に痛かっただけなんだけど……」
「不安に思っていても仕方がないってことよ。あなたは今、出来ることを全力でやっているでしょう? なら、それを続けなさい。あなたの実力なら、必ずあの子を守れるわ」
怒っているような表情から優しい笑顔に切り替わる涼香に、司は一度顔を下げ目を逸らした。
だが、すぐに立ち上がり、いつもの無表情になる。
涼香を見下ろす瞳には力が込められており、決意が見えた。
「そうだよね。今は、できることをやっているんだ。弱気になっていても仕方がない。ありがとう」
「まったく、世話の焼ける弟ね」
「あんたの弟になった記憶ないんだけど」
「もう!! 小さい頃からずっと一緒に居たのだから、弟じゃない!」
「はいはい」
仕方がないというように肩を落とし、司はポケットに手を入れた。
「それじゃ、僕は行く」
「無理するんじゃないわよ」
「うん」
そのまま司は鞄を持ち直し、神社から出て行く。
彼の後ろ姿を涼香は見届け、ほうきで掃除を再開した。
「まぁ、見た目とか雰囲気、変わったものねぇ、司。気づかないのも、無理はないかぁ」
「ふふっ」と笑みをこぼす。。
空を見上げ、太陽の光を手でさえぎった。
「あの二人のこれからは、どうなるのかしら。楽しみ楽しみ――――っ!」
空を見上げていた涼香の瞳が突如、大きく見開かれた。
視線の先には、青空に浮かぶ黒い影。
人間のような影には、黒いつばさが背中に生えている。手にはしゃくじょうと呼ばれるぼう。足元は下駄。笠をかぶっているナニカ。
涼香は目を開き、ほうきをカランと落としてしまった。
「あれって、もしかして―――…………」
慌てたように神社の中に入り、どこかに電話をかけた。
そんな彼女の目線の先には、壁に引っかかっている目元だけを隠すように作られている狐面がある。
「あ、もしもし。少し……いえ、危険なあやかしが向かってきているみたいです。もしかしたら、大きな戦いが待っているかも──……」
「ここに来ること自体、少ないからね」
「仕事の話をする時しか来ないからゆっくりもしてくれないし、お姉ちゃんは悲しいぞ」
「はいはい」
紅井神社にたどり着くと、巫女の姿をしている女性が出迎えた。
お姉ちゃんと言い、わざとらしく悲しんでいる女性は、紅井神社の一人娘である紅井涼香。
明るい茶色の長い髪を後ろで一つに結い、茶色の瞳を司に向ける。
ほうきを持ち直し、距離をちぢめた。
「やっと、再会出来たの?」
クスクスと笑う涼香に、司は眉を吊り上げた。
「戻ってきていたことを知っていたのなら、何で教えてくれないの」
「同じ学校だったから、もうとっくに会っているのかと思ったんだもの。まさか、会っていなかったなんて……」
「それでも、一言くらいあっても良かったのに」
「私だって悩んだのよ? ずっと一緒に居たのに突然、詩織ちゃんが親の都合で引っ越してしまって。それで、またこちらへ戻って来た。どんな顔をして会えばいいのかわからないのかもしれないとか、会うタイミングとか。色々考えていた結果、言えなかったのよ」
涼香の言葉に、司はくちびるを尖らせた。
「確かにそうかもしれないけど……。まぁ、今はいいや。それより、聞きたいことがあるんだけど」
「どうしたの?」
「詩織は、涼香のことを覚えてた?」
「んー? 最初はわからなかったみたいだけど、名前を言ったら思い出してくれたわよ?」
「そ、うなん……だ」
ショックを受けたように肩を大きく落とし、司はうなだれる。
なぜそこまで落ち込んでしまったのか涼香はわからず、首をかしげた。
「どうしたの?」
「俺のことは、完全に忘れてたんだ……。しかも、すごい怖がっててさ。氷の王子様って、言われた……」
「~~~~~ッ!!! わ、わら、笑わせっ、ないで~~~~!!」
「笑わせてないんだけど」
お腹を抱えて笑う涼香に、顔を青くしながら文句を言う司。
本気で落ち込み、その場にしゃがみこんでしまった。
「あらあら、そんなにショックだったの?」
「そりゃ、まぁ。完全に忘れているわけだし……。一緒に居た期間は一年と短いけど、出来る限り毎日一緒に居たんだよ? そりゃ、ショックだよ…………」
「それもそうよねぇ」
自身の頬に手を添え、ほんのり顔を赤くする涼香に、司は首をかしげ見上げた。
「あなたの初恋相手ですもんね。忘れられていたらショックよねぇ~」
「待って、なんで知っているの?」
「分かりやすかったわよ。昔からあやかし退治以外に興味を持つものってなかったのに、いきなり『しーちゃんは僕が守る!!』って宣言したのよ? 一目ぼれだったのかなぁって思うじゃない」
「うかつだった…………」
「子供の頃の話よ? でも、その反応するってことは、もしかして~?」
ニヤニヤする涼香に、司の顔がりんごのように赤くなった。
見られないように顔を手で隠し「勘弁して……」と呟く。
初々しい反応に、涼香は控えめに笑うとほうきをにぎり直した。
「それじゃ、これから男を見せないといけないわね。それで、今回も言ったの? これからは僕が守るとか」
「言った」
「あら、いいじゃない。どんな感じで伝えたの? そこはやっぱり、かっこよく伝えたんでしょうね?」
「かっこよくは分からないけど、僕なりな言い方で伝えたよ」
「ふーん。いいじゃない」
司の頭をなでて、涼香は優しくほほえむ。
彼女の温かい手に目を細め、司は横に垂らしていた拳をにぎった。
「ねぇ、涼香」
「なぁに?」
「詩織の体質を治すことってできないのかな」
小さな声で呟く司に、涼香は手をはなし見上げる。
少し考え、ゆっくりと首を横に振った。
「それは難しいわね。あなたは数年も調べていたじゃない。それでも、手がかりすらつかめていない。治すのは不可能だと思うわよ」
「だよね……」
悲し気に揺れる瞳は地面を写す。
どうにか出来ないか、どうすることも出来ないのか。そればかりが頭の中をかけ回り、司は整理するため目を閉じた。
「まぁ、これからは僕がまた守ればいいか。口実は無理やり作ったし、何とかなるでしょ。お守りも渡したし」
「あら、渡したのね。あなたが作ったのなら、効果も期待できるわね」
「いや、それに関してはわからない」
「あら、それはなぜ?」
司の言葉に目を丸くする詩織。彼を見上げ、問いかけた。
「あのお守りには、僕の氷が入っている。知っていると思うけど、僕が作り出す氷は魔除けになり、”魔”のモノを寄せ付けなくなる。だから、お守りとしては適しているんだけど……」
「だけど?」
「どこまでのあやかしに通用するかわからないし、僕から離れすぎると効力が薄くなるから、正直不安しかないよ」
守れなかったら、大事な人が怪我をしてしまったら。
今の司の頭の中は、不安だらけ。
そんな彼の額に、涼香は右手を添えた。
親指で中指をはじくような形を作りながら。
――――――――バチンッ!!
かわいた音が聞こえた瞬間、司は額を抑えその場にしゃがむ。
涼香は腰に手を当て仁王立ち。眉を吊り上げ、口をとがらせていた。
見るからに怒っている彼女のことがわからず、涙目で見上げた。
「目、覚めた?」
「え? 目が覚めたって、何が? 普通に痛かっただけなんだけど……」
「不安に思っていても仕方がないってことよ。あなたは今、出来ることを全力でやっているでしょう? なら、それを続けなさい。あなたの実力なら、必ずあの子を守れるわ」
怒っているような表情から優しい笑顔に切り替わる涼香に、司は一度顔を下げ目を逸らした。
だが、すぐに立ち上がり、いつもの無表情になる。
涼香を見下ろす瞳には力が込められており、決意が見えた。
「そうだよね。今は、できることをやっているんだ。弱気になっていても仕方がない。ありがとう」
「まったく、世話の焼ける弟ね」
「あんたの弟になった記憶ないんだけど」
「もう!! 小さい頃からずっと一緒に居たのだから、弟じゃない!」
「はいはい」
仕方がないというように肩を落とし、司はポケットに手を入れた。
「それじゃ、僕は行く」
「無理するんじゃないわよ」
「うん」
そのまま司は鞄を持ち直し、神社から出て行く。
彼の後ろ姿を涼香は見届け、ほうきで掃除を再開した。
「まぁ、見た目とか雰囲気、変わったものねぇ、司。気づかないのも、無理はないかぁ」
「ふふっ」と笑みをこぼす。。
空を見上げ、太陽の光を手でさえぎった。
「あの二人のこれからは、どうなるのかしら。楽しみ楽しみ――――っ!」
空を見上げていた涼香の瞳が突如、大きく見開かれた。
視線の先には、青空に浮かぶ黒い影。
人間のような影には、黒いつばさが背中に生えている。手にはしゃくじょうと呼ばれるぼう。足元は下駄。笠をかぶっているナニカ。
涼香は目を開き、ほうきをカランと落としてしまった。
「あれって、もしかして―――…………」
慌てたように神社の中に入り、どこかに電話をかけた。
そんな彼女の目線の先には、壁に引っかかっている目元だけを隠すように作られている狐面がある。
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